タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

戦後70年

アーサー・ビナード「知らなかった、ぼくらの戦争」(小学館)-この国がこの先いつまでも《戦後》である続けるために、私たちは何をすべきだろうか

知らなかった、ぼくらの戦争 作者: アーサービナード,Arthur Binard 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2017/03/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 今年2017年は、戦後72年にあたる。1945年に太平洋戦争が終戦して以降、日本は戦争を起…

【書評】リービ英雄他「コレクション戦争と文学~崩~9・11変容する戦争」(集英社)-9.11テロ以後の変容した戦争を描くアンソロジー

2001年9月11日、イスラム過激派の青年たちにハイジャックされた4機の航空機のうち3機がそれぞれ、ニューヨークのワールドトレードセンター北棟と南棟、ペンタゴンに激突した(1機は墜落)アメリカ同時多発テロ以降、戦争の形態は大きく様変わりした。 9・1…

【書評】中脇初枝「世界の果てのこどもたち」(講談社)-戦争によって翻弄されるこどもたちの数奇な運命と遅れてきた幸せ

読み進むにつれて、ドンドンと物語の世界に引き込まれていく。そういう小説に巡りあえると嬉しくなる。中脇初枝「世界の果てのこどもたち」は、読んでいて物語の世界に惹き込まれる作品だ。 世界の果てのこどもたち 作者: 中脇初枝 出版社/メーカー: 講談社 …

まるで翻訳小説を読んでいるような作品。日本の若手作家がここまで第二次大戦時のヨーロッパ戦争を描けるのかという驚きと期待-深緑野分「戦場のコックたち」

本書は、著者名を伏せて読んだら、海外文学の翻訳書と思い込んでしまうかもしれない。本書に描かれる第二次世界大戦のヨーロッパ戦線における苛烈な戦場の描写は、アメリカかイギリス出身のベテラン作家の手によるものと言われても納得してしまうほどにリア…

極寒のシベリアに抑留された著者の父の姿と日本に帰ることなく彼の地で命を落とした若者たちの慟哭−おざわゆき「凍りの掌 シベリア抑留記」

戦争は、ありとあらゆるこの世の地獄を生み出す。 各地で完膚なきまでに叩きのめされ玉砕した日本軍。 戦闘ではなく、疲労と飢餓の中で次々と命を落とした兵士たち。 東京をはじめとする本土への無差別爆撃や広島、長崎への原爆投下によって失われた国民の命…

たった一発の原爆が残した永遠に続く悲しみ-こうの史代「夕凪の街 桜の国」

8月6日広島。8月9日長崎。今年もそれぞれの場所で、平和のための祈りが捧げられた。 今年(2015年)、広島と長崎の平和祈念式典で奉納された原爆死没者名簿には、それぞれ以下の人数の死没者氏名が記載されている。 広島:29万7684名長崎:16万8767名 昭和20年…

おなご先生と12人の無垢な子供たちの瞳。戦争はのどかな海辺の村にも暗い影を落とした-壺井栄「二十四の瞳」

壺井栄は、1900年に小豆島で生まれた。その代表作である「二十四の瞳」の舞台も、著者の生まれ故郷である小豆島を想像させる穏やかな「瀬戸内海べりの一寒村」である。前任のおなご先生に代わって、新しいおなご先生が、岬の分教場に赴任してくる。おなご先…

熾烈を極めた沖縄戦。その中で懸命に生き延びようとしたひめゆりたち。2度と繰り返してはいけない戦争の記録−小林照幸「21世紀のひめゆり」

沖縄県本島の南の端、糸満市に「ひめゆり平和祈念資料館」がある。 今からもう13年も前になるが、2002年11月末から12月の初旬にかけて、仕事の関係で沖縄を訪問した。1週間ほどの滞在中のほとんどは仕事に忙殺されていたが、1日だけフリーの日があったので。…

高校野球100年の歴史には刻まれていない幻の夏-早坂隆「昭和十七年の夏 幻の甲子園 戦時下の球児たち」

今日2015年8月6日に、第97回全国高等学校野球選手権大会(いわゆる夏の甲子園)が開会した。 今年は、1915年に第1回大会が開催されてから100周年という節目の年になる。100周年記念として、メディアも大会前からずいぶんと盛り上がりをみせている。 だが、こ…

「ミサイルは弾薬」というならば、この愚劣な人間ミサイルも「弾薬」だというのか?-小林照幸「父は、特攻を命じた兵士だった 人間爆弾「桜花」とともに」

戦後70年ともなると戦争の記憶は確実に風化していく。当時子供で空襲を経験したり、学童疎開を経験した世代はまだギリギリ70代という方もおられるので、元気で存命の方も多いが、実際に従軍した経験を有する人はほとんどが80代〜90代であり、もうすでにその…

もうすぐ8月6日がきます。今年も広島の空は暑く晴れ渡るでしょうか?-松谷みよ子「ふたりのイーダ」

今年(2015年)2月に児童文学作家の松谷みよ子さんが89歳で亡くなりました。誰もがその作品を子供の頃に読んでいると思います。もしかしたら、大人になって自分の子供に読み聞かせたりもしているかもしれません。 ふたりのイーダ (講談社青い鳥文庫 6-6) 作…

激戦の硫黄島で最後まで抵抗した兵士たち。彼らの尊い犠牲に上に私たちの今があるのだと思う-梯久美子「散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官栗林忠道」

今年(2015年)は、太平洋戦争が終結してから70年の節目の年である。もうすぐ訪れる8月には、70回目の広島・長崎の原爆忌があり、70回目の終戦記念日がある。 戦後70年が経ったということは、その分戦争を直接的に経験した世代が確実に少なくなっているとい…