2020-01-01から1年間の記事一覧
// リンク 昨年(2019年)「ジョン」(私家版)で名だたる作家、翻訳家、書店員、読者から熱烈歓迎された早助よう子さんの新刊が9月に河出書房新社から刊行された。それが本書「恋する少年十字軍」である。 本書には、表題作を含め7篇の短編とあとがき「中…
// リンク 部屋を片付けていて発掘された本を読んでみた。アントニー・マン/玉木亨訳の「フランクを始末するには」(創元推理文庫)だ。奥付には『2012年4月27日 初版』とあるので、8年半くらい前に出た本である。 巻末の野崎六助氏の解説によれば、著者の…
// リンク // リンク // リンク 『忘れられた本の墓場』、ある作家の本を探し焼き尽くそうとする謎の人物、そして時を経て重なるふたつの愛。カルロス・ルイス・サフォン「風の影」には、本を愛するものを虜にする極上のエンターテインメントがこれでもかと…
// リンク 逆進化する恋人、胃に穴のあいた父と母親を産んだ母、男のおちんちんで体をいっぱいにしたいと願う図書館員、火の手をもった女の子と氷の手をもった女の子。 エイミー・ベンダー「燃えるスカートの少女」には、不思議な魅力に満ちた16の短編が収録…
// リンク インドネシア文学を読むのは、たぶんこれがはじめてだと思う。そういう意味で言えば、本書はまさに“はじめて”の海外(インドネシア)文学である。 本書冒頭の監訳者・福武慎太郎氏の解説によれば、著者のティー・レスタリは、現代インドネシアを代…
// リンク 「白い病」は、カレル・チャペックが1937年に発表した戯曲である。これまでに二度翻訳出版されていて、今回が三度目の翻訳となる。訳者の阿部賢一さんが、緊急事態宣言が発令された2020年4月7日に訳し始め、noteで少しずつ公開していたものを岩波…
// リンク 私はこの物語をただ快感のために書きました。一度くらい、そういうことがあってもいいんじゃないかと思いました。ですから、ここまで読んできて快感を感じられなかったとしたら、それは私の失敗ということになります。 帯にも引用されている著者の…
// リンク またすごい本に出会った。 私にはいくつか好きな本のタイプがある。 読んでいる間、ずっと気分が高揚し、物語の世界を存分に楽しませてくれるエンタメ小説。何もかも忘れてとにかく楽しみたいときにはそういう本を読む。小説世界に没頭できる本が…
// リンク ちょっとポンコツで、でもかわいくて憎めないロボット・タングを中心にチェンバース一家が子育てや教育など家庭の問題と向き合い取り組んでいく人気シリーズの第4作である。 前作「ロボット・イン・ザ・スクール」では、ラストに日本から帰国した…
// リンク 新型コロナによるステイホームをきっかけにペットを飼う人が増えているという。その一方で、飼い始めたはいいが、自分が思っていたのと違うとペットショップに返品(命のある動物に対する言葉としては甚だ不適切な言葉だ)してきたり、保護施設に…
// リンク 国書刊行会の『世界探偵小説全集』の第8巻。本書は、元警察官の私立探偵ビーフ巡査部長と彼の行動を記録し探偵小説として世に送り出すワトスン役のライオネル・タウンゼントのコンビがふたつの首吊り事件の謎を解明するミステリーだ。 物語のあら…
// リンク もしも魔法が使えたなら世界を変えられるんじゃないか、と思ったことはないだろうか。悪政によって民を苦しめる独裁者の行動を魔法の力で良識ある行動に変えることはできないか、と考えたことはないだろうか。 スーザン・プライスの「ゴーストシリ…
// リンク 「ゴーストシリーズ」の第2作となる作品。「ゴーストドラム」でチンギスと対立する悪役として登場したクズマを中心とする物語だ。 「ゴーストソング」の物語は、夏至の日、猟師のマリュータとその妻イェフロシニアの間に男の子が生まれる場面から…
// リンク 本書は、大韓民国臨時政府に関わった独立運動家であるヤン・ウジョとチェ・ソナの夫婦が記した日記を原案として描かれたグラフィックノベルである。原案となった日記は、ふたりの間に生まれた娘ジェシーの育児日記となっている。日記には、韓国が…
// リンク ある冬至の夜、ひとりの奴隷女が赤ん坊を産んだ。女の子だった。だが、奴隷の娘は奴隷になるしかない。女はわが子の逃れられない運命を嘆く。そこへ、ひとりの老婆が訪ねてくる。老婆は魔女だ。魔女は女に言う。「お前が腕に抱いている赤ん坊が生…
