タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

究極の《断捨離》がここにある-中崎タツヤ「もたない男」

《断捨離》したことありますか? もたない男 (新潮文庫) 作者: 中崎タツヤ 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2015/05/28 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (4件) を見る 今更、「《断捨離》ってなに?」みたいな方はいないだろうと決めつけてしまえるく…

大規模なシステム開発プロジェクトの裏でITエンジニアは命を削る。犯罪に走るヤツも出てくるだろうね-藤井太洋「ビッグデータ・コネクト」

IT業界で働いていると、とても尋常とは思えないような働き方をした経験のあるエンジニアの話を当たり前のように聞くことがある。月の労働時間が300時間を超えたとか、1週間以上家に帰っていないとか、毎日深夜タクシー帰宅を続けて1ヶ月のタクシー代が数十万…

讃岐うどんブームの火付け役麺通団団長の「うどんめぐり指南」という体裁のバカ話(笑)-田尾和俊「超麺通団~讃岐うどんめぐり指南の書」

麺類が好き。中でもうどんが好き、という話は以前にも書いたかと思うけど、ここでもう一度繰り返しておきたい。 「うどんが好きです!」 さて、世の中にはいろいろな「三大○○」というのがあると、「マツコ・有吉の怒り新党」でも言っているように、うどんに…

シュールとはこういう作品を指していうのだな-アルベルト・モラヴィア「薔薇とハナムグリ~シュルレアリスム・風刺短篇集」

「シュールだねぇ~」なんて言葉をよく聞く。私たちの耳に一番ポピュラーなのは、昔でいえばツービート、最近ならば爆笑問題あたりの、世間とか政治とかを皮肉ったブラックユーモア系の漫才とかコントに対する評価だろうか。 世間的には、単なる悪口であって…

人間を大きく成長させるのは、強力なライバルの存在なのかもしれない-澤田瞳子「若冲」

私には、絵心もなければ美術史にも疎いので、伊藤若冲なる絵師についての知識はまったくない。今年は、若冲の生誕三百年として、若冲と同い年の与謝蕪村と合わせた展覧会も開催されていたそうだが、それもレビューを書くためにネットを検索していて知った。 …

1944年ベルリンを舞台にユダヤ人の元刑事とナチス上級将校のコンビが挑む猟奇殺人事件の謎-ハラルト・ギルバース「ゲルマニア」

この本、読み終わってから少し寝かせてしまいましてね。特に理由はないのですが、他の本を読んでたり、8月に入って戦後70年で戦争関連の本を集中して読んでいたりしたもので。 ということで、改めてレビューしていきます。 ゲルマニア (集英社文庫) 作者: ハ…

“親になる”ことで、誰もが新しい人生の朝を迎えることができるのだと思う-辻村深月「朝が来る」

「あなたのお子さんがお友だちに怪我をさせてしまったみたいです」「おたくの○○ちゃん、ウチの子に怪我させちゃったみたいなんだよね」 学校やママ友からそう言われても、我が子が「自分はやってない」と主張したら、親として子供を信じるのが、まずは正しい…

極寒のシベリアに抑留された著者の父の姿と日本に帰ることなく彼の地で命を落とした若者たちの慟哭−おざわゆき「凍りの掌 シベリア抑留記」

戦争は、ありとあらゆるこの世の地獄を生み出す。 各地で完膚なきまでに叩きのめされ玉砕した日本軍。 戦闘ではなく、疲労と飢餓の中で次々と命を落とした兵士たち。 東京をはじめとする本土への無差別爆撃や広島、長崎への原爆投下によって失われた国民の命…

たった一発の原爆が残した永遠に続く悲しみ-こうの史代「夕凪の街 桜の国」

8月6日広島。8月9日長崎。今年もそれぞれの場所で、平和のための祈りが捧げられた。 今年(2015年)、広島と長崎の平和祈念式典で奉納された原爆死没者名簿には、それぞれ以下の人数の死没者氏名が記載されている。 広島:29万7684名長崎:16万8767名 昭和20年…

おなご先生と12人の無垢な子供たちの瞳。戦争はのどかな海辺の村にも暗い影を落とした-壺井栄「二十四の瞳」

壺井栄は、1900年に小豆島で生まれた。その代表作である「二十四の瞳」の舞台も、著者の生まれ故郷である小豆島を想像させる穏やかな「瀬戸内海べりの一寒村」である。前任のおなご先生に代わって、新しいおなご先生が、岬の分教場に赴任してくる。おなご先…

熾烈を極めた沖縄戦。その中で懸命に生き延びようとしたひめゆりたち。2度と繰り返してはいけない戦争の記録−小林照幸「21世紀のひめゆり」

沖縄県本島の南の端、糸満市に「ひめゆり平和祈念資料館」がある。 今からもう13年も前になるが、2002年11月末から12月の初旬にかけて、仕事の関係で沖縄を訪問した。1週間ほどの滞在中のほとんどは仕事に忙殺されていたが、1日だけフリーの日があったので。…

高校野球100年の歴史には刻まれていない幻の夏-早坂隆「昭和十七年の夏 幻の甲子園 戦時下の球児たち」

今日2015年8月6日に、第97回全国高等学校野球選手権大会(いわゆる夏の甲子園)が開会した。 今年は、1915年に第1回大会が開催されてから100周年という節目の年になる。100周年記念として、メディアも大会前からずいぶんと盛り上がりをみせている。 だが、こ…

「ミサイルは弾薬」というならば、この愚劣な人間ミサイルも「弾薬」だというのか?-小林照幸「父は、特攻を命じた兵士だった 人間爆弾「桜花」とともに」

戦後70年ともなると戦争の記憶は確実に風化していく。当時子供で空襲を経験したり、学童疎開を経験した世代はまだギリギリ70代という方もおられるので、元気で存命の方も多いが、実際に従軍した経験を有する人はほとんどが80代〜90代であり、もうすでにその…

もうすぐ8月6日がきます。今年も広島の空は暑く晴れ渡るでしょうか?-松谷みよ子「ふたりのイーダ」

今年(2015年)2月に児童文学作家の松谷みよ子さんが89歳で亡くなりました。誰もがその作品を子供の頃に読んでいると思います。もしかしたら、大人になって自分の子供に読み聞かせたりもしているかもしれません。 ふたりのイーダ (講談社青い鳥文庫 6-6) 作…

日航ジャンボ機墜落事故から30年。妻を、子供を、両親を亡くした夫や息子たちの記録-門田隆将「風にそよぐ墓標~父と息子の日航機墜落事故」

8月は鎮魂の季節である。ヒロシマ、ナガサキ、そして終戦の日へと続く戦争の記憶とその犠牲となった人々へと鎮魂がある。そして、もうひとつ忘れてはいけない大きな事故がある。日航ジャンボ機墜落事故だ。 風にそよぐ墓標?父と息子の日航機墜落事故? 作者: …