タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

【書評】平松洋子「味なメニュー」(幻冬舎)−メニューを開くというのは、パンドラの箱を開けるようなものなのかもしれない

本書の最終章「黒板と筆ペン」にこんな場面がある。 「ずいぶんうれしそうに読みますね。まだ食べてもいないのに」向かいの席のひとに苦笑されたことがある。ずばり指摘されて赤面したが、ちょっとうれしくもあった。わかってくれてありがとう。一行め、二行…

【書評】サルー・ブライアリー「25年目の『ただいま』 5歳で迷子になった僕と家族の物語」(静山社)ーこれは、紛れもない真実の物語である。にわかには信じがたいかもしれないけれど

ここに書かれているのは、作り話ではない、真実の物語だ。 25年目の「ただいま」 作者: サルー・ブライアリー,舩山むつみ 出版社/メーカー: 静山社 発売日: 2015/09/18 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 本書「25年目の『ただい…

【書評】紗倉まな「最低。」(KADOKAWA)ーAVの世界で生きる女性を描くことで見えてくる《最低》の本質。その先にある希望

現役AV女優が、AV業界を舞台にして描き出す赤裸々な業界ストーリー。 最低。 作者: 紗倉まな 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー 発売日: 2016/02/12 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 最低。<最低。> (ダ・ヴィンチブックス) 作者…

【書評】安堂友子「日本文学(墓)全集 時どきスイーツ」(ぶんか社)-文豪の墓を巡り、ちょっと寄り道してスイーツを楽しむためのコミックエッセイ

《ハカマイラー》なる言葉があるのを初めて知った。漢字混じりで書くと《墓マイラー》である。 日本文学(墓)全集 時どきスイーツ 作者: 安堂友子 出版社/メーカー: ぶんか社 発売日: 2015/03/13 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 日本文学(墓)…

【書評】隆慶一郎「隆慶一郎全集1 吉原御免状」(新潮社)ー時代小説に偉大な爪痕を残し、短い作家人生を駆け抜けた隆慶一郎氏のデビュー作

時代小説を面白くするのはケレン味であると個人的に思っている。 隆慶一郎全集第一巻 吉原御免状 作者: 隆慶一郎 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2009/09/12 メディア: 単行本 クリック: 13回 この商品を含むブログ (8件) を見る

【書評】キルメン・ウリベ「ムシェ 小さな英雄の物語」(白水社)ー戦争は英雄を作り、英雄を殺す。そこには人間の物語がある

本書のラストから引用する。 2010年11月28日、僕たちの娘アラネが生まれた。2011年4月24日、僕の友人アイツォル・アラマイオが亡くなった。一緒に過ごしたほとんど最後の機会となったある日、アイツォルは僕に言った。「お前は英雄の物語を書くべきだよ」「…

【書評】紗倉まな「高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職」(宝島社)−自分の仕事を《天職》と胸を張って言える幸せ

最近、テレビとか雑誌とかネットとかで、女性のグラビアを見るときに思うことがある。 この女性は、アイドルなのか?女優なのか?グラビアモデルなのか?それともAV女優なのか? こういうグラビアでにこやかな笑顔を振りまいてみせる女性は、例外なく美しく…

【イベントレポ】東京国際文芸フェスティバル2016のイベントに参加してきた!

2016年3月2日〜3月6日に、世界中から文芸に関わる作家、編集者などが東京に集結して、東京国際文芸フェスティバル2016が開催されました。 tokyolitfest.com 期間中、東京都内各所(一部は京都)で数多くのイベントが開催されました。開催プログラムの一覧は…

【書評】ヘニング・マンケル「霜の降りる前に」(東京創元社)ーヴァランダーシリーズ初読み。このシリーズは最初から読むことをオススメします

スウェーデンの作家ヘニング・マンケルによる警察小説「刑事ヴァランダーシリーズ」の日本翻訳最新刊である。実は本書が、ヴァランダーシリーズ初読み。 霜の降りる前に〈上〉 (創元推理文庫) 作者: ヘニング・マンケル,柳沢由実子 出版社/メーカー: 東京創…

