タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「燃えるスカートの少女」エイミー・ベンダー/管啓次郎訳/角川文庫-#はじめての海外文学 vol.6。書き出しでグイッと引き込まれる16篇の不思議で魅力的な物語が味わえる短編集

// リンク 逆進化する恋人、胃に穴のあいた父と母親を産んだ母、男のおちんちんで体をいっぱいにしたいと願う図書館員、火の手をもった女の子と氷の手をもった女の子。 エイミー・ベンダー「燃えるスカートの少女」には、不思議な魅力に満ちた16の短編が収録…

「珈琲の哲学 ディー・レスタリ短編集1995-2005」ディー・レスタリ/福武慎太郎監訳、西野恵子、加藤ひろあき訳-#はじめての海外文学 vol.6。インドネシア現代文学を代表する作家の短編集。珈琲に憑かれた男の葛藤を描く表題作他、人間の人生の複雑さを描く18篇

// リンク インドネシア文学を読むのは、たぶんこれがはじめてだと思う。そういう意味で言えば、本書はまさに“はじめて”の海外(インドネシア)文学である。 本書冒頭の監訳者・福武慎太郎氏の解説によれば、著者のティー・レスタリは、現代インドネシアを代…

「白い病」カレル・チャペック/阿部賢一訳/岩波文庫-伝染病の恐怖を描いている部分もあるが、それ以上に正義となにか悪とはなにかを問いかける物語でもある

// リンク 「白い病」は、カレル・チャペックが1937年に発表した戯曲である。これまでに二度翻訳出版されていて、今回が三度目の翻訳となる。訳者の阿部賢一さんが、緊急事態宣言が発令された2020年4月7日に訳し始め、noteで少しずつ公開していたものを岩波…

保健室のアン・ウニョン先生(チョン・セラン/斎藤真理子訳/亜紀書房)-レインボーカラーの剣とBB弾を武器に保健教師は戦い続ける!

// リンク 私はこの物語をただ快感のために書きました。一度くらい、そういうことがあってもいいんじゃないかと思いました。ですから、ここまで読んできて快感を感じられなかったとしたら、それは私の失敗ということになります。 帯にも引用されている著者の…

ののの(太田靖久/書肆汽水域)-私的に現時点で2020年のベスト。こういう作品との出会いがあるから読書は楽しい

// リンク またすごい本に出会った。 私にはいくつか好きな本のタイプがある。 読んでいる間、ずっと気分が高揚し、物語の世界を存分に楽しませてくれるエンタメ小説。何もかも忘れてとにかく楽しみたいときにはそういう本を読む。小説世界に没頭できる本が…

ロボット・イン・ザ・ファミリー(デボラ・インストール/松原葉子訳/集英社文庫)-シリーズ第4弾。チェンバース家の庭に突然現れたロボット(通算3回め)、またまたロボットをめぐる騒動が巻き起こる。

// リンク ちょっとポンコツで、でもかわいくて憎めないロボット・タングを中心にチェンバース一家が子育てや教育など家庭の問題と向き合い取り組んでいく人気シリーズの第4作である。 前作「ロボット・イン・ザ・スクール」では、ラストに日本から帰国した…

きみにかわれるまえに(カレー沢薫/日本文芸社)-ペットを飼うこと、それは命を預かること。必ず訪れる別れを受け入れる勇気と覚悟をもつこと

// リンク 新型コロナによるステイホームをきっかけにペットを飼う人が増えているという。その一方で、飼い始めたはいいが、自分が思っていたのと違うとペットショップに返品(命のある動物に対する言葉としては甚だ不適切な言葉だ)してきたり、保護施設に…

ロープとリングの事件(レオ・ブルース/小林晋訳/国書刊行会)-『世界探偵小説全集』の第8巻。ガサツで鈍重そうな探偵とインテリだがちょっと天然な相棒のコンビがふたつの首吊り事件の真実に迫るユーモアミステリー小説

