タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ニコラ・ド・イルシング/末松氷海子訳、三原紫野絵「なんでもただ会社」(日本標準)-なんでもタダ!なんと甘美な言葉!でも、甘い言葉には必ず裏があるよ、気をつけて!

www.e-hon.ne.jp // 無料!タダ! なんと心惹かれるワードなんでしょう。ランチタイムに入った定食屋さんでごはんと味噌汁のおかわりが無料!とか、ラーメン屋さんで大盛無料!とか、今ならエアコンの取付工事費が無料!とか、世の中には無料・タダが溢れて…

ライマン・フランク・ボーム/宮坂宏美訳「完訳オズの魔法使い」(復刊ドットコム)-よく知っている物語ですが、本ははじめて読みました

www.e-hon.ne.jp // 「オズの魔法使い」は、映像作品では観たことがあっても本を読んだことがありませんでした。今回、『はじめての海外文学vol.4』で訳者でもある宮坂宏美さんが推薦したので読んでみました。 カンザス州で、お百姓のヘンリーおじさん、奥さ…

友田とん「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する1 まだ歩きださない」(代わりに読む人)-「『百年の孤独』をか代わりに読む」の友田とん、今度はパリのガイドブックで東京を歩く!?

パリのガイドブックで東京の町を闊歩する: まだ歩きださない (1) 作者: 友田とん 出版社/メーカー: 代わりに読む人 発売日: 2019/04/22 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る // 「『百年の孤独』を代わりに読む」という、なんとも興味をそそられるタ…

ロバート・ニュートン・ベック/金原瑞人訳「豚の死なない日」(白水社)-父と息子をつなぐ強くて深い絆の物語

www.e-hon.ne.jp // 父、ヘイヴン・ペックに……父は寡黙で穏やかで豚を殺すのが仕事だった。 ロバート・ニュートン・ベック「豚の死なない日」は、息子と父の物語だ。 主人公のロバートは、著者ロバート・ニュートン・ベック自身である。「豚の死なない日」は…

ハン・ガン/斎藤真理子訳「すべての、白いものたちの」(河出書房新社)-白きもの、それは、儚くて、柔らかくて、優しくて、少し怖い

www.e-hon.ne.jp // 小説というよりは、ひとつひとつが美しい詩歌のような、胸にじんわりと染み入ってくるような作品だと感じた。 そう、これは『作品』だ。「小説」であり「物語」でありながら「小説」でも「物語」でもない。『作品』なのである。 芸術的と…

チョ・ナムジュ/斎藤真理子訳「82年生まれ、キム・ジヨン」(筑摩書房)-どれだけ理解したつもりでも、どこかに男性目線のバイアスが生まれる。キム・ジヨンを診察しカルテを記した精神科医と私は『同じ穴の狢』なのだ

www.e-hon.ne.jp // 韓国で100万部を突破する大ベストセラーとなり、日本でも2018年12月に刊行後10万部を超えるベストセラーとなった話題の本である。 キム・ジヨン氏、三十三歳。三年前に結婚し、昨年、女の子を出産した。 こんな、ちょっと無機質とも思え…

鹿子裕文「へろへろ~雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々」(ナナロク社、筑摩書房(文庫))-読んでいる間は、ただただ笑っていた。でもそれで終わりじゃなかった。読み終わったときには胸に深く刻まれるものが残されていた。

へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々 作者: 鹿子裕文,装画:奥村門土(モンドくん),AD:寄藤文平+鈴木千佳子 出版社/メーカー: ナナロク社 発売日: 2015/12/12 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (7件) を見る // ナナロク社版の「へろへ…

J・G・バラード/南山宏「ハロー、アメリカ」(東京創元社)-アメリカ崩壊から1世紀。荒廃し砂漠と化した大地が見せつける人間の狂気。

www.e-hon.ne.jp // イギリスから大西洋を横断してアメリカ大陸を目指した蒸気船アポロ号がマンハッタン島に到着する場面からJ・G・バラードのSF長編「ハロー、アメリカ」は始まる。 書き出しからは、この物語の時代設定がアメリカ大陸がコロンブスによって…