タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「ブックオフ大学ぶらぶら学部」武田砂鉄、山下賢二、他/岬書店-みんなにとっての『ブックオフ』。あなたにとっての『ブックオフ』。私にとっての『ブックオフ』

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ブックオフ』はこれまで数え切れないくらい利用してきた。単行本や文庫の比較的新しい作品が半額になっているのをヒャッホー!と手に取り、100円棚で「おぉ、これが100円!」と驚いたりしながら、あれもこれもと買い物かごに放り込んだ。ときに十数冊の本を抱えてレジに差し出し会計をする。合計で2000円前後。安い。「いい買い物をしたなぁ」とホクホクで家に帰り、山のような積ん読本の中に買ってきた本を積み増した。

ブックオフ大学 ぶらぶら学部」は、夏葉社の別レーベル『岬書店』から刊行された全編に執筆メンバーのブックオフ愛があふれる一冊になっている。

■執筆メンバー(敬称略)
武田砂鉄(ライター)「ブックオフのおかげ」
山下賢二(ホホホ座)「その時、人は無防備で集中する」
小国貴司(BOOKS青いカバ)「ブックオフは「暴力」だ」
Z(せどらー)「ブックオフとせどらーはいかにして共倒れしたか~せどらー視点から見るブックオフ・クロニクル
佐藤晋(ドジブックス)「私の新古書店
馬場幸治(古書ビビビ)「ブックオフに行き過ぎた男はこれからもブックオフに行く、そして二〇年後も」
島田潤一郎(夏葉社)「拝啓ブックオフさま」
大石トロンボ(漫画家)「よりぬき新古書ファイター真吾」

それぞれが自分にとってのブックオフを語っているのだが、内容は大きくふたつに分かれる。

・古本や中古CD、DVDなどを購入する『利用者』の視点
・相場よりも安く購入し他の古書店で高く売る『商売人』の視点

後者は『せどり』とよばれ、梶山季之せどり男爵数奇譚」や芳崎せいむ金魚屋古書店」などにも登場する。『せどり』は、市場では高価に取引されている古書を、その価値に気づいていなかったり、得意ジャンル以外として均一棚などで安価に販売している古書店を丹念に探し回って購入し、別の古書店(その古書の価値がわかっている)に買い取ってもらうことで利益を得る商売だ。

今でこそブックオフは、均一棚以外の古本はそれなりの値付けで販売しているが、以前は機械的に定価の半額で売られていた。市場での価値とか関係なく定価の半額やそれ以下で買えるので、新刊では買えない本もブックオフなら買えるという時期があった。そこに目をつけたのが『せどらー』たちだ。

『せどらー』視点でのブックオフについては、Zさんのパートを読むと面白い。私なんかは、ブックオフは安く本が買える古本屋としかみていなかったので、『せどらー』たちとブックオフとの攻防や『ビームせどり』などという手法(というか用語?)があることも今回はじめて知った。

さまざまな書き手がそれぞれのブックオフを書いているが、個人的に読んでいて一番面白かったし共感したのが、BOOKS青いカバの小国貴司さんの「ブックオフは「暴力」だ」だった。内容は、小国さんが、「平井の本棚」という本屋の津守恵子さんと越智風花さん(以前は長野で「おんせんブックス」を営んでいた方)、某版元株主のY氏の4人によるブックオフ巡礼の珍道中を記したものだ。休みの日に何軒もブックオフをはしごする、というのは私も経験があるし、4人が向かったのが千葉方面ということも千葉県民として馴染みがある場所が出てきて、「千葉でブックオフ巡り」という共感ポイントありまくりだったし、「これが200円!?」とか「ここでこの本に出会えるとは!」といったエピソードがこれまた共感の嵐。もっとたくさんのブックオフに行きたいと思っているのに、ついつい1軒で時間を使ってしまうなんてのも「あるある!」と頷くところ。小国さんのパートを読んで、私も今度流山のブックオフに行ってみようと思いました。

私もブックオフは、今でも頻繁に利用しているし、意外な本を均一棚で購入したこともある。個人的に一番の拾い物は、ウンベルト・エーコ薔薇の名前」を100円で見つけたこと。上下巻なので合わせて200円+消費税で入手した。これは個人的にはかなり嬉しかった。あ、でも買っただけでまだ読んでません(笑)

インディーズレーベルで通常の書店ではなかなか手に入らないかもしれない本書だが、ネットで「ブックオフ大学」で検索するとオンラインで販売しているお店もある。ブックオフが好きな人も嫌いな人も読んで面白いのでオススメです。