// リンク 国書刊行会の『世界探偵小説全集』の第8巻。本書は、元警察官の私立探偵ビーフ巡査部長と彼の行動を記録し探偵小説として世に送り出すワトスン役のライオネル・タウンゼントのコンビがふたつの首吊り事件の謎を解明するミステリーだ。 物語のあら…

ゴーストダンス(スーザン・プライス/金原瑞人訳/サウザンブックス)-「ゴーストシリーズ」3部作完結。未熟な魔法使いシンジビスは、魔法の力で世界を変えられると信じた。だが、それは未熟ゆえの甘い考えだった。

// リンク もしも魔法が使えたなら世界を変えられるんじゃないか、と思ったことはないだろうか。悪政によって民を苦しめる独裁者の行動を魔法の力で良識ある行動に変えることはできないか、と考えたことはないだろうか。 スーザン・プライスの「ゴーストシリ…

ゴーストソング(スーザン・プライス/金原瑞人訳/サウザンブックス)-嫉妬と憎悪と怒りによって生きる魔法使いクズマとは、現実世界に生きる私たちの姿なのかもしれない。

// リンク 「ゴーストシリーズ」の第2作となる作品。「ゴーストドラム」でチンギスと対立する悪役として登場したクズマを中心とする物語だ。 「ゴーストソング」の物語は、夏至の日、猟師のマリュータとその妻イェフロシニアの間に男の子が生まれる場面から…

ウジョとソナ 独立運動家夫婦の子育て日記(パク・ゴヌン著/ヤン・ウジョ、チェ・ソナ原案/神谷丹路訳)-祖国独立のため活動するウジョとソナ。彼らの子育て日記を通じて見えてくる戦争の過酷さと子どもたちの存在の大きさ

// リンク 本書は、大韓民国臨時政府に関わった独立運動家であるヤン・ウジョとチェ・ソナの夫婦が記した日記を原案として描かれたグラフィックノベルである。原案となった日記は、ふたりの間に生まれた娘ジェシーの育児日記となっている。日記には、韓国が…

【新装版】ゴーストドラム(スーザン・プライス/金原瑞人訳/サウザンブックス)-【再読】ゴーストドラムのリズムに導かれ、魔法使いチンギスは囚われの皇子サファを救いに向かう。「ゴースト三部作」の幕開けとなる物語

// リンク ある冬至の夜、ひとりの奴隷女が赤ん坊を産んだ。女の子だった。だが、奴隷の娘は奴隷になるしかない。女はわが子の逃れられない運命を嘆く。そこへ、ひとりの老婆が訪ねてくる。老婆は魔女だ。魔女は女に言う。「お前が腕に抱いている赤ん坊が生…

リッジウェイ家の女(リチャード・ニーリィ/仁賀克雄訳/扶桑社)-出てくる人物全員が怪しくみえてくる。どんでん返しの巨匠が描くミステリ小説。

// リンク 帯の惹句よれば、著者のリチャード・ニーリィは『どんでん返しの巨匠』なのだという。本書「リッジウェイ家の女」は、そんな『どんでん返しの巨匠』が描くミステリー小説である。 画家のダイアン・リッジウェイは、アートギャラリーで自分の作品を…

「カレンの台所」滝沢カレン/サンクチュアリ出版-「言葉」や「文章」を生業としている人たち全員が羨む才能の持ち主だと思います。

// リンク まず最初にお断りしておくと、この本は『料理レシピ本』です。ですが、書店の店頭に山と積まれた「誰でも簡単!お手軽激ウマレシピ!」とか「料理研究家○○の健康レシピ100選」みたいな普通の料理レシピ本とはまったく違う、滝沢カレンらしい独特な…

「見えない凶器」ジョン・ロード/駒月雅子訳/国書刊行会-『世界探偵小説全集』の第7巻。密室で起きた殺人事件。凶器が見つからないまま迷宮入りするかと思われた事件をプリーストーリー博士が解き明かす

// リンク 国書刊行会の『世界探偵小説全集』の第7巻。本作は、密室殺人のトリックに趣向を凝らした謎解きミステリーである。 アダミンスター警察署のクロード巡査部長は、シリル・ソーンバラ医師の自宅で殺人事件に遭遇する。ソーンバラ医師の妻ベティの伯…

