タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

2014-12-01から1ヶ月間の記事一覧

今年も残りあとわずか。2014年の私的オススメ本を紹介します-【後編】

昨日に引き続き、2014年の私的オススメ本を紹介します。今日は、残りの5冊です。 ※前編はこちら 今年も残りあとわずか。2014年の私的オススメ本を紹介します-【前編】 - ガタガタ書評ブログ 今年も残りあとわずか。2014年の私的オススメ本を紹介します-【…

今年も残りあとわずか。2014年の私的オススメ本を紹介します-【前編】

今年(2014年)も残りわずかである。なので、過去1年間に読んだ本の中から、私なりの十選をあげてみようと思う。過去に書いた各作品のレビューへのリンクも合わせて記載しておくので、具体的なレビューについては、各リンク先にアクセスしていただければと…

Twitter文学賞の2年連続受賞なるか?-松田青子「英子の森」

「スタッキング可能」が各所で話題となり好評によって第4回Twitter文学賞の第1位になった松田青子の第2作品集。今回も前作に劣らない傑作であると断言しよう。 英子の森 作者: 松田青子 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2014/02/10 メディア: 単行…

この作家の存在を知ることができたのは今年の個人的な収穫である-イレーヌ・ネミロフスキー「ダヴィッド・ゴルデル」

海外文学の世界には、まだまだ知らない作家が埋もれている。特に、ロシアや旧ソ連諸国、東欧諸国などのいわゆる東ヨーロッパ圏の作家は翻訳紹介される機会が近年増えてきていて(松籟社のように東欧文学を中心に翻訳出版を手がける出版社もある)、そこには…

ヤツが帰ってきた!-ティムール・ヴェルメシュ「帰ってきたヒトラー」

第2次世界大戦においてナチス・ドイツを率いてヨーロッパを席巻し、ユダヤ人の大量虐殺などの悲劇的な戦争を突き進んだアドルフ・ヒトラー。そのヒトラーが現代に蘇ったら、という設定で描かれるのが、ティムール・ヴェルメシュ「帰ってきたヒトラー」であ…

家族の食卓というものは、その家庭の真の姿を映しているのだなと認識させられる-岩村暢子「家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇」

子供に正しい食の知識を教えようという「食育」の重要性が云われるようになって随分と経ったように思います。季節ごとの食材について知り、旬の時季に美味しく調理した料理を正しくいただく。和食が世界無形文化遺産に登録され、日本の食文化が世界に広くア…

女の子たちのヒエラルキーが怖い!-柚木麻子「王妃の帰還」

どのような組織でもヒエラルキーというものは存在していて、自然と階層化された社会が形成されている。ヒエラルキーがあることで成立するような社会もあって、例えば会社組織なんかは、社長を筆頭にして部長だの課長だのという階層が機能することでうまく回…

【ネタバレ注意!】2015年映画化決定!超ネタバレでレビューしてみる-乾くるみ「イニシエーション・ラブ」

ラストで「えっ!?」と思わず声をあげてしまった。見事に作者の術中に嵌った訳である。そして、再度全編にわたってさかのぼって確認してみて、様々に散りばめられた伏線の数々に気づいた。 イニシエーション・ラブ (ミステリー・リーグ) 作者: 乾くるみ 出版…

平凡であることの幸せ、平凡であることにあきたりない生き方-角田光代「笹の舟で海を渡る」

母は昭和15年(1940年)に生まれた。終戦時は5歳である。終戦後は小学校、中学校、高校と進学し、高校を卒業後はデパートの売り子として就職した。その後、父と知り合って結婚し私が生まれる。以後、パート仕事の経験はあるが、基本的には専業主婦として家庭…

「あまちゃん」の舞台にもなった三陸鉄道の被災と復興の物語-吉本浩二「さんてつ」

「あまちゃん」が一大ブームとなったのが2013年のことでした。放送終了から1年を過ぎても、まだそのブームの余韻は残っているように思われます。 さんてつ: 日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録 (バンチコミックス) 作者: 吉本浩二 出版社/メーカー: …

