タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

【新装版】ゴーストドラム(スーザン・プライス/金原瑞人訳/サウザンブックス)-【再読】ゴーストドラムのリズムに導かれ、魔法使いチンギスは囚われの皇子サファを救いに向かう。「ゴースト三部作」の幕開けとなる物語

 

 

ある冬至の夜、ひとりの奴隷女が赤ん坊を産んだ。女の子だった。だが、奴隷の娘は奴隷になるしかない。女はわが子の逃れられない運命を嘆く。そこへ、ひとりの老婆が訪ねてくる。老婆は魔女だ。魔女は女に言う。「お前が腕に抱いている赤ん坊が生まれてくるのを、あたしは百年も待っていたんだよ」と。

「ゴーストドラム」は、1987年にカーネギー賞を受賞したファンタジー小説であり、金原瑞人訳で日本版が福武書店(現在のベネッセ)から刊行されたのが1991年である。その後、福武書店版の「ゴーストドラム」は絶版となり、長らく入手困難となっていたが、2017年にサウザンブックスのクラウドファンディングによって改訳版が刊行された。そして今回、「ゴーストドラム」に続く「ゴーストソング」「ゴーストダンス」の「ゴーストシリーズ」全巻の翻訳出版プロジェクトのクラウドファンディングが成立してシリーズ全巻の翻訳が決定し、本書も新装版となった。(2017年版のレビューは以下をご参照ください)

s-taka130922.hatenablog.com

物語は、奴隷女が産んだ赤ん坊を魔女が貰い受ける場面から始まる。老魔女は、その娘チンギスを一人前の魔女にするために、あらゆることを教える。チンギスは大いに学び、魔法使いとして成長する。

魔法使いチンギスの成長と並行して描かれるのが、囚われの皇子サファの物語だ。サファは、残虐非道な皇帝である父ガイドンによって、生まれながらにして宮殿の中のいちばん高い塔のてっぺんにある小さな部屋に閉じ込められた。窓もない狭い部屋で、外の世界を知らぬままサファは成長する。ただ小さな部屋の丸天井をみつめ、心の中で叫びをあげることしかできない。

チンギスがサファの叫びを聞いたとき、物語は動き出す。チンギスは、魔法の力でサファを救い出し、やがて皇帝が病で亡くなると後継者を巡る争いが起こる。皇帝の妹にして兄に勝るとも劣らぬ非道なマーガレッタは、姿を消したサファの存在に怒り、そして恐れる。サファの行方を必死に追い、多くの血が流れた。そこに、チンギスの存在を妬む魔法使いクズマが現れる。そして、クズマとチンギスの闘いが始まる。

チンギスは優秀な魔法使いだ。そして、クズマもそれに負けない能力を有する魔法使いだ。互いに高い能力を持つ魔法使い同士の闘いは、どのような行方をたどるのか。サファの運命、チンギスの運命をめぐる物語はどのような展開で描かれていくのか。全15章で構成される物語は、テンポよく描かれていて、ついつい先が気になる展開で読ませる。終盤、第10章からの展開は驚きと興奮の連続で、一気読みは必至だと思う。

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