「草 日本軍「慰安婦」のリビング・ヒストリー」キム・ジェンドリ・グムスク/都築寿美枝、李昤京訳/ころから-現在にもつながる女性としての尊厳の問題としてみた「従軍慰安婦」の人生を描いて世界的に高い評価を得たグラフィックノベル

// リンク 1996年、中国龍井(ロンジン)。ひとりの老婆が家族や村人に見送られて旅立つ場面から物語は始まる。彼女は、55年振りに祖国韓国に帰るのだ。彼女の名は李玉善(イ・オクソン)。彼女は、日本軍の『従軍慰安婦』だった。 キム・ジェンドリ・グムス…

「田宮二郎、壮絶! いざ帰りなん、映画黄金の刻へ」升本喜年/清流出版-俳優・田宮二郎の壮絶にして濃密な俳優人生を描く骨太なノンフィクション

// リンク 「田宮二郎、壮絶! いざ帰りなん、映画黄金の刻へ」は、映画、テレビのプロデューサーとして俳優・田宮二郎と仕事をしてきた著者が、その生い立ちから、俳優としてデビューして銀幕の大スターとなり、不遇の時代を経てテレビドラマの世界で成功を…

「荒野にて」ウィリー・ヴローティン/北田絵理子訳/早川書房-孤独な少年チャーリーは一頭の馬と出会い、伯母の住むワイオミングに向かって旅立つ。

// リンク 15歳の孤独な少年チャーリーがリーン・オン・ピートという競争馬と出会い、自分の置かれた境遇や自らの思いをピートに語りかけることで愛情を深めていく。やがて、ピートが前肢に怪我をしている疑いがでて、殺処分の可能性もあると知ったチャーリ…

「キッズライクアス」ヒラリー・レイル/林真紀訳/サウザンブックス-自閉症スペクトラム障害の少年マーティンが経験するひと夏の物語

// リンク 「キッズライクアス」は、『自閉症スペクトラム障害』の高校生マーティンが、映画監督の母の仕事に合わせて、姉のエリザベスと一緒にフランスの田舎町で過ごすひと夏を描く物語だ。 『自閉症スペクトラム障害』のマーティンは、他人とうまく接する…

「瓶に入れた手紙」ヴァレリー・ゼナッティ/伏見操訳/文研出版-イスラエルの少女とパレスチナの少年の間で交わされるメールを通じて、パレスチナ問題を描く物語

// リンク ヴァレリー・ゼナッティ「瓶に入れた手紙」は、イスラエル・エルサレムに暮らす少女タルとパレスチナ・ガザ地区に暮らす“ガザマン”と名乗る男性(のちにナイームという少年とわかる)のメールのやりとりによって主に構成される物語だ。物語中ふた…

「弁護士アイゼンベルク 突破口」アンドレアス・フェーア/酒寄進一訳/東京創元社-恋人爆殺事件と過去の連続殺人事件。交互に描かれるふたつが結びついたときに見えてくる事件の真相

// リンク 前作「弁護士アイゼンベルク」を読んだのが2018年6月。それから2年、待望の第2弾が翻訳刊行された。「弁護士アイゼンベルク 突破口」である。 前作では冒頭から主人公の弁護士ラヘル・アイゼンベルクが、何者かによって人里離れた家に手足を拘束さ…

「ブックオフ大学ぶらぶら学部」武田砂鉄、山下賢二、他/岬書店-みんなにとっての『ブックオフ』。あなたにとっての『ブックオフ』。私にとっての『ブックオフ』

『ブックオフ』はこれまで数え切れないくらい利用してきた。単行本や文庫の比較的新しい作品が半額になっているのをヒャッホー!と手に取り、100円棚で「おぉ、これが100円!」と驚いたりしながら、あれもこれもと買い物かごに放り込んだ。ときに十数冊の本…

