タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

ロープとリングの事件(レオ・ブルース/小林晋訳/国書刊行会)-『世界探偵小説全集』の第8巻。ガサツで鈍重そうな探偵とインテリだがちょっと天然な相棒のコンビがふたつの首吊り事件の真実に迫るユーモアミステリー小説

// リンク 国書刊行会の『世界探偵小説全集』の第8巻。本書は、元警察官の私立探偵ビーフ巡査部長と彼の行動を記録し探偵小説として世に送り出すワトスン役のライオネル・タウンゼントのコンビがふたつの首吊り事件の謎を解明するミステリーだ。 物語のあら…

ゴーストダンス(スーザン・プライス/金原瑞人訳/サウザンブックス)-「ゴーストシリーズ」3部作完結。未熟な魔法使いシンジビスは、魔法の力で世界を変えられると信じた。だが、それは未熟ゆえの甘い考えだった。

// リンク もしも魔法が使えたなら世界を変えられるんじゃないか、と思ったことはないだろうか。悪政によって民を苦しめる独裁者の行動を魔法の力で良識ある行動に変えることはできないか、と考えたことはないだろうか。 スーザン・プライスの「ゴーストシリ…

ゴーストソング(スーザン・プライス/金原瑞人訳/サウザンブックス)-嫉妬と憎悪と怒りによって生きる魔法使いクズマとは、現実世界に生きる私たちの姿なのかもしれない。

// リンク 「ゴーストシリーズ」の第2作となる作品。「ゴーストドラム」でチンギスと対立する悪役として登場したクズマを中心とする物語だ。 「ゴーストソング」の物語は、夏至の日、猟師のマリュータとその妻イェフロシニアの間に男の子が生まれる場面から…

ウジョとソナ 独立運動家夫婦の子育て日記(パク・ゴヌン著/ヤン・ウジョ、チェ・ソナ原案/神谷丹路訳)-祖国独立のため活動するウジョとソナ。彼らの子育て日記を通じて見えてくる戦争の過酷さと子どもたちの存在の大きさ

// リンク 本書は、大韓民国臨時政府に関わった独立運動家であるヤン・ウジョとチェ・ソナの夫婦が記した日記を原案として描かれたグラフィックノベルである。原案となった日記は、ふたりの間に生まれた娘ジェシーの育児日記となっている。日記には、韓国が…

【新装版】ゴーストドラム(スーザン・プライス/金原瑞人訳/サウザンブックス)-【再読】ゴーストドラムのリズムに導かれ、魔法使いチンギスは囚われの皇子サファを救いに向かう。「ゴースト三部作」の幕開けとなる物語

// リンク ある冬至の夜、ひとりの奴隷女が赤ん坊を産んだ。女の子だった。だが、奴隷の娘は奴隷になるしかない。女はわが子の逃れられない運命を嘆く。そこへ、ひとりの老婆が訪ねてくる。老婆は魔女だ。魔女は女に言う。「お前が腕に抱いている赤ん坊が生…

リッジウェイ家の女(リチャード・ニーリィ/仁賀克雄訳/扶桑社)-出てくる人物全員が怪しくみえてくる。どんでん返しの巨匠が描くミステリ小説。

// リンク 帯の惹句よれば、著者のリチャード・ニーリィは『どんでん返しの巨匠』なのだという。本書「リッジウェイ家の女」は、そんな『どんでん返しの巨匠』が描くミステリー小説である。 画家のダイアン・リッジウェイは、アートギャラリーで自分の作品を…

「カレンの台所」滝沢カレン/サンクチュアリ出版-「言葉」や「文章」を生業としている人たち全員が羨む才能の持ち主だと思います。

// リンク まず最初にお断りしておくと、この本は『料理レシピ本』です。ですが、書店の店頭に山と積まれた「誰でも簡単!お手軽激ウマレシピ!」とか「料理研究家○○の健康レシピ100選」みたいな普通の料理レシピ本とはまったく違う、滝沢カレンらしい独特な…