// リンク 帯の惹句よれば、著者のリチャード・ニーリィは『どんでん返しの巨匠』なのだという。本書「リッジウェイ家の女」は、そんな『どんでん返しの巨匠』が描くミステリー小説である。 画家のダイアン・リッジウェイは、アートギャラリーで自分の作品を…
// リンク まず最初にお断りしておくと、この本は『料理レシピ本』です。ですが、書店の店頭に山と積まれた「誰でも簡単!お手軽激ウマレシピ!」とか「料理研究家○○の健康レシピ100選」みたいな普通の料理レシピ本とはまったく違う、滝沢カレンらしい独特な…
// リンク 国書刊行会の『世界探偵小説全集』の第7巻。本作は、密室殺人のトリックに趣向を凝らした謎解きミステリーである。 アダミンスター警察署のクロード巡査部長は、シリル・ソーンバラ医師の自宅で殺人事件に遭遇する。ソーンバラ医師の妻ベティの伯…
// リンク 1996年、中国龍井(ロンジン)。ひとりの老婆が家族や村人に見送られて旅立つ場面から物語は始まる。彼女は、55年振りに祖国韓国に帰るのだ。彼女の名は李玉善(イ・オクソン)。彼女は、日本軍の『従軍慰安婦』だった。 キム・ジェンドリ・グムス…
// リンク 「田宮二郎、壮絶! いざ帰りなん、映画黄金の刻へ」は、映画、テレビのプロデューサーとして俳優・田宮二郎と仕事をしてきた著者が、その生い立ちから、俳優としてデビューして銀幕の大スターとなり、不遇の時代を経てテレビドラマの世界で成功を…
// リンク 15歳の孤独な少年チャーリーがリーン・オン・ピートという競争馬と出会い、自分の置かれた境遇や自らの思いをピートに語りかけることで愛情を深めていく。やがて、ピートが前肢に怪我をしている疑いがでて、殺処分の可能性もあると知ったチャーリ…
// リンク 「キッズライクアス」は、『自閉症スペクトラム障害』の高校生マーティンが、映画監督の母の仕事に合わせて、姉のエリザベスと一緒にフランスの田舎町で過ごすひと夏を描く物語だ。 『自閉症スペクトラム障害』のマーティンは、他人とうまく接する…
// リンク ヴァレリー・ゼナッティ「瓶に入れた手紙」は、イスラエル・エルサレムに暮らす少女タルとパレスチナ・ガザ地区に暮らす“ガザマン”と名乗る男性(のちにナイームという少年とわかる)のメールのやりとりによって主に構成される物語だ。物語中ふた…
// リンク 前作「弁護士アイゼンベルク」を読んだのが2018年6月。それから2年、待望の第2弾が翻訳刊行された。「弁護士アイゼンベルク 突破口」である。 前作では冒頭から主人公の弁護士ラヘル・アイゼンベルクが、何者かによって人里離れた家に手足を拘束さ…
『ブックオフ』はこれまで数え切れないくらい利用してきた。単行本や文庫の比較的新しい作品が半額になっているのをヒャッホー!と手に取り、100円棚で「おぉ、これが100円!」と驚いたりしながら、あれもこれもと買い物かごに放り込んだ。ときに十数冊の本…
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// リンク 「陛下にも暇つぶしが必要なのはわかります」「暇つぶし?」女王は聞き返した。「本は暇つぶしなんかじゃないわ。別の人生、別の世界を知るためのものよ。サー・ケヴィン、暇つぶしがしたいどころか、もっと暇がほしいくらいよ。(後略)」 アラン…
// リンク 相川英輔作品は、これまで「雲を離れた月」と「ハイキング」を読んできた。過去作はどれも日常にある恐怖や不安を描き、読んでいてスーッと背中に冷たいものが伝うような感覚を与えてくれる作品だったが、本作はこれまでとはまったく違ったテイス…
「フライデー・ブラック」ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー/押野素子訳/駒草出版-ガーナ移民の両親を持つ著者のデビュー短編集。#BlackLivesMatter 運動に世界が揺れる今の時代に読む一冊。
// リンク 2020年5月、アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスで白人警察官が黒人のジョージ・フロイド氏を逮捕する際に、8分46秒もの間フロイド氏の頸部を膝で圧迫し続けて死に至らしめる事件が起きた。この事件をきっかけにして、全米各地で大規模な抗議デモが…
// リンク 国書刊行会の『世界探偵小説全集』第6巻。それぞれが互いに何らかの因縁を持つウォーベック一族が集まったクリスマスの夜、大雪に閉ざされた屋敷で行われた夜会の席でファシスト団体のリーダーとなったウォーベック卿の跡取り息子が毒殺された。古…