タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「原州通信」イ・ギホ/清水知佐子訳/クオン-成長できない男の悲哀がユーモラスであり、どこか我が身に重ねてみたりするなど

 

 

文学を中心に韓国なさまざまな本を翻訳紹介している出版社『クオン』が手掛ける『きむふなセレクション・韓国文学ショートショート』シリーズは、1篇の短篇小説の日本語訳と韓国語原文を両方掲載し、かつ韓国語の朗読音声をYoutubeで視聴することができるという、韓国文学好きで韓国語を学びたい人にはオススメのシリーズである。

今回、シリーズ中の1作であるイ・ギホ「原州通信」を訳者の清水知佐子さんが『はじめての海外文学vol.5』に推薦されていたので読んでみた。

韓国で人気の長編大河小説「土地」の著者朴景利(パクキョンニ)先生が主人公の住む江原道原州市に引っ越してきた。というところから話は始まる。ただ、主人公と朴先生が物語の中で直接絡むというわけではない。というか、ふたりはただ近所に住んでいる(いた)というだけでなんら接点はない。主人公だけが一方的に朴先生の存在を利用しているだけだ。

こんな経験はないだろうか。

たまたま自分が住んでいる近所に有名芸能人が住んでいて、全然面識も近所付き合いもないのに仲良くしているような嘘をついてしまった。
学校の同じ学年や先輩、後輩に有名人がいて、自分を大きく見せようとその人の名前を利用した。

交流もなにも全然ないのに、まるで昔からの親友みたいなフリして自慢話をしてしまい、あとになって面倒なことなってしまったという経験がある人は、案外いそうな気がする。本書の主人公もそうだ。

本が出版され、ドラマ化され、大ヒットして有名作家になった朴先生。その近所に住んでいるというだけの関係なのに、それを大げさに自慢気に話して友人たちの関心を引こうとした主人公の浅はかさ。思わず笑ってしまう。でも、気持ちはわかる。

若かりし頃に大げさに話した朴先生との関係(もちろん嘘)は、大人になった主人公を窮地におちいらせる。アタフタする主人公が面白い。

短いからすぐに読める。そして面白い。まさに『はじめての海外文学』にピッタリの本だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

「鯨」チョン・ミョングァン/斎藤真理子訳/晶文社-これぞエンタメ小説!圧倒的な想像力で創造される物語の迫力に魅了されました。

 

 

ワイドスクリーンバロックという言葉をご存知だろうか。

2020年1月に大阪の梅田蔦屋書店で開催された「はじめての海外文学スペシャルin大阪」イベントに登壇された翻訳家増田まもるさんのプレゼンで知った言葉だ。物語をいかに大きくいかにとんでもなく語るかが『ワイドスクリーンバロック』であり、いうなれば「徹底的に大風呂敷を広げる」ということ。物語の語り部(作家)の非常識で旺盛な想像力を最大限に駆使した物語が『ワイドスクリーンバロック小説』である。

チョン・ミョングァン「鯨」は、まさに『ワイドスクリーンバロック小説』である。

長い獄中生活の末に釈放されたチュニが、かつて自分が暮らした煉瓦工場に戻ってくるところから物語は始まる。生まれたときにすでに7キロという巨体だったチュニは、人並み外れた怪力の持ち主でもある。長い道のりを戻ってたどり着いたピョンデの街は、チュニが収監される理由となった事件の後に荒廃し、かつての栄華は完全に消え失せていた。

この物語のすべてが一編の復讐劇でもある。「第一部 波止場」の第2章「鬼」の最初に著者はそう記す。ピョンデで汁飯屋を営んでいた老婆の話から始まる一連の物語は、やがて壮大かつケレン味に溢れた騙りの世界に読書を誘い込み、その心をガッチリと掴んで離さない。まだるっこしい前書きも思わせぶりな前フリもすっとばして、いきなりドンッとピョンデの街なかに突き落とされるような感覚。一度落ちたら最後まで現実世界には戻ってこれないような想像の世界がそこに広がっている。

次々と姿をあらわす登場人物たちのインパクトは強烈だ。あまりの醜さに婚家を3日で追い出され、流れ流れてピョンデにたどり着いた汁飯屋の老婆。老婆の娘で、老婆に片目を潰された一つ目は、蜜蜂を自由自在に操る能力を持つ。

物語の中核をなすクムボクは、類まれなる才覚を持ち次々と事業を成功に導く実業家であり、説明不能な魅力で次々と男たちを惹きつける女性だ。クムボクの魅力に絡め取られた男たちは、魚売り、荷役夫のシンパイ、港町のやくざ刀傷、そして彼女ともに煉瓦工場を立ち上げるために奔走する文。彼らは、クムボクの前では従順であったり嫉妬に苛まれたりする。クムボクに翻弄され続ける男たちだ。

他にも、クムボクが女乞食としてうまやでチュニを産み落とすときに手助けし、それ以降クムボクを援助し続けた双子と彼女たちが飼っている象のジャンボだったり、クムボクが成功者としてピョンデに大劇場を建設したときに支配人となる幼馴染の薬売り、ピョンデの娼館から逃げ出しクムボクの愛人となった絶世の美貌を持つ売春婦睡蓮といった人物たちや、クムボクの娘チュニに関わる人物たち(トラック運転手や刑務所の女囚仲間、冷酷かつ残虐な看守鉄仮面)のどのキャラも強烈すぎる。