【書評】トム・ロブ・スミス「偽りの楽園」(新潮文庫)ー本当に狂っているのは誰か?家族同士で抱える秘密とそこから生まれる疑心

ロンドンに暮らすダニエルのもとに、父・クリスから電話が突然かかってくる場面から、トム・ロブ・スミス「偽りの楽園」の物語は始まる。 偽りの楽園(上) (新潮文庫) 作者: トム・ロブスミス,Tom Rob Smith,田口俊樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2015/0…

【書評】マイケル・サンデル「これからの『正義』の話をしよう」(早川書房)ーだから《正義のヒーロー》は苦悩するのだな(ちょっと違う)

私が子供のころ、ヒーローというのは勧善懲悪で、悪の組織が繰り出す怪人とか、宇宙から飛来するエイリアンとか、およそ人間にとって敵となる相手に対しては、同情の余地なく完膚なきまでに叩き潰したものです。 ですが、どうも最近のヒーローは悩むものらし…

【震災5周年祈念】《あの日》の被災地と《あの日》の被災者について、5年後の今改めて考えてみるー石井光太「津波の墓標」(徳間書店)

3月11日になりました。震災関連本で東日本大震災を振り返る企画も今日が最後です。 あの日、地震と津波は、多くの命を奪い、街の姿を大きく変えてしまいました。 変えてしまったのは、街の姿だけではありません。被災者となって避難所に暮らす住民たちの心も…

【震災5周年祈念】阪神大震災と東日本大震災。ふたつの震災が私たちにもたらしたもの-西岡研介/松本創「ふたつの震災~[1・17]の神戸から[3・11]の東北へ」(講談社)

東日本大震災から5年目の3.11に向け、震災関連本のレビューを通じて振り返る企画の4日目です。 今回は、阪神淡路大震災と東日本大震災というふたつの大きな災害について記したノンフィクションを紹介します。 ふたつの震災 [1・17]の神戸から[3・11]の東北へ…

【震災5周年祈念】私たちは、福島の未来を、日本の未来を、永遠に考え続けなければならない-森達也、毎日小学生新聞編「僕のお父さんは東電の社員です~小中学生たちの白熱議論!3.11と働くことの意味」(現代書館)

震災関連本レビュー企画の3日目です。今回は、福島原発事故に関する本を取り上げます。 「僕のお父さんは東電の社員です」 作者: 森達也著+毎日小学生新聞編 出版社/メーカー: 現代書館 発売日: 2011/11/25 メディア: 単行本(ソフトカバー) 購入: 7人 ク…

【震災5周年祈念】『情報を伝える』というメディアの使命を果たすこと-河北新報社「河北新報のいちばん長い日~震災下の地元紙」(文藝春秋)

震災関連の本を通じて、あの大震災を振り返ってみようという連続レビュー企画の第2回になります。 今回は、大震災直後に被災者へ情報を届けるために奮闘した地方新聞社の活動を通じて、災害時の情報伝達に関わるメディアの必要性を考えてみたいと思います。 …

【震災5周年祈念】あの日、あの地震を経験した記憶を忘れないために-彩瀬まる「暗い夜、星を数えて 3・11被災鉄道からの脱出」(新潮社)

2011年3月11日14時46分に、後に《東日本大震災》と呼ばれる巨大地震が発生しました。 もうすぐ、あの日から5年になります。そこで、今週は3月11日(金)までの5日間、東日本大震災について書かれた本についてレビューしながら、あの日を振り返りたいと思いま…

【書評】太宰治「畜犬談ー伊馬鵜平君に与えるー」ー太宰先生、ホントは犬が好きなんですよね?

こんにちは!アタシは、いつもレビューを書いているタカラ〜ムの家で暮らしているビーグルのラム(女の子)よ! 今回は、アタシが太宰治先生の「畜犬談ー伊馬鵜平君に与えるー」についてレビューしちゃうね! 畜犬談 ?伊馬鵜平君に与える? 作者: 太宰治 発売…

【書評】新美南吉「ごん狐」-物議をかもしたある小学生の感想~ごんと兵十。彼らを待ち受ける数奇な運命とは?

●ある小学生の感想何年前になりますかね、この新美南吉の名作童話「ごん狐」に関する、とある小学生の感想がネット上で物議を醸したことがあったんですが、覚えてますか?(というか知ってましたか?) その小学生の感想というのが、簡単に言っちゃうと、 ご…