「おばあちゃんはどうしてきれいないろのふくをきてるの?」
本書「わたしたちだけのときには」で、孫娘のわたしはおばあちゃんに「どうして?」と繰り返したずねます。おばあちゃんは、わたしの問いかけにひとつひとつ答えます。
おばあちゃんは、こどものころに家から遠くはなれた学校へいかされて、きめられた服しか着ることができませんでした。友だちもみんな同じ寂しい色の服でした。
あの人たちは、わたしたちに、きれいないろのふくをきせたくなかったんだろうね。
おばあちゃんはいいます。
でも、秋になって、はっぱが黄色や赤にかわると、地面にねころがったよ。わたしたちだけのときはね。
さびしいいろの服にたくさんの赤や黄色のはっぱをつけて、いろとりどりの服を装ったおばあちゃんたち。どうして、おばあちゃんたちは、そんな悲しくてつらいことを経験しなければならなかったのでしょう?
そこには、おばあちゃんが暮らした場所、おばあちゃんの家族、そして本書で「あの人たち」とよばれる人たちの存在がありました。その大きくて強い「あの人たち」が、おばあちゃんたちを苦しめ、自由を奪い、さらに人間性も奪おうとしたのです。
おばあちゃんたちは、長く苦しい日々を生きました。だから、やっと手に入れた自由をカラフルな服を着たり、髪を伸ばしたり、自分たちの言葉で話したり、家族と仲良く暮らしたりすることに、思う存分使えるのです。
私たちの身近には、この物語のおばあちゃんのような経験をした人はおそらくいないだろうと思います。だから、正直、その背景を知らないままで本書を読むと、あまりピンとこないかもしれません。ですが、最初に読むときは、ぜひ予備知識なしで読んでほしいと思います。そして、巻末の解説を読み、おばあちゃんたちの歴史を知ったら、あらためて読み返してみてください。きっと、最初に読んだときと二度目に読んだときでは印象が変わると思います。