タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

「ルシッドドリーム」中島さなえ/講談社-「これは夢だ」と自覚して見る夢“ルシッド・ドリーム”でつながる4つの短編たち

// リンク “ルシッド・ドリーム”とは、自らで「これは夢だ」と自覚して見る夢のことであり、“明晰夢”とも言われる。本書は、そのルシッド・ドリームを題材とした様々な人間模様の描かれる連作短編集である。 八丁堀の駅近くで開催されるルシッド・ドリーム・…

「放課後にシスター」中島さなえ/祥伝社-星海女学院の生徒たちに代々語り継がれる『シスター峰事件』とは?

// リンク 中学生、高校生くらいの頃、学校に代々語り継がれてきた噂話があったという人は多いだろうか。夜中になると自殺した生徒の霊が出るといった怪談話もあれば、◯◯年の卒業生が在学中に先生と駆け落ちしたみたいな話もあるかもしれない。 「放課後にシ…

「めんどくさい本屋」竹田信弥(本の種出版)-この『めんどくさい』にはいろいろな意味が込められている

liondo.thebase.in ときどき、「この人、いったいいつ寝てるんだろう?」と不思議に思う人がいる。竹田さんはそういう不思議な人の筆頭に位置している(私の中で)。 竹田さんは、赤坂にある『双子のライオン堂』という本屋の店主だ。本書「めんどくさい本屋…

「Xに対する逮捕状」フィリップ・マクドナルド/好野理恵訳/国書刊行会-『世界探偵小説全集』の第3巻。偶然耳にした会話から浮かび上がる犯罪計画。見えない犯罪者にゲスリン大佐が迫るサスペンス小説

// リンク 国書刊行会『世界探偵小説全集』の第3巻。著者はイギリスのミステリー作家フィリップ・マクドナルドで、アントニー・ゲスリン大佐を探偵役とする作品である。 アメリカ人の劇作家シェルドン・ギャレットは、自分が書いた芝居「賢者の休日」が公演…

「コピーボーイ」ヴィンス・ヴォーター/原田勝訳/岩波書店-大切な人との約束を果たすため、ヴィクターはひとり旅に出る。

// リンク ニュースの伝え手よ、目的地ばかり見ようとするな。そこまでの旅に常に目を向けよ。 ヴィンス・ヴォーター「コピーボーイ」は、吃音の少年ヴィクターのひと夏の経験を描いた「ペーパーボーイ」から6年後の物語だ。 17歳になったヴィクターは、メ…

「第二の銃声」アントニイ・バークリー/西崎憲訳/国書刊行会-『世界探偵小説全集』の第2巻。全編にあふれるユーモアと終盤の二転三転する展開にハマった

// リンク 「薔薇荘にて」に続く国書刊行会の『世界探偵小説全集』の第2巻。全集全体の中で最初に配本された作品となる。著者は、「毒入りチョコレート事件」などの作品で知られるアントニイ・バークリーで、原著は1930年に刊行された。ちなみに本書の刊行…

「白の闇」ジョゼ・サラマーゴ/雨沢泰訳/河出書房新社-突然目が見えなくなる謎の感染症が蔓延した世界。異常な世界で露呈する人間の悪意とエゴを冷静な筆致で描き出す

// リンク 突然、ひとりの男の目が見えなくなるところから物語は始まる。信号待ちをする車の列。横断歩道を行き交う人の波。やがて信号は赤から青に変わるが1台の車が動き出さない。不審に思った人々が集まってくる。運転席の男がなにか叫んでいる。 目が見…