タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

激戦の硫黄島で最後まで抵抗した兵士たち。彼らの尊い犠牲に上に私たちの今があるのだと思う-梯久美子「散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官栗林忠道」

今年(2015年)は、太平洋戦争が終結してから70年の節目の年である。もうすぐ訪れる8月には、70回目の広島・長崎の原爆忌があり、70回目の終戦記念日がある。 戦後70年が経ったということは、その分戦争を直接的に経験した世代が確実に少なくなっているとい…

認知症を患った夫と彼を支える妻、そして子供、孫たちの十年-中島京子「長いお別れ」

本書の主人公は、東昇平さんとその妻曜子さんです。 長いお別れ 作者: 中島京子 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2015/05/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 長いお別れ (文春e-book) 作者: 中島京子 出版社/メーカー: 文藝春秋 発…

作家のイマジネーションが生み出す戦争のリアルと痛烈な批判-芥川龍之介、小松左京、星新一他「コレクション戦争と文学5 イマジネーションの戦争【幻】」

“戦争”とは、もちろん現実であり、戦場では誰かの血が流れ、無辜の市民が犠牲になる。 だが、フィクションの世界においては、少し事情が異なる。フィクションの世界では、現実には起こりえない戦争がたびたび発生する。宇宙人との戦争、未来世界の戦争、実体…

女コロンボ・福家警部補が犯人を追い詰める。彼女に目をつけられたらどんな犯人も逃げ切れない-大倉崇裕「福家警部補の追求」

刑事コロンボ、古畑任三郎。共通しているのは、犯人に対する執着心だろうか。倒叙式で、最初に犯行場面が描かれる。読者にはあらかじめ犯人が誰かわかっていて、その犯人を刑事がいかにして追い詰めていくかを見守る。 福家警部補の追及 (創元クライム・クラ…

目に見えている事だけに囚われていると本当の事が見えてこない。最後に明かされる真実に驚愕する-フェルディナント・フォン・シーラッハ「禁忌」

まず最初に言っておきたい。今度のシーラッハはスゴイよ。いや、今度“も”スゴイ、だな。 禁忌 作者: フェルディナント・フォン・シーラッハ,酒寄進一 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2015/01/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (16件) を見る …

語り部は“神”なのか?モヤッとした読後感が逆に癖になる不思議な感覚-舞城王太郎「淵の王」

舞城王太郎の作品を正しく説明し、評価することは、かなり難しいといつも感じる。ストーリーを説明するのも難しいし、作品のコンセプトやテーマは何かとと問われても、ズバッと本質をつく答えを出すのが難しい。 淵の王 作者: 舞城王太郎 出版社/メーカー: …

自ら知ろうとすることで本当の事がわかってくるのではないだろうか-早野龍五・糸井重里「知ろうとすること」

2011年3月11日に東日本大震災が発生し、福島第一原発事故が発生した。日本で起きた未曾有の原発事故では、情報が錯綜し、隠蔽され、誇張されることで、多くの人々を混乱させ、その混乱は約4年半が経過した今でも完全に終息し、払拭されたとは言い切れない。 …

あの事件が世の中に与えた衝撃は、作家をして最高の家族の物語を生み出した-窪美澄「さよなら、ニルヴァーナ」

先日、神戸連続児童殺傷事件の犯人・元少年Aが発表した「絶歌」についてのレビューをアップした。 これは懺悔なのか。それとも、ただの自己顕示なのか-元少年A「絶歌」 - ガタガタ書評ブログs-taka130922.hatenablog.com あの事件が与えた影響はあまりに大…

ショートショートの神様が紡ぎだす50の世界。どこを読んでも、いつ読んでも面白い不変の名作-星新一「ボッコちゃん」

自分のお小遣いで初めて買った文庫本は、星新一の「マイ国家」(新潮文庫)だった。星新一のショートショートは、当然だけどひとつひとつが短くて読みやすく、それでいてメチャクチャに面白かった。それから、星新一の作品にハマり、お小遣いの許す範囲で毎…

ショートショートの神様が紡ぎだす50の世界。どこを読んでも、いつ読んでも面白い不変の名作-星新一「ボッコちゃん」

自分のお小遣いで初めて買った文庫本は、星新一の「マイ国家」(新潮文庫)だった。星新一のショートショートは、当然だけどひとつひとつが短くて読みやすく、それでいてメチャクチャに面白かった。それから、星新一の作品にハマり、お小遣いの許す範囲で毎…

伊坂幸太郎の最高傑作?いえいえ、これは通過点にすぎないのです-伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」

伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」は、“ゴールデンスランバー=黄金の眠り”というその叙情的なタイトルとは裏腹に、ノンストップのジェットコースターアクションである。 ゴールデンスランバー (新潮文庫) 作者: 伊坂幸太郎 出版社/メーカー: 新潮社 発売…

嫌がらせ=愛、でもちょっと食傷気味-ttkk(kaori)「今日も嫌がらせ弁当 反抗期ムスメに向けたキャラ弁ママの逆襲」

“キャラ弁”なるものが登場してどのくらいになるだろう。マンガやアニメのキャラクターを精巧に再現した、もはや芸術的とも思えるようなキャラ弁もあれば、「あの~、それは一体なんですか?」と問い質したくなるようなキャラ弁もある。 たいていの場合、キャ…

第153回芥川賞を予想してみよう!

いよいよ今週の木曜7月16日に、第153回芥川賞、直木賞の選考会が行われますね。巷の話題は、やはりピースの又吉直樹が「火花」で芥川賞を受賞できるのか? ってことなんでしょうね。 第153回 芥川賞・直木賞発表&受賞者記者会見 生放送live.nicovideo.jp さ…

引き裂かれた中華の歴史に翻弄された人々の物語-東山彰良「流」

台湾と中国の間には、根深い国家間の対立が存在する。いや、“国家間”という言い振りは間違っているのだろう。なぜなら、中国は台湾を独立国家として認めてはいないし、国際社会においても台湾を独立した主権国家として正式に認めている国は22ヶ国しかなく、…

やはりこれは映画を観ておかないといけないなぁ~-園子温「ラブ&ピース」

本当なら映画をキチンと観てからとレビューすべきなのだろうけれど、なかなか映画館に行く時間の取れないまま締め切りを迎えそうなので、涙を飲んで書籍のみでレビューします。 何の話かっていうと、園子温「ラブ&ピース」の話です。 ラブ&ピース 作者: 園…