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【書評】アーサー・コナン・ドイル/阿部知二訳「緋色の研究」(東京創元社)-刊行から130周年!世界的名探偵の記念すべき初登場作品を読み返してみた!

2017年は、1887年に「緋色の研究」が刊行され、名探偵シャーロック・ホームズが初めて読者の前に姿をあらわしてから130周年にあたる。ということなので、今年は久しぶりにシャーロック・ホームズ・シリーズ作品を読み返してみようかと思っている。

 

最初に何を読みかと考えて当然ながらこの記念すべき第1作を読むべきだろうと思った。で、手にとったのが数年前にセール中だったときに購入していた創元推理文庫「緋色の研究」のKindle版である。

シャーロック・ホームズが世に出た最初の作品である本書では、冒頭に、この作品以降ホームズの良きパートナーであり、記録係として活躍するワトスン博士との出会いが描かれる。アフガニスタン戦線で負傷して本国に帰還したワトスンは、知り合いのスタンフォード青年の紹介でシャーロック・ホームズと出会う。ホームズが、ワトスンと顔を合わせるなり、「あなたはアフガニタンへ行ってこられたのでしょう?」と言って、ワトスンを驚かせる場面はよく知られたシーンだろう。

こうして、シャーロック・ホームズとワトスン博士という世界一有名なコンビが誕生したのである。そして、コンビで初めて手掛けた事件が「緋色の研究」事件なのである。

事件は、ローリストン・ガーデン三番地にある空家で起きた殺人事件である。アメリカ人のイーノック・J・ドレッバーが変死体となって発見されたのだ。スコットランド・ヤードのグレグスンから要請を受けて、ホームズは事件の捜査に乗り出す。

シャーロック・ホームズの事件捜査といえば、その飛ぶ抜けた推理力と洞察力による直感的なアプローチで事件の真相に迫っていくイメージもあるが、それ以上にけっこう地道な捜査もいとわない。事件現場では嬉しそうに辺りを調べ上げ、時には地面に這いつくばって目的の遺留物を探し求める。

「緋色の研究」でも、ホームズが嬉々として現場調査にあたっている姿が描かれている。死体を詳細に調べ、所持品を調べ、壁に残された“RACHE”の文字を発見すれば巻き尺と拡大鏡を取り出して部屋中を、ひとり言をつぶやき、時に歓声をあげたりしながら調べ回る。その様子をワトスンはこう描写する。

それを見まもっていると私は、よく訓練された純血種のフォックスハウンドが熱中して鼻を鳴らし、獲物のかくれ場のあたりを行きつもどりつして、ついに、絶望と思われた臭跡を見つけ出すのを、思い出さずにはいられなかった。

本書は、ホームズによる事件の調査と解決までを描いた第1部と、犯人の側から事件の真相を描く第2部で構成されている。近年の重厚長大な長編ミステリー小説を読み慣れた読者にしてみると、作品としてはかなりアッサリした印象を受ける。昔読んだ時はそう思わなかったのだが、今回は第1部のラストの場面では「え、もう犯人捕まっちゃうの?」と驚いた。

他にも、改めて本書を読み返してみて、いろいろと楽しめるところ、気になるところがあった。

・ホームズは、褒められると少女が美貌を褒められたときにように反応する。
 ⇒なかなかの萌えポイント
・毒薬の効果を確認するのに犬をつかって試すのは、その犬が死にかけとかいえ今だったら批判されそう。

いずれも、シャーロック・ホームズという名探偵のキャラクター像を構成する要素であり、ある意味で『これぞシャーロック・ホームズ』ということなのだろう。

ということで、「130周年記念シャーロック・ホームズ・シリーズを読み返そう!」は、気が向いたら継続します(笑)