タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

【書評】パトリシア・ハイスミス「キャロル」(河出書房新社)−美しき年上の女性キャロルに魅せられた18歳の無垢な少女テレーズ。禁断の関係が生み出す美しき愛の形

このレビューを書いているのは、2016年2月29日であり、第88回アカデミー賞の授賞式が、ハリウッドで開催される日である。 www.wowow.co.jp パトリシア・ハイスミス「キャロル」を原作とした映画「キャロル」を映画館で鑑賞してきた。キャロルを演じるのは、2…

【書評】平松洋子「焼き餃子と名画座 わたしの東京味歩き」(新潮文庫)−平松さんの文章からわきあがってくるシズル感。24時間いつ読んでもお腹が空いてしまう1冊

今は、インターネットで日本はおろか世界中のレストラン情報が手に入るようになりました。私もそうですが、このレビューを読んでいただいている多くの方々も、「食べログ」とか「ぐるなび」とかでお店を探したり、評判を検索したりしてますよね。 ネット情報…

【書評】都甲幸治他「きっとあなたは、あの本が好き。~連想でつながる読書ガイド」(立東舎)-大好きな本について語り合うことの楽しさ

今、読書会がちょっとしたブームになっているらしい。本が大好きな人たちが集まって、ひとつの本について語り合ったり、テーマにそって話し合ったりするのだそうだ。うん、それは楽しそう。 オフラインでの読書会に限らず、ツイッター上でのやりとりや、「読…

【書評】村田沙耶香「消滅世界」(河出書房新社)-《クレイジー》と称される作家が描くこの世界はユートピアなのかディストピアなのか?

先日、「王様のブランチ」のブックコーナーに村田沙耶香さんが出演されていた。なんでも、朝井リョウ氏ら作家仲間からは《クレイジー沙耶香》と呼ばれているらしい。 その《クレイジー》な作家が描き出す特異な世界は、確かにぶっ飛んだ世界だった。本書「消…

【書評】中島さなえ「わるいうさぎ」(双葉社)−実験施設を逃げ出した《わるいうさぎ》と彼が出会う動物たちのちょっとダークなお話

中島さなえの小説を読むのは久しぶりだった。 わるいうさぎ 作者: 中島さなえ 出版社/メーカー: 双葉社 発売日: 2015/08/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る わるいうさぎ 作者: 中島さなえ 出版社/メーカー: 双葉社 発売日: 2015/10/09 メディ…

【書評】オルダス・ハクスリー「すばらしい新世界」(光文社古典新訳文庫)-大量生産・大量消費・フリーセックス。発展の先に待ち受けるディストピア

『すばらしい新世界』の基本的なテーマとなっているのは故人と社会の軋轢で、そこに大量生産・大量消費を中心とする社会の興隆と優生学の不気味な発達を背景に、科学と政治が結びついた場合の危険性、特に官僚組織がそこに関わった場合の危険性が描かれてい…

【書評】ニコラス・ブレイク「野獣死すべし」(早川書房)−息子を亡くした父親の復讐劇。構成の妙が冴える古典ミステリーの傑作

誰かを殺したいと考えたことがあるだろうか? 野獣死すべし (ハヤカワ・ミステリ文庫 17-1) 作者: ニコラス・ブレイク,永井淳 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 1976/01 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 12回 この商品を含むブログ (11件) を見る 野獣…