阿部和重×伊坂幸太郎が生み出すエンターテインメントの絶妙なコラボレーション-阿部和重・伊坂幸太郎「キャプテンサンダーボルト」

腐れ縁というヤツがある。子供の頃からの付き合いで、人生のターニングポイントとなる時に不思議とそいつがそばにいる。困難に陥っている時に、必ずそいつが手を差し伸べてくれる。そういう友人がいる。 キャプテンサンダーボルト 作者: 阿部和重,伊坂幸太郎…

何も起きない平穏な日々にこそ物語はある-堀江敏幸「なずな」

堀江敏幸「なずな」は、赤ん坊を預かって育てている男の日常を描く穏やかな物語である。小説世界というのは、時に大きな出来事があり、それに翻弄される人間の姿が描かれることで、物語の起伏を表現するものだが、この「なずな」に関しては、物語の全編を通…

これこそが人間のリアルだ!-卯月妙子「人間仮免中」

卯月妙子という名前になんとなく見覚えがあった。 人間仮免中 作者: 卯月妙子 出版社/メーカー: イースト・プレス 発売日: 2012/05/18 メディア: コミック 購入: 18人 クリック: 430回 この商品を含むブログ (91件) を見る 人間仮免中 作者: 卯月妙子 出版社…

大丈夫、きっとみんながあなたを支えてくれる-小林凛「冬の薔薇立ち向かうこと恐れずに」

第1句集「ランドセル俳人の五・七・五」を読んだ時、小林凛という少年の純真な心と、彼を支えるたくさんの愛情を感じられた。そして、それ以上に胸を苦しめたのは、彼に対する学校という場所の残酷さだった。 冬の薔薇 立ち向かうこと 恐れずに 作者: 小林…

鉄オタ今昔、男子と女子-内田百閒「阿房列車」と酒井順子「女流阿房列車」

最近では鉄オタ(鉄道オタク)なる名称はだいぶ一般的なものとなってきた。乗り鉄、撮り鉄などといった鉄道オタクの中でも種別が分かれていることも認知されつつあるようだ。 元来、鉄道好きは男の領分だと思われてきた。鉄道紀行を題材にして作品を数多く発…

地方発→全国区。大泉洋というキャラクターの魅力-大泉洋「大泉エッセイ~僕が綴った16年」

いまや全国区のタレントになった“北海道ローカルタレント”大泉洋が、デビュー間もない頃から約10年ほどにわたって各種雑誌媒体で書いてきたエッセイをすべて収録し、かつ一部のエッセイについては大泉自身が執筆当時を振り返って一言コメントを書いていると…

俺達が日本の出版界を支えているというプライドが復活へのモチベーション!-佐々涼子「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている」

私たちが日常的に接しているたくさんの本は、当然ながら紙でできている。それって、忘れがちで、当たり前のことだけど、結構大事なことでもあります。書店に並べられて、私たちが手に取り、購入し、読んでいる本や雑誌などの出版物は、紙がなければ作ること…

火のないところに煙は立たぬ。人の口に戸は立てられぬ。世に醜聞の種は尽きぬ-佐藤亜紀「醜聞の作法」

インターネットの普及に伴って、ネット上で発生した根も葉もない話があっという間に拡散してしまうようになった。ブログ、Twitterなどで個人が匿名で気軽に情報発信できることが、便利である反面、時と場合によっては悪質なデマの発信、拡散につながることが…

宮沢りえが演じる主人公・梨花の妖艶な魅力にゾクッと身悶える-角田光代「紙の月」

先日、吉田大八監督作、宮沢りえ主演の映画「紙の月」を観た。平凡だけど幸福なはずの家庭をもつ主婦・梅澤梨花(宮沢りえ)が、若い大学生の青年・平林光太(池松壮亮)との関係に溺れ、勤務先の銀行から多額の金を横領する。宮沢りえが、清廉な主婦から若…

あの印象的な文字による演出。先駆者・市川崑の企み-小谷充「市川崑のタイポグラフィ 犬神家の一族の明朝体研究」

「新世紀エヴァンゲリオン」や「古畑任三郎」で画面一杯に映し出されるタイトルバックや出演者クレジットは、視聴者に強烈な印象を与えている。このような巨大文字によるインパクトのあるクレジットの先駆者といえるのが、映画監督の市川崑であり、彼の作品…