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「ジュリアンはマーメイド」ジェシカ・ラブ 絵・文/横山和江訳/サウザンブックス-マーメイドに憧れるジュリアンにおばあちゃんがくれた最高のプレゼント

 

 

「あのね、おばあちゃん。ぼくもマーメイドなんだ」

プールからの帰り道、ジュリアンはマーメイドの姿をしたおねえさんたちと出会います。ジュリアンはマーメイドが大好きです。きれいなおねえさんたち見て、自分がマーメイドになった姿を想像します。

家に帰ったジュリアンは、あることを思いつきます。家にあるいろいろな物をつかってマーメイドになってみたのです。でも、その姿をおばあちゃんに見られてしまいます。きれいなマーメイドに変身したつもりのジュリアンを、おばあちゃんはあるところに連れ出します。そこでジュリアンを待っていたのは?

「ジュリアンはマーメイド」は、クラウドファンディングで支援を募り、さまざまなジャンルの海外作品を翻訳出版する『サウザンブックス』のプロジェクトで刊行された作品です。

主人公のジュリアンは男の子ですがマーメイドが大好きで憧れています。きれいに着飾ってマーメイド姿になったおねえさんたちに会って、自分もマーメイドになりたいと思います。自分がマーメイドになった姿を想像します。彼の想像の世界を描いた一連の絵が、彼のマーメイドに対する憧れを素敵に表現しています。

家に帰ったジュリアンは、おばあちゃんがシャワーを浴びている間に、カーテンや花で身を飾ってマーメイドになります。その姿を見たおばあちゃんは、ジュリアンを叱ったりせず、彼を連れてあるところへ向かいます。

自分の孫が、部屋のカーテンやら花やらを身体中にまとい、勝手に化粧品まで使っているのをみたら、たいていの場合その子を叱りつけるところです。でも、ジュリアンのおばあちゃんは、ちょっと不機嫌そうな顔はするものの、叱りつけたりはせず、マーメイド姿の彼を連れて出かけます。そこは、マーメイドやいろいろな海の生き物に扮した人たちが集まるパレード会場でした。ジュリアンのおばあちゃんは、孫の気持ちを汲み取って、パレードに連れていってくれたのです。

「ジュリアンはマーメイド」は、LGBTQをテーマとする絵本です。本書のクラウドファンディングサイトにある「作品の背景と魅力」では加えてこう書かれています。

本作の主要テーマはLGBTQであるとともに、ジェンダーにとらわれない、自分の気持を大切にすることが描かれています。

男の子のジュリアンがマーメイドになりたいと思う気持ちを、おばあちゃんは怒ったり悲しんだりせず、むしろ当たり前のように受け入れます。ジュリアンがマーメイド姿になっているのを見つけたときのおばあちゃんは、少し不機嫌そうな表情をしているので、もしかすると少しは怒りたい気持ちもあったのかもしれません。でも、ジュリアンを大切に思っているから、彼の気持ちを察してパレードに連れて行ってくれたのでしょう。

おばあちゃんがジュリアンを連れて行ったパレードは、ニューヨークのコニーアイランドで毎年6月に開催される『マーメイド・パレード』のことです。ネットで検索してみると、1983年からスタートして今年(2020年)で38回目になるパレードで、夏の大人気イベントなのだとか。2020年の開催は新型コロナの影響もあって開催するか未定のようですが、昨年(2019年)のパレードの様子はネット記事で見ることができます。参加者のコスチュームがどれも個性的です。それと、マーメイドということで露出度も高いですね。

途中にも書きましたが、本書はクラウドファンディングによる支援で翻訳刊行されました。私も支援したひとりです。私の選んだのは「書籍+出版記念イベントにご招待!」というコース。出版記念イベントでは、ドラァグクイーンによる本書の読み聞かせがあるそうです。今この状況ではすぐに開催とはいかないでしょうが、いつかコロナが落ち着いてイベントが開催されるのを楽しみにしています。(イベントの様子を「365bookdays」でレポートできたらいいなぁ)