「見えない凶器」ジョン・ロード/駒月雅子訳/国書刊行会-『世界探偵小説全集』の第7巻。密室で起きた殺人事件。凶器が見つからないまま迷宮入りするかと思われた事件をプリーストーリー博士が解き明かす

// リンク 国書刊行会の『世界探偵小説全集』の第7巻。本作は、密室殺人のトリックに趣向を凝らした謎解きミステリーである。 アダミンスター警察署のクロード巡査部長は、シリル・ソーンバラ医師の自宅で殺人事件に遭遇する。ソーンバラ医師の妻ベティの伯…

「草 日本軍「慰安婦」のリビング・ヒストリー」キム・ジェンドリ・グムスク/都築寿美枝、李昤京訳/ころから-現在にもつながる女性としての尊厳の問題としてみた「従軍慰安婦」の人生を描いて世界的に高い評価を得たグラフィックノベル

// リンク 1996年、中国龍井(ロンジン)。ひとりの老婆が家族や村人に見送られて旅立つ場面から物語は始まる。彼女は、55年振りに祖国韓国に帰るのだ。彼女の名は李玉善(イ・オクソン)。彼女は、日本軍の『従軍慰安婦』だった。 キム・ジェンドリ・グムス…

「田宮二郎、壮絶! いざ帰りなん、映画黄金の刻へ」升本喜年/清流出版-俳優・田宮二郎の壮絶にして濃密な俳優人生を描く骨太なノンフィクション

// リンク 「田宮二郎、壮絶! いざ帰りなん、映画黄金の刻へ」は、映画、テレビのプロデューサーとして俳優・田宮二郎と仕事をしてきた著者が、その生い立ちから、俳優としてデビューして銀幕の大スターとなり、不遇の時代を経てテレビドラマの世界で成功を…

「荒野にて」ウィリー・ヴローティン/北田絵理子訳/早川書房-孤独な少年チャーリーは一頭の馬と出会い、伯母の住むワイオミングに向かって旅立つ。

// リンク 15歳の孤独な少年チャーリーがリーン・オン・ピートという競争馬と出会い、自分の置かれた境遇や自らの思いをピートに語りかけることで愛情を深めていく。やがて、ピートが前肢に怪我をしている疑いがでて、殺処分の可能性もあると知ったチャーリ…

「キッズライクアス」ヒラリー・レイル/林真紀訳/サウザンブックス-自閉症スペクトラム障害の少年マーティンが経験するひと夏の物語

// リンク 「キッズライクアス」は、『自閉症スペクトラム障害』の高校生マーティンが、映画監督の母の仕事に合わせて、姉のエリザベスと一緒にフランスの田舎町で過ごすひと夏を描く物語だ。 『自閉症スペクトラム障害』のマーティンは、他人とうまく接する…

「瓶に入れた手紙」ヴァレリー・ゼナッティ/伏見操訳/文研出版-イスラエルの少女とパレスチナの少年の間で交わされるメールを通じて、パレスチナ問題を描く物語

// リンク ヴァレリー・ゼナッティ「瓶に入れた手紙」は、イスラエル・エルサレムに暮らす少女タルとパレスチナ・ガザ地区に暮らす“ガザマン”と名乗る男性(のちにナイームという少年とわかる)のメールのやりとりによって主に構成される物語だ。物語中ふた…

「弁護士アイゼンベルク 突破口」アンドレアス・フェーア/酒寄進一訳/東京創元社-恋人爆殺事件と過去の連続殺人事件。交互に描かれるふたつが結びついたときに見えてくる事件の真相

// リンク 前作「弁護士アイゼンベルク」を読んだのが2018年6月。それから2年、待望の第2弾が翻訳刊行された。「弁護士アイゼンベルク 突破口」である。 前作では冒頭から主人公の弁護士ラヘル・アイゼンベルクが、何者かによって人里離れた家に手足を拘束さ…

