タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「仙童たち 天狗さらいとその予後について」栗林佐知/未知谷-天狗にさらわれた4人の子どもたち抱える苦痛。天狗はその苦痛から彼らを救ったのだろうか

// リンク ある日突然子どもが行方不明になる。子どもの神隠しを昔は『天狗さらい』といって、天狗が子どもをさらっていったと考えられていたという。平田篤胤の「仙境異聞」は、江戸文政年間に天狗にさらわれたといわれる寅吉という少年の記録である。 栗林…

「あの本は読まれているか」ラーラ・プレスコット/吉澤康子訳/東京創元社-(プルーフ版先読み)東西冷戦下、一冊の本によって世界は変わるのか? 出版権200万ドル、初版20万部、世界30ヶ国で翻訳刊行のデビュー作。

// リンク 4月刊行予定のラーラ・プレスコット「あの本は読まれているか」を発売前のプルーフ版で読む機会をいただきました。訳者の吉澤康子さん、版元の東京創元社さん、ありがとうございます。 本書は、デビュー作としては破格の200万ドル(約2億円)で出…

「ニジノ絵本屋さんの本 本屋さんで、出版社で、絵本パフォーマー。」いしいあや文、小林由季イラスト/西日本出版社-絵本屋、出版社、パフォーマーと、さまざまな顔を持つ『ニジノ絵本屋』はこうしてできあがった

// リンク 『ニジノ絵本屋』は、東京東横線の都立大学駅近くにある絵本専門書店です。2011年にわずか1.5坪の小さなスペースからスタートして、2017年に現在の店舗に移転しました。 nijinoehonya.com 本書「ニジノ絵本屋さんの本」は、ニジノ絵本屋代表のいし…

「広場」崔仁勲/吉川凪訳/クオン-〈韓国最高の小説〉にも選ばれ、長く読まれ続けている作品。誰もが自らの『広場』を探し続けていると考えさせられる小説。

// リンク 「人は広場に出なければ生きられない」 著者は本書の前書きをこう書き始めている。そして、「しかしその反面、人間は密室に引きこもらずには生きられない動物だ」と記す。 訳者あとがきによると、「広場」は、1960年に雑誌「夜明け(セビョク)」…

「ZENOBIA(ゼノビア)」モーテン・デュアー文、ラース・ホーネマン絵/荒木美弥子/サウザンブックス-デンマークの作家が描き出すシリア難民少女の物語

// リンク 遠く水平線が広がる海原に、ぎっしりと大勢の人を乗せたちっぽけな小舟が浮かんでいる。舟にはひとりの少女が大人たちと肩を寄せあって窮屈そうに座っている。やがて、おとなしかった海は波の荒れ狂う海へと姿を変え、ちっぽけな小舟はその波に飲…

「1793」ニクラス・ナット・オ・ダーグ/ヘレンハルメ美穂/小学館-両手足を切断され両目をえぐり取られた惨殺死体。労咳で残り少ない人生を生きる法律家と戦争で左腕を失った義腕の引っ立て屋は猟奇殺人の謎を追う。

// リンク 1793年のスウェーデンを舞台に、労咳(肺結核)を病んでいる法律家セーシル・ヴィンゲと、ロシアとの戦争に従軍して左腕を失い義腕となった引っ立て屋ミッケル・カルデルがコンビとなって猟奇殺人事件の謎に挑むミステリ小説。 著者はあとがきで、…

「ネルーダ事件」ロベルト・アンプエロ/宮崎真紀訳/早川書房(ポケットミステリ)-1973年。激動のチリでカジェタノはパブロ・ネルーダと出会う。それがすべての始まりだった。

// リンク 南米チリの作家ロベルト・アンプエロの私立探偵カジェタノ・ブルレを主人公とするシリーズの第6作にあたるミステリ作品。 タイトルにもなっている“ネルーダ”とは、チリの詩人でノーベル賞作家のパブロ・ネルーダのこと。物語は、カジェタノが探偵…

