タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

書評

【書評】西加奈子「i(アイ)」(ポプラ社)-《i=自分(I)=アイデンティティ》 自分という存在に悩み葛藤するアイの物語

i(アイ) 作者: 西加奈子 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2016/11/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (6件) を見る 西加奈子の作品を読んで思うのは、西さんの中では“アイデンティティ”というのが大事なテーマになっているのだろう、ということだ…

【書評】アーサー・コナン・ドイル/阿部知二訳「バスカヴィル家の犬」(東京創元社)−牙を抜かれた犬と読む「バスカヴィル家の犬」

《お知らせ》書評サイト「本が好き!」で、「古今東西、名探偵を読もう!」という掲示板企画を立ち上げています。名探偵が好きなみなさんのご参加お待ちしています! バスカヴィル家の犬 (創元推理文庫) 作者: アーサー・コナン・ドイル,深町眞理子 出版社/…

【書評】ジョン・バージャー著・ジャン・モア写真/村松潔訳「果報者ササル~ある田舎医者の物語」(みすず書房)-1967年に刊行され、『本書を読んで心を動かされない者は、医者になるべきではない』とまで言われる1冊。ひとりの田舎医師の姿を通して医療とは医師とはを問うドキュメンタリー

果報者ササル――ある田舎医者の物語 作者: ジョン・バージャー,ジャン・モア(写真),村松潔 出版社/メーカー: みすず書房 発売日: 2016/11/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る まず目に飛び込んでくるのは、男性が真剣な面持ちで右眼につ…

【書評】古川日出男訳「平家物語」(河出書房新社)-『驕る平家は久しからず』と後世にまで語り継がれる平家の栄枯盛衰を壮大に描き出す軍記物語

平家物語 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集09) 作者: 古川日出男(翻訳), 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2016/12/08 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (6件) を見る 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を…

【書評】ジャスパー・フォード/田村源二訳「文学刑事サーズデイ・ネクスト1~ジェイン・エアを探せ!」(ソニー・マガジンズ)-名作文学の世界を守れ!誘拐されたジェインを文学刑事サーズデイ・ネクストは救い出すことができるのか!?

《お知らせ》書評サイト「本が好き!」で、「古今東西、名探偵を読もう!」という掲示板企画を立ち上げています。名探偵が好きなみなさんのご参加お待ちしています! 文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ! (ヴィレッジブックス) 作者: ジ…

【書評】カリル・フェレル/加藤かおり・川口明百美訳「マプチェの女」(早川書房)-友を殺され、愛する人を失ったとき、マプチェの女は復讐の鬼と化す

マプチェの女 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者: カリルフェレ,Caryl F´erey,加藤かおり,川口明百美 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2016/02/24 メディア: 新書 この商品を含むブログ (8件) を見る マプチェの女 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者: カリルフ…

【書評】ブライアン・エヴンソン/柴田元幸訳「ウインドアイ」(新潮社)-読者を現実とは違う世界に連れて行ってくれるような短編の数々

ウインドアイ (新潮クレスト・ブックス) 作者: ブライアンエヴンソン,Brian Evenson,柴田元幸 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/11/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る 短編集を読むときに、最初から順番に読む場合と順番は関係な…

【書評】J・M・クッツェー/鴻巣友季子訳「イエスの幼子時代」(早川書房)-その幼子を無垢と呼ぶなかれ。か弱き幼子はいつかこの世界を動かすであろう。

イエスの幼子時代 作者: J・M・クッツェー,鴻巣友季子 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2016/06/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る 子どもはいつでも好奇心に溢れているものだ。 「どうして○○なの?」「なんで□□しなきゃいけないの…

【書評】山下澄人「しんせかい」(新潮社)-《第156回芥川賞受賞作》著者が学んだ『富良野塾』での日々を題材にした人間ドラマでありつつ、山下澄人の世界がそこにある

しんせかい 作者: 山下澄人 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/10/31 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る しんせかい 作者: 山下澄人 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/12/30 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 第156回芥川…

【書評】エドワード・ケアリー/古屋美登里訳「アルヴァとイルヴァ」(文藝春秋)-《陽》のアルヴァと《陰》のイルヴァ。対照的な双子の姉妹は、どのようにエントラーラの町を救ったのか?