「ブックオフ大学ぶらぶら学部」武田砂鉄、山下賢二、他/岬書店-みんなにとっての『ブックオフ』。あなたにとっての『ブックオフ』。私にとっての『ブックオフ』

『ブックオフ』はこれまで数え切れないくらい利用してきた。単行本や文庫の比較的新しい作品が半額になっているのをヒャッホー!と手に取り、100円棚で「おぉ、これが100円!」と驚いたりしながら、あれもこれもと買い物かごに放り込んだ。ときに十数冊の本…

「ボッティチェリ 疫病の時代の寓話」バリー・ユアグロー/柴田元幸訳/ignition gallery-コロナ禍のニューヨーク。ロックダウンで閉ざされた日々の中でユアグローが紡ぎ出した12篇の寓話世界

https://ignitiongallery.tumblr.com/post/618733618054971392/%E3%83%90%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A6%E3%82%A2%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%83%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AA-%E7%96%AB%E7%97%85%E3%81%AE%E6%99%82%E4%BB%A…

「やんごとなき読者」アラン・ベネット/市川恵里訳/白水社-女王陛下、読書にハマる

// リンク 「陛下にも暇つぶしが必要なのはわかります」「暇つぶし?」女王は聞き返した。「本は暇つぶしなんかじゃないわ。別の人生、別の世界を知るためのものよ。サー・ケヴィン、暇つぶしがしたいどころか、もっと暇がほしいくらいよ。(後略)」 アラン…

「ハンナのいない10月は」相川英輔/河出書房新社-学生自治会選挙の不正疑惑、女子学生の洋服盗難事件にスパイ疑惑。大学内で起きるさまざまな事件に『穏やかな狂人』はどう動くのか?

// リンク 相川英輔作品は、これまで「雲を離れた月」と「ハイキング」を読んできた。過去作はどれも日常にある恐怖や不安を描き、読んでいてスーッと背中に冷たいものが伝うような感覚を与えてくれる作品だったが、本作はこれまでとはまったく違ったテイス…

「フライデー・ブラック」ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー/押野素子訳/駒草出版-ガーナ移民の両親を持つ著者のデビュー短編集。#BlackLivesMatter 運動に世界が揺れる今の時代に読む一冊。

// リンク 2020年5月、アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスで白人警察官が黒人のジョージ・フロイド氏を逮捕する際に、8分46秒もの間フロイド氏の頸部を膝で圧迫し続けて死に至らしめる事件が起きた。この事件をきっかけにして、全米各地で大規模な抗議デモが…

「英国風の殺人」シリル・ヘアー/佐藤弓生訳/国書刊行会-『世界探偵小説全集』の第6巻。互いに不穏な空気を醸す一族が集った聖夜の宴で起きた毒殺事件。ボトウィンク博士が解き明かす『英国でのみ起こりうる事件』とは?

// リンク 国書刊行会の『世界探偵小説全集』第6巻。それぞれが互いに何らかの因縁を持つウォーベック一族が集まったクリスマスの夜、大雪に閉ざされた屋敷で行われた夜会の席でファシスト団体のリーダーとなったウォーベック卿の跡取り息子が毒殺された。古…

「サブリナ」ニック・ドルナソ/藤井光訳/早川書房-サブリナが消えたことで起きる波紋。メディアに追い回され、ネットにはデマがはびこる。現代社会の抱える闇をえぐり出すような作品。

// リンク ひとりの女性が突然行方不明になる。女性の名前はサブリナ・ギャロ。しばらくして、新聞社などにスナッフビデオが届くとメディアやネットが騒然とする。メディアによる執拗なまでの取材攻勢。SNSを中心にネットに拡散する誹謗中傷デマ。それはまさ…

「愛は血を流して横たわる」エドマンド・クリスピン/滝口達也訳/国書刊行会-『世界探偵小説全集』の第5巻。女子生徒の失踪事件を発端に起きる連続殺人事件。事件をつなぐ謎の解明にジャーヴァス・フェン教授が挑む。

// リンク 国書刊行会の『世界探偵小説全集』第5巻。学校の終業式を目前にして起きた女子生徒の失踪事件。最初はちょっとした不祥事と思われていたが、ふたりの教師が相次いで殺害されたことで重大事件へと発展する。事件の解決に乗り出すのは、終業式の来…