「原州通信」イ・ギホ/清水知佐子訳/クオン-成長できない男の悲哀がユーモラスであり、どこか我が身に重ねてみたりするなど

// リンク 文学を中心に韓国なさまざまな本を翻訳紹介している出版社『クオン』が手掛ける『きむふなセレクション・韓国文学ショートショート』シリーズは、1篇の短篇小説の日本語訳と韓国語原文を両方掲載し、かつ韓国語の朗読音声をYoutubeで視聴すること…

「鯨」チョン・ミョングァン/斎藤真理子訳/晶文社-これぞエンタメ小説!圧倒的な想像力で創造される物語の迫力に魅了されました。

// リンク 『ワイドスクリーンバロック』という言葉をご存知だろうか。 2020年1月に大阪の梅田蔦屋書店で開催された「はじめての海外文学スペシャルin大阪」イベントに登壇された翻訳家増田まもるさんのプレゼンで知った言葉だ。物語をいかに大きくいかにと…

「古くてあたらしい仕事」島田潤一郎/新潮社-『古くてあたらしい仕事』というタイトルにこめられた夏葉社10年の軌跡

// リンク ひとり出版社『夏葉社』の島田潤一郎さんが、ご自身が夏葉社を立ち上げるまでの日々や立ち上げてからのさまざまな出来事を綴った本。 「古くてあたらしい仕事」というタイトルが秀逸だ。出版業界はかなり以前から斜陽産業と言われ続けていて、特に…

「完訳オズのふしぎな国」ライマン・フランク・ボーム/宮坂宏美訳/復刊ドットコム-ラストに待ち受ける驚愕の真相!エメラルド王国を追われたかかしの運命はいかに!(注:本書はファンタジーです)

// リンク 「アガサ・クリスティの『オリエント急行の殺人』と『アクロイド殺し』と『カーテン』を合わせたくらいの大大大どんでん返し」「ミステリ通を自認するならこの作品を知らないのはモグリ」 『はじめての海外文学スペシャルイベント』で壇上に立った…

「赤い衝動」サンドラ・ブラウン/林啓恵訳/集英社-25年前の爆破事件で英雄となった少佐はなぜ銃撃されたのか? 過去と現在をつなぐ真実とは?

// リンク はじめて読むジャンルの作品。著者サンドラ・ブラウンは『ロマンス小説』の第一人者で、60作以上の作品を発表していて大半がベストセラーになっている。 本書「赤い衝動」もロマンス小説だが、ミステリ小説としての要素が高く、非常に読み応えがあ…

「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ 願いをかなえる呪文」クリス・コルファー/田内志文訳/平凡社-双子の兄弟アレックスとコナーが、12歳の誕生日におばあちゃんからもらったのは『ランド・オブ・ストーリーズ』という不思議な本でした

// リンク 「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ 願いをかなえる呪文」は、白雪姫やシンデレラ、赤ずきん、ラプンツェル、眠りの森の美女といったおとぎ話のその後の世界に迷い込んでしまった双子の兄妹が、元の世界に戻るための『願いをかなえる呪文』を手に入…

「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ 願いをかなえる呪文」クリス・コルファー/田内志文訳/平凡社-双子の兄弟アレックスとコナーが、12歳の誕生日におばあちゃんからもらったのは『ランド・オブ・ストーリーズ』という不思議な本でした

// リンク 「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ 願いをかなえる呪文」は、白雪姫やシンデレラ、赤ずきん、ラプンツェル、眠りの森の美女といったおとぎ話のその後の世界に迷い込んでしまった双子の兄妹が、元の世界に戻るための『願いをかなえる呪文』を手に入…