アルヴァとイルヴァ 作者: エドワード・ケアリー,古屋美登里 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2004/11/20 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 3回 この商品を含むブログ (9件) を見る 2016年に読んだ本の中でエドワード・ケアリー「堆塵館」はかなりお…

【書評】梯久美子「狂うひと−『死の棘』の妻・島尾ミホ」(新潮社)−狂う妻と記録する夫。そのいびつな関係から立ちのぼる狂気と愛の形

狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ 作者: 梯久美子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/10/31 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (15件) を見る 島尾敏雄「死の棘」は、夫の日記を読んで不貞の事実を知った妻がどんどんと狂気の底へと落ちていき…

【書評】江戸川乱歩「D坂の殺人事件」(青空文庫)−名探偵明智小五郎のデビュー作。本格ミステリでありながら事件の真相には乱歩らしさがある

《お知らせ》書評サイト「本が好き!」で、「古今東西、名探偵を読もう!」という掲示板企画を立ち上げています。名探偵が好きなみなさんのご参加お待ちしています! www.honzuki.jp D坂の殺人事件 作者: 江戸川乱歩 発売日: 2016/03/15 メディア: Kindle版…

【書評】アーサー・コナン・ドイル/阿部知二訳「四人の署名」(東京創元社)−ワトスン博士がモースタン嬢にひとめ惚れして事件解決後に晴れて夫婦となるまでの物語(事件もあるよ!)

四人の署名 【新訳版】 シャーロック・ホームズ・シリーズ (創元推理文庫) 作者: アーサー・コナン・ドイル 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2015/09/11 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 四人の署名【新訳版】 (創元推理文庫) 作者: ア…

【書評】チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ/くぼたのぞみ訳「半分のぼった黄色い太陽」(河出書房新社)−ナイジェリア出身の女流作家が描き出す『ビアフラ戦争』の悲劇に翻弄された人たちの物語

半分のぼった黄色い太陽 作者: チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ,くぼたのぞみ 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2010/08/25 メディア: ハードカバー クリック: 16回 この商品を含むブログ (14件) を見る チママンダ・ンゴズィ・アディーチェという…

【書評】シャーリー・ジャクソン/市田泉訳「処刑人」(東京創元社)-少女は空想の中で成長し、大人としての真実に足を踏み出す

処刑人 (創元推理文庫) 作者: シャーリイ・ジャクスン,市田泉 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2016/11/30 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (3件) を見る 処刑人 (創元推理文庫) 作者: シャーリイ・ジャクスン 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日…

【書評】アーサー・コナン・ドイル/阿部知二訳「緋色の研究」(東京創元社)-刊行から130周年!世界的名探偵の記念すべき初登場作品を読み返してみた!

緋色の研究【新訳版】 (創元推理文庫) 作者: アーサー・コナン・ドイル,深町眞理子 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2010/11/27 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 2回 この商品を含むブログ (12件) を見る 緋色の研究 シャーロック・ホームズ 作者: …

【書評】スティーヴン・キング/白石朗訳「ミスター・メルセデス」(文藝春秋)-メルセデスを暴走させて8人の命を奪った殺人鬼“ミスター・メルセデス”と退職した元刑事との息詰まる攻防

2017年最初の更新になります。今年もよろしくお願いします。新年最初にとりあげるのは、年末年始に読んだスティーヴン・キングの「ミスター・メルセデス」です。 ミスター・メルセデス 上 作者: スティーヴン・キング,白石朗 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売…

【書評】ゲオルギイ・コヴェンチューク/片山ふえ訳「8号室~コムナルカ住民図鑑」(群像社)-“ガガ”の愛称で親しまれた画家であり名エッセイストでもある著者の思い出が描かれた短篇小説風のエッセイ集

8号室―コムナルカ住民図鑑 作者: ゲオルギイ・ワシーリエヴィチコヴェンチューク,片山ふえ 出版社/メーカー: 群像社 発売日: 2016/03 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 本書の著者ゲオルギイ・コヴェンチュークは、1933年生まれでレニングラード…

【書評】チャールズ・ウィルフォード/浜野アキオ訳「拾った女」(扶桑社)−行きずりの女を男は愛しいと感じた。ふたりは愛を交わし、そして落ちた。行き着く先には悲劇があった。

拾った女 (扶桑社文庫) 作者: チャールズウィルフォード,浜野アキオ 出版社/メーカー: 扶桑社 発売日: 2016/07/02 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (14件) を見る チャールズ・ウィルフォード「拾った女」は、文字通りあるひとりの女を拾った男の物語だ…

【書評】閻連科/谷川毅訳「年月日」(白水社)-干ばつの村にたった1本残ったトウモロコシを守るひとりの老人と1匹の盲犬の戦いのはてにあるもの

年月日 作者: 閻連科,谷川毅 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2016/11/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る ついに『年月日』が日本でも出版されました。この作品は中国でもほかの国でも広く愛され、論争になることも非難されることもほ…