「ボッティチェリ 疫病の時代の寓話」バリー・ユアグロー/柴田元幸訳/ignition gallery-コロナ禍のニューヨーク。ロックダウンで閉ざされた日々の中でユアグローが紡ぎ出した12篇の寓話世界

https://ignitiongallery.tumblr.com/post/618733618054971392/%E3%83%90%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A6%E3%82%A2%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%83%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AA-%E7%96%AB%E7%97%85%E3%81%AE%E6%99%82%E4%BB%A…

「やんごとなき読者」アラン・ベネット/市川恵里訳/白水社-女王陛下、読書にハマる

// リンク 「陛下にも暇つぶしが必要なのはわかります」「暇つぶし?」女王は聞き返した。「本は暇つぶしなんかじゃないわ。別の人生、別の世界を知るためのものよ。サー・ケヴィン、暇つぶしがしたいどころか、もっと暇がほしいくらいよ。(後略)」 アラン…

「ハンナのいない10月は」相川英輔/河出書房新社-学生自治会選挙の不正疑惑、女子学生の洋服盗難事件にスパイ疑惑。大学内で起きるさまざまな事件に『穏やかな狂人』はどう動くのか?

// リンク 相川英輔作品は、これまで「雲を離れた月」と「ハイキング」を読んできた。過去作はどれも日常にある恐怖や不安を描き、読んでいてスーッと背中に冷たいものが伝うような感覚を与えてくれる作品だったが、本作はこれまでとはまったく違ったテイス…

「フライデー・ブラック」ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー/押野素子訳/駒草出版-ガーナ移民の両親を持つ著者のデビュー短編集。#BlackLivesMatter 運動に世界が揺れる今の時代に読む一冊。

// リンク 2020年5月、アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスで白人警察官が黒人のジョージ・フロイド氏を逮捕する際に、8分46秒もの間フロイド氏の頸部を膝で圧迫し続けて死に至らしめる事件が起きた。この事件をきっかけにして、全米各地で大規模な抗議デモが…

「英国風の殺人」シリル・ヘアー/佐藤弓生訳/国書刊行会-『世界探偵小説全集』の第6巻。互いに不穏な空気を醸す一族が集った聖夜の宴で起きた毒殺事件。ボトウィンク博士が解き明かす『英国でのみ起こりうる事件』とは?

// リンク 国書刊行会の『世界探偵小説全集』第6巻。それぞれが互いに何らかの因縁を持つウォーベック一族が集まったクリスマスの夜、大雪に閉ざされた屋敷で行われた夜会の席でファシスト団体のリーダーとなったウォーベック卿の跡取り息子が毒殺された。古…

「サブリナ」ニック・ドルナソ/藤井光訳/早川書房-サブリナが消えたことで起きる波紋。メディアに追い回され、ネットにはデマがはびこる。現代社会の抱える闇をえぐり出すような作品。

// リンク ひとりの女性が突然行方不明になる。女性の名前はサブリナ・ギャロ。しばらくして、新聞社などにスナッフビデオが届くとメディアやネットが騒然とする。メディアによる執拗なまでの取材攻勢。SNSを中心にネットに拡散する誹謗中傷デマ。それはまさ…

「愛は血を流して横たわる」エドマンド・クリスピン/滝口達也訳/国書刊行会-『世界探偵小説全集』の第5巻。女子生徒の失踪事件を発端に起きる連続殺人事件。事件をつなぐ謎の解明にジャーヴァス・フェン教授が挑む。

// リンク 国書刊行会の『世界探偵小説全集』第5巻。学校の終業式を目前にして起きた女子生徒の失踪事件。最初はちょっとした不祥事と思われていたが、ふたりの教師が相次いで殺害されたことで重大事件へと発展する。事件の解決に乗り出すのは、終業式の来…

「あふれる家」中島さなえ/朝日新聞出版-いつも誰かであふれている破天荒な家庭で育つ明日美のたくまして想像力豊かな毎日を描く自伝的長編。

// リンク 主人公稲葉明日実(わたし)は小学4年生。もうすぐ夏休みになるというのに、母さんが事故で足を骨折し入院してしまう。 「ユタとハルねえがいないあいだ、明日実ちゃんをどうするのか」 「ユタ」は父さん、「ハルねえ」は母さんのニックネームだ。…