「あふれる家」中島さなえ/朝日新聞出版-いつも誰かであふれている破天荒な家庭で育つ明日美のたくまして想像力豊かな毎日を描く自伝的長編。

// リンク 主人公稲葉明日実(わたし)は小学4年生。もうすぐ夏休みになるというのに、母さんが事故で足を骨折し入院してしまう。 「ユタとハルねえがいないあいだ、明日実ちゃんをどうするのか」 「ユタ」は父さん、「ハルねえ」は母さんのニックネームだ。…

「ジュディ・モードはごきげんななめ」メーガン・マクドナルド作、ピーター・レイノルズ絵/宮坂宏美訳/小峰書店-小学生のジュディと友だち、家族が繰り広げる元気で楽しい毎日!

// リンク 『はじめての海外文学vol.5』で訳者の宮坂宏美さんが推薦している作品です。「ジュディ・モードとなかまたち」シリーズの第1巻になります。 主人公のジュディ・モードは、小学3年生です。物語は、夏休みが終わって新学期がはじまるという朝の場面…

「一角獣殺人事件」カーター・ディクスン/田中潤司訳/国書刊行会-『世界探偵小説全集』の第4巻。鋭い角で突かれた死体。嵐の中、閉ざされた城の中で起きる殺人事件。王道の本格探偵小説。

// リンク 『世界探偵小説全集』の第4巻。最近では「アンリ・バンコラン」シリーズが東京創元社から和爾桃子さんの新訳で刊行されているジョン・ディクスン・カーがカータ・ディクスン名義で発表したヘンリーメリヴェール卿(H.M卿)シリーズの一冊。 事件…

「ジュリアンはマーメイド」ジェシカ・ラブ 絵・文/横山和江訳/サウザンブックス-マーメイドに憧れるジュリアンにおばあちゃんがくれた最高のプレゼント

// リンク 「あのね、おばあちゃん。ぼくもマーメイドなんだ」 プールからの帰り道、ジュリアンはマーメイドの姿をしたおねえさんたちと出会います。ジュリアンはマーメイドが大好きです。きれいなおねえさんたち見て、自分がマーメイドになった姿を想像しま…

「ロボット・イン・ザ・スクール」デボラ・インストール/松原葉子訳/小学館-「何で僕には学校がないの?」(タング、学校へ行くの巻)

// リンク ある日突然庭にあらわれたぽんこつロボット『タング』を中心に、ベンとエイミーのチェンバーズ夫妻が、ひとり娘のボニー、前作「ロボット・イン・ザ・ハウス」でチェンバーズ家の一員となった卵型ロボットのジャスミンを巡って奮闘するシリーズの…

「ルシッドドリーム」中島さなえ/講談社-「これは夢だ」と自覚して見る夢“ルシッド・ドリーム”でつながる4つの短編たち

// リンク “ルシッド・ドリーム”とは、自らで「これは夢だ」と自覚して見る夢のことであり、“明晰夢”とも言われる。本書は、そのルシッド・ドリームを題材とした様々な人間模様の描かれる連作短編集である。 八丁堀の駅近くで開催されるルシッド・ドリーム・…

「放課後にシスター」中島さなえ/祥伝社-星海女学院の生徒たちに代々語り継がれる『シスター峰事件』とは?

// リンク 中学生、高校生くらいの頃、学校に代々語り継がれてきた噂話があったという人は多いだろうか。夜中になると自殺した生徒の霊が出るといった怪談話もあれば、◯◯年の卒業生が在学中に先生と駆け落ちしたみたいな話もあるかもしれない。 「放課後にシ…

「めんどくさい本屋」竹田信弥(本の種出版)-この『めんどくさい』にはいろいろな意味が込められている

liondo.thebase.in ときどき、「この人、いったいいつ寝てるんだろう?」と不思議に思う人がいる。竹田さんはそういう不思議な人の筆頭に位置している(私の中で)。 竹田さんは、赤坂にある『双子のライオン堂』という本屋の店主だ。本書「めんどくさい本屋…