【書評】「まだまだ知らない夢の本屋ガイド」(朝日出版社)−私たちの知らない本屋さんがそこにある。それは夢のような本屋さんかもしれない。

まだまだ知らない 夢の本屋ガイド 作者: 花田菜々子,北田博充,綾女欣伸 出版社/メーカー: 朝日出版社 発売日: 2016/11/02 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (2件) を見る 出版不況と言われ続け、街から書店が姿を消していく中、個性的…

【書評】ヒラリー・ウォー「失踪当時の服装は」(東京創元社)-#はじめての海外文学 Vol.2ビギナー篇より。あるひとりの失踪した少女の行方と謎を地道に追いかける警察。1952年刊行の“警察小説”のパイオニア

失踪当時の服装は (創元推理文庫) 作者: ヒラリー・ウォー 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2015/03/23 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 失踪当時の服装は【新訳版】 (創元推理文庫) 作者: ヒラリー・ウォー,法村里絵 出版社/メーカー: …

【書評】村山早紀「桜風堂ものがたり」(PHP研究所)−桜の花に囲まれてある小さな書店は、本を愛する人たちを優しく迎えてくれる。書店への愛と書店員への愛が溢れた作品

桜風堂ものがたり 作者: 村山早紀 出版社/メーカー: PHP研究所 発売日: 2016/09/21 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (1件) を見る 桜風堂ものがたり 作者: 村山早紀 出版社/メーカー: PHP研究所 発売日: 2016/10/07 メディア: Kindle…

【書評】エドワード・ケアリー「堆塵館~アイアマンガー三部作(1)」-まったく先の読めない壮大なアイアマンガー三部作の幕開けを飾る作品。物語のもつ力強さと読者を取り込むワクワク感を存分に味わえる

堆塵館 (アイアマンガー三部作1) (アイアマンガー三部作 1) 作者: エドワード・ケアリー,古屋美登里 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2016/09/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (10件) を見る 堆塵館 アイアマンガー三部作 作者: エドワード・…

【書評】ヴァレンタイン・デイヴィス「34丁目の奇跡」(あすなろ書房)-ひとりの老人が起こす奇跡。彼は本当にサンタクロースだったのだろうか? #はじめての海外文学 Vol.2 ビギナー篇より

34丁目の奇跡 作者: ヴァレンタインデイヴィス,Valentine Davies,片岡しのぶ 出版社/メーカー: あすなろ書房 発売日: 2002/11 メディア: 単行本 クリック: 6回 この商品を含むブログ (8件) を見る 気がつけば12月も半ばに差し掛かり、年末の慌ただしい喧騒が…

【書評】「〆切本」(左右社)−〆切、それは永遠に解決されない課題である

〆切本 作者: 夏目漱石,江戸川乱歩,星新一,村上春樹,藤子不二雄?,野坂昭如など全90人 出版社/メーカー: 左右社 発売日: 2016/08/30 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (10件) を見る どんな仕事でも“〆切”というものはあります。私のよ…

【書評】チョン・セラン「アンダー、サンダー、テンダー」(クオン)-韓国の地方の町で出会った6人の高校生の成長と青春の記録 #はじめての海外文学 ビギナー篇より。

アンダー、サンダー、テンダー (新しい韓国の文学) 作者: チョンセラン,吉川凪 出版社/メーカー: クオン 発売日: 2015/07/09 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 「どうしてアンダー、サンダー、テンダーなの」ジュヨンが青い画面の上に小さく出た…

【書評】ドナ・タート「ゴールドフィンチ(4)」(河出書房新社)-「ごしきひわ」を巡って舞台はオランダ・アムステルダムへ。第1巻~第3巻に張り巡らされてきた伏線が回収され、物語は終焉を迎える

ゴールドフィンチ 4 作者: ドナ・タート 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2016/09/09 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る ゴールドフィンチ 4 作者: ドナ・タート,岡真知子 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2016/08/26 メディア:…

【書評】夏目漱石「夢十夜」−漱石が綴る10の夢物語。どのお話が好きかで性格診断とかできそう(笑)

夢十夜 作者: 夏目漱石 発売日: 2012/09/27 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (8件) を見る こんな夢を見た。 この書き出しが印象深い夏目漱石の短編集が「夢十夜」です。久しぶりにKindle無料版で再読(再々読あるいはそれ以上かも)してみました。…

【書評】ハン・ガン(韓江)「菜食主義者」(クオン)− #はじめての海外文学 ビギナー篇の1冊。突然肉食を拒否するようになった女性と家族の崩壊する様が描き出す人間の狂気と恐怖

菜食主義者 (新しい韓国の文学 1) 作者: ハン・ガン,川口恵子,きむふな 出版社/メーカー: cuon 発売日: 2011/06/15 メディア: 単行本(ソフトカバー) 購入: 1人 クリック: 23回 この商品を含むブログ (5件) を見る 「菜食主義者」というタイトルから、ベジ…