タカラ~ムの本棚

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「前田建設ファンタジー営業部」前田建設工業株式会社/幻冬舎-マジンガーZの地下格納庫、実際に造れる? 総工費はいくらかかる? 実在の建設会社が真面目に考えます!

 

 

アニメに登場するロボットや巨大建造物を実際に造ることはできるのか? もし造ったら総工費はいくらくらいになるのか? アニメをみながらそんな興味を持ったことがあるという人は少なからずいるだろう。

本書「前田建設ファンタジー営業部」は、そんな夢を本気で実現しようとしたらどうなるかを検証したおふざけのようで実は真面目なドキュメンタリー(?)である。

まず、『前田建設ファンタジー営業部』が、実在する企業の部署であることは記しておきたい。『前田建設工業株式会社』は、2019年には創業100周年を迎えた老舗の会社で、関門橋福岡ドーム東京湾アクアライン海ほたるパーキングエリアなどの建設に携わってきた実績を有する大手ゼネコンである。

そんなゼネコン会社の前田建設が2003年に立ち上げた組織が『ファンタジー営業部』だ。本書のまえがきにはゼネコンに対して人々が抱くネガティブなイメージ(汚職とか談合などのことか)を払拭したいとの考えからスタートしたとある。若い人たちに建設会社とはどういう会社なのかをわかりやすく伝えるにはどうすればよいかを考えた結果生まれたのがファンタジー営業部なのだ。

ファンタジー営業部が手掛けるのは、現実にありえない架空の建物や構造物を建設するプロジェクトだ。その第一弾として取り上げられたのが、マジンガーZに登場する地下格納庫である。機械獣とよばれる敵ロボットが出現したときに、マジンガーZが発進するあの地下格納庫だ。ファンタジー営業部は、テレビアニメの映像から構造を推測し、必要な設計を行い、費用を見積もり、実際に建設した場合の総工費を算出する。そのプロセスには、建設に必要なさまざまな分野のプロたちとの交渉や構造物の強度に関する計算など、まさに建設会社、ゼネコン会社としての前田建設のノウハウが詰め込まれている。

やっていることはあきらかにおふざけだ。だが、おふざけも真面目に取り組めばひとつのストーリーとして成立する。現実の巨大建造物プロジェクトがドキュメンタリー番組で取り上げられて、人々の感動を誘うように、本書も「バカだなぁ」と笑いながらも真面目に取り組むところにちょっと感動したりする。

驚くことに、最近になってこの「前田建設ファンタジー営業部」は映画化された。私は映画をみていないが、いったいどういう映画になっているのか興味深い。

maeda-f-movie.com

 

なお、ファンタジー営業部の活動は現在も続いているようで、ホームページ上ではプロジェクト9まで公開されている。アニメだけではなくゲーム(「グランツーリスモ」のレース場)の世界にも進出していたりする。書籍化としては、本書の他、「銀河鉄道999」の高架橋を建設する工事を取り上げた「前田建設ファンタジー営業部Neo」と「機動戦士ガンダム」の地球連邦軍基地を建造する「前田建設ファンタジー営業部3 「機動戦士ガンダム」の巨大基地をつくる!」が刊行されている。

 

 

企業のイメージ戦略にはさまざまな手法が取り入れられ、各社ともに工夫を凝らしているが、前田建設ファンタジー営業部という切り口は注目のされ方としては大成功していると思う。ただ、客観的なエビデンスを入手していないので、このプロジェクトによってどのくらい前田建設に経営上のメリットが出ているのかはわからない。そういった現実的な話を持ち出すのは、ファンタジー営業部だけに野暮というものだろう。

www.maeda.co.jp

 

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