「老犬たちの涙 “いのち”と“こころ”を守る14の方法」児玉小枝/KADOKAWA-「飼えなくなったから捨てるなんて」と憤るだけでは解決しない問題

// リンク 私事になりますが、昨年(2019年)11月に18年以上一緒に暮らしてきた愛犬ラムを看取りました。我が家のアイドルだった彼女の死は、家族にとってとても悲しいできごとで、2ヶ月以上経っても、まだ寂しい気持ちが消えていません。 満面の笑顔が愛ら…

「魔眼の匣の殺人」今村昌弘/東京創元社-「男女二人ずつ、四人が死ぬ」。予知能力を持つとされる老女が告げた予言の通りに人が死んでいく。年末のミステリランキングを席巻した前作に続くクローズドサークルミステリ

// リンク 2017年の各種年間ミステリランキングで軒並み1位を獲得し、映画化もされたデビュー作「屍人荘の殺人」に続く第2弾。剣崎比留子と葉村譲のコンビが、またしてもクローズドサークルで発生した殺人事件の謎にせまる本格ミステリ小説である。 s-taka…

「うもれる日々」橋本亮二/十七時退勤社-繁茂するデスクにうもれる出版営業のうもれない日々を記したエッセイ

liondo.thebase.in 著者の橋本さんと最初にお会いしたのは、双子のライオン堂で開催された「本を贈る」(三輪舎)の読書会でした。橋本さんも出版営業という立場で「本を贈る」に執筆していて、読書会のゲストとして参加されていました。読書会後の打ち上げ…

「【改訂完全版】アウシュヴィッツは終わらない これが人間か」プリーモ・レーヴィ/竹山博英訳/朝日新聞出版-アウシュヴィッツから生還した著者が記憶をもとに執筆した悲劇を二度と起こさぬために語り継ぐべき記録。

// リンク アウシュヴィッツやその他のユダヤ人強制収容所で起きた悲劇については、数多くの作品が発表されてきた。フィクション、ノンフィクション、映像作品、文芸作品、その他さまざまな形で悲劇は語り継がれているし、これからも未来永劫語り継がれ続け…

「嵐をしずめたネコの歌」アントニア・バーバー作、ニコラ・ベイリー絵/おびかゆうこ訳/徳間書店-イギリスに古くから伝わる伝説をもとにした物語。大嵐で荒れ狂う海に出た老いた漁師とネコの運命は?

// リンク この作品は、イギリスのコーンウォール地方に古くから伝わる、トム・バーコックという漁師の伝説をもとにした創作です。 本書「嵐をしずめたネコの歌」冒頭の謝辞で、作者のアントニア・バーバーはそう記しています。今からおよそ500年前にイギリ…

「りこうすぎた王子」アンドリュー・ラング/福本友美子訳/岩波少年文庫-おりこうさんは褒められる。でも、りこうすぎると嫌われる。

// リンク 子どもがなにか良いことをしたとき「○○ちゃんはおりこうさんだね!」とほめられる。だけど、度を過ぎてかしこいと逆にムッとしてしまうことがある。子どもというのは、適度におバカで、適度にかしこいくらいが大人から見ると可愛かったりするのだ…

「iレイチェル」キャス・ハンター/芹澤恵訳/小学館-この物語には『アイ』が溢れている

// リンク 『はじめての海外文学vol.5』で訳者の芹澤恵さんが推薦している作品。南アフリカ生まれのイギリス人作家によるキャス・ハンター名義での初の著作にあたる。 AI研究機関〈テロス〉でアンドロイド開発に携わっていたレイチェル・プロスパーは、夫の…

「聖なるズー」濱野ちひろ/集英社-犬や馬をパートナーとする動物性愛は性的倒錯行為なのか。それとも強すぎる動物愛なのか。

// リンク 動物を相手にセックスをする。多くの人は、そのような性的嗜好を持つ人たちを変態と感じ、嫌悪するだろう。私もそうだ。 濱野ちひろ「聖なるズー」は、大学院で文化人類学におけるセクシャリティ研究に取り組む著者が、ドイツの世界唯一の動物性愛…

