タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

【書評】アンヘル・エステバン/ステファニー・パニチェリ「絆と権力 ガルシア=マルケスとカストロ」(新潮社)-コロンビア生まれのノーベル賞作家とキューバ革命の指導者の友情

2015年7月。アメリカとキューバにそれぞれの大使館が開設されたことで、1961年以来続いてきた両国の国交断絶は解消された。これは、54年ぶりの出来事であり、歴史の1ページを開いた。今年(2016年3月)には、オバマ米大統領がキューバを訪問している。 絆と権…

【書評】泉麻人「東京ふつうの喫茶店」(平凡社)-スタバやタリーズでは味わえない佇まいと居心地。これぞ《ふつう》の喫茶店

喫茶店、好きですか? ※最近、この入りが気に入っている(笑) 東京ふつうの喫茶店 作者: 泉麻人 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 2010/05/26 メディア: 単行本 クリック: 13回 この商品を含むブログ (7件) を見る 最近では、スターバックスやタリーズなど…

【書評】大野裕之「チャップリンとヒトラー メディアとイメージの世界大戦」(岩波書店)-「独裁者」という映画にこめられたチャップリンの想いが、様々な障壁を克服し、感動的なラストシーンへと結実した

兵士たちよ!けだものに身をゆだねてはならない!あなたちを軽蔑し、奴隷にし、生き方を統制し、何をして、何を考えて、どう感じるかまで指図する奴らに。彼らはあなたたちを猛訓練させ、食事まで規制し、家畜のように扱って、大砲の餌食にする!そんな血の…

【書評】アティーク・ラヒーミー「悲しみを聴く石」(白水社)-アフガニスタンに生まれフランスで作家となった著者によって描かれる静謐な物語

アフガニスタンは、長く激動の場所として歴史を刻んできた。少なくとも、私がアフガニスタンという国を知って以来、現在に至るまでアフガニスタンに関する平和的な話はほとんど聞いたことがない。 悲しみを聴く石 (EXLIBRIS) 作者: アティークラヒーミー,Ati…

【書評】上野敏彦「闘う純米酒 神亀ひこ孫物語」(平凡社)-本物の純米酒を作りたい!蔵人の情熱が生み出した《神亀》という名酒の物語

日本酒、好きですか? 新版 闘う純米酒 (平凡社ライブラリー) 作者: 上野敏彦 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 2012/09/12 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (1件) を見る 私は、つい最近まであまり日本酒を飲んでいなかった。日本酒…

【書評】ジョージ・ソルト「ラーメンの語られざる歴史 世界的なラーメンブームは日本の政治危機から生まれた」(国書刊行会)-たかがラーメン、されどラーメン。日本の国民食となったラーメンの歴史を知るための1冊

ラーメン、好きですか? ラーメンの語られざる歴史 作者: ジョージソルト,George Solt,野下祥子 出版社/メーカー: 国書刊行会 発売日: 2015/09/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 日本中に、いわゆる「ラーメン専門店」は何軒くらいあ…

【書評】隆慶一郎「隆慶一郎全集6 鬼麿斬人剣」(新潮社)-不世出の名人と謳われた師匠・清麿が遺した不名誉な駄物を折り捨てる旅をする鬼麿の豪放磊落さが本書の最大の魅力であろう

鬼麿は庭で太刀を振っていた。十二年前の天保十三年(一八四二年)冬、鬼麿が初めて向う槌をとって師匠とともに鍛え上げた太刀だ。刃長三尺二寸五分、南北朝風の大太刀である。一般の大太刀の長さ(定寸)は二尺三寸だから異常ともいえる刃長である。身幅も…

【書評】夏目房之介「孫が読む漱石」(実業之日本社)-漱石没後100年。文豪の血をひくマンガコラムニストの著者が読む祖父の小説

今年(2016年)は、夏目漱石没後100年にあたるそうだ。 孫が読む漱石 (新潮文庫) 作者: 夏目房之介 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2009/03/02 メディア: 文庫 クリック: 7回 この商品を含むブログ (10件) を見る 孫が読む漱石 作者: 夏目房之介 出版社/メー…

【書評】ジュリー・オオツカ「屋根裏の仏さま」(新潮社)-今からおよそ100年前に海を渡った女性たちがいた。“写真花嫁”と呼ばれた女性たちの苦難の日々を描く秀作

明治から大正、昭和の初期までの間に、多くの日本人が太平洋を渡って、遠いアメリカへと移住したという。彼らは、言葉もよくわからない異国の地で、外国人(特にアジア人)であることによる差別に直面しながら、持ち前の勤勉さで少しずつ、その位置を確保し…

【書評】大崎梢「スクープのたまご」(文藝春秋)-スクープ合戦を繰り広げる週刊誌編集部に配属された女性記者が数々の修羅場を経験しながら事件記者として成長するお仕事小説

今年(2016年)に入って世間を騒然とさせるスクープを連発している週刊誌がある。 “センテンス・スプリング”こと「週刊文春」である。 スクープのたまご (文春e-book) 作者: 大崎梢 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2016/05/13 メディア: Kindle版 この商…