「おちび」エドワード・ケアリー/古屋美登里訳/東京創元社-“おちび”と呼ばれた少女は、フランス革命前後の激動の時代を強く生き抜いて、マダム・タッソーとなる

// リンク エドワード・ケアリー著/古屋美登里訳「おちび」(原題は『Little』)は、アイアマンガー3部作(「堆塵館」「穢れの町」「肺都」)から2年、エドワード・ケアリーファン待望の新刊だ。実に執筆に15年を費やしたという長編小説は、マダム・タッ…

「臆病な成就」多田尋子/福武書店-夫婦でもない、兄弟姉妹でもない、血の繋がりのない関係でも支え合える人たちの物語

// リンク 『多田尋子作品を読む』の第6弾。「臆病な成就」を読んだ。表題作を含む3篇が収録されている。 臆病な成就慰撫白蛇の家 ※第102回芥川賞候補(1989年下期) 1988年、1989年は、多田尋子の作品に対する評価が一気にあがった時期といえるだろう。「単…

「裔の子」多田尋子/福武書店-家族のつながり、人とのつながり、さまざまなつながりが生み出す関係性はときに人を幸せにし、ときに人を苦しめる

// リンク 『多田尋子作品を読む』の第5弾。多田尋子の商業誌デビュー作「凪」を含む4篇が収録された短編集「裔(すえ)の子」を読んだ。 収録されているのは以下の4篇 裔の子 ※第101回芥川賞候補(1989年上期)殯笛夢の巣凪 「裔の子」は、祖母、母、娘と続…

「単身者たち」多田尋子/福武書店-ひとりであることの自由と不自由。ひとりでいることの安心と不安。単身者であることの意味とは?

// リンク 書肆汽水域「体温」から始まった『多田尋子作品を読む』の第4弾として読んだのは「単身者たち」である。書肆汽水域「体温」にも収録されていた短篇「単身者たち」を表題作とする4篇が収録された短編集だ。 s-taka130922.hatenablog.com 単身者たち…

「秘密」多田尋子/講談社-結婚できる機会があるのに結婚しなかった女性。結婚とは何か。結婚すれば幸せなのか。結婚に対する価値観を問われているような短編集

// リンク 書肆汽水域刊「体温」、講談社刊「体温」に続いて、講談社刊の「秘密」を読んだ。書肆汽水域「体温」に収録されている「秘密」を含む4篇が収録されている。 毀れた絵具箱遠い華燭雑踏秘密 東京の美術学校に通う朋子は、仕方なく出席した美術関係…

「体温」多田尋子/講談社-『男性の存在感』が描かれる4つの短篇を収録する作品集

// リンク 書肆汽水域から刊行された「多田尋子作品集 体温」で、多田尋子という作家の存在を知った。30年以上前に書かれた作品であり落ち着いた大人の恋愛を描く短篇小説は、古さを感じさせるが、それでいてどこかに新しさも感じさせて、「こんな作家がいた…

「体温」多田尋子/書肆汽水域-誰かに依存しているようでいて、しっかりと自分自身で自立している女性たち。30年以上前に書かれた作品なのに、むしろ新しさを感じる短編集。

// リンク 1932年長崎県生まれ。日本女子大学国文科を卒業。1985年に短編小説「凪」を「海燕」に発表し小説家デビューする。1986年に「白い部屋」で第96回芥川賞候補となり、その後「単身者たち」「裔の子」「白蛇の家」「体温」「毀れた絵具箱」で計6度候補…

「隠された悲鳴」ユニティ・ダウ/三辺律子訳/英治出版-『儀礼殺人』という特異な因習を題材にしたサスペンス小説。伝統の影にある人権の問題。

// リンク 少女に恨みがあるわけではなかった。ただほしかったのだ、必要だったのだ。 物語は、この不穏な書き出しからはじまる。そして、3人の男たちによってひとりの少女が犠牲になる。それは、男たちが自らの願いを叶えるための儀礼殺人だ。彼らは、自分…