こうした登場人物の強烈さを演出するのが、著者による語りの巧みさだ。

クムボクの恋人となる刀傷について、著者は繰り返し書いていく。

稀代の詐欺師であり、悪名高い密輸業者であり、この町で並ぶ者のないドス使いの名手であり、音に聞こえた遊び人で、港町の娼婦たち全員のダンナであり、またやり手のブローカーでもある刀傷

こういう描写が他の登場人物にも同様にあって、読者はその人物のイメージをいやが上でも脳裏に刻みつけられていく。それはもう、とにかく圧倒的すぎてこんなレビューでは伝えきれない。本書を読んでもらうしかない。

登場人物の魅力だけではない。次々に披露されるエピソードの数々がどれもこれもたまらなく面白いのだ。

登場人物のインパクト、エピソードのインパクトを読者に植え付けるのが、本書の語り口である。それはまるで講談を聞いているような語り口。講談師がときに軽快にときに濃厚にときに盛大に講ずるように、著者はエピソードを畳み掛けるようにして積み重ねていく。それは、著者の物語師としての能力でもあるし、その魅力的な騙りをイメージを損なわずむしろより一層の迫力を加えて翻訳した訳者の能力でもある。読みながら「この本を元に神田伯山が講談にして演じたら猛烈に面白い演目になるんじゃないか」と考えてしまった。

あらすじなどストーリー紹介を一切していないので、どんな小説なのか全然わからなくなっているが、本書はあらすじなど知らぬままとにかくページを開いて世界に飛び込んでみるべき本なので、もうとにかく読んでくださいとしか言えない。マジですごいから読んでください。

 

「古くてあたらしい仕事」島田潤一郎/新潮社-『古くてあたらしい仕事』というタイトルにこめられた夏葉社10年の軌跡

 

 

ひとり出版社『夏葉社』の島田潤一郎さんが、ご自身が夏葉社を立ち上げるまでの日々や立ち上げてからのさまざまな出来事を綴った本。

「古くてあたらしい仕事」というタイトルが秀逸だ。出版業界はかなり以前から斜陽産業と言われ続けていて、特に町の本屋がどんどんと姿を消している。本を読まない人もたくさんいて、とにかく本は売れないというのが世間一般の認知になっている。本に関わるさまざまなシステムも旧態依然としていて批判されることも多い。そんな古い業界にあたらしく身を投じた島田さんの夏葉社10年の記録が本書には記されている。

島田さんは33歳で夏葉社を立ち上げた。きっかけは従兄の死。突然の事故で愛する息子を失った叔父と叔母のために本を作ろうと考えたからだ。それがヘンリー・スコット・ホランドの「さよならのあとで」である。亡くなった人を悼み、残された人がその存在を忘れずに生きるための想いが込められたこの1篇の詩。島田さんは、この詩を本にして贈ろうと決めた。

夏葉社を立ち上げるまでの島田さんは、なんだかフワフワと生きてきたように見える。大学を出てから出版社を立ち上げるまでは、本を読んだり映画をみたり音楽を聞いたりする合間に仕事を転々とする。そんな日々を繰り返してきた。

三二歳の無職のぼくは、ぼくを必要としてくれる人のために仕事をしてみたいと思うようになっていった。

仕事探しを続ける中で島田さんはその思いを募らせていく。そして、『ぼくを必要としてくれる人』=従兄(息子)を亡くした叔父、叔母だと思う。彼らのために自分ができることをする。それが「さよならのあとで」を本にして届けることだった。

こうして島田さんは『夏葉社』を立ち上げる。2009年9月。『夏葉社』という名前は「従兄と遊んだ夏の日々をイメージして」つけたという。夏葉社の事業計画書に島田さんは事業目的をこう書いた。

何度も読み返される、定番といわれるような本を、一冊々々妥協せずにつくることによって、長期的な利益を確保する。そのために、会社を応援してくれる本屋さんを全国に一〇〇店舗開拓し、それらの店を重点的に営業していく。

まさにいま、私たちが夏葉社の本を信頼して手に取る理由のすべてがこめられていると思う。私が最初に手にした夏葉社の本は、関口良雄「昔日の客」だった。図書館の新刊コーナーに置かれていた。萌黄色というのだろうか、淡い緑の表紙に記された「昔日の客」の文字。シンプルな装丁が逆に目を引いた。当時(今もなのだが)、私が住んでいる地域の本屋さんには夏葉社の本を置いているところはなかった。そういう意味では、地元の図書館が「昔日の客」を選書してくれたことに感謝しなければならない。

「昔日の客」はとても素敵な本だった。この本と出会ったことで、私は夏葉社という出版社の存在を知った。島田さんが作った本が読者である私に伝わった。

「さよならのあとで」を出版するために立ち上げた夏葉社だったが、最初に刊行したのは「レンブラントの帽子」、2冊めが「昔日の客」、3冊めは「星を撒いた街」である。いずれも復刊だ。「レンブラントの帽子」は装丁を和田誠さんが手がけている。島田さんは、まったく面識もない和田さんに長い手紙をしたためて送った。昨年(2019年)11月に神保町の『ブックハウスカフェ』で開催された本書の刊行記念イベントで島田さんは、10月に亡くなられた和田さんとの思い出を語っていた。すでに装丁家イラストレーターとして確固たる地位を築いていた和田さんが、まだ夏葉社を立ち上げたばかりの島田さんにどう接してくれたか。和田さんとの仕事がいかに緊張感があっていかに楽しいものだったか。ふたりの関係は、師弟のようであり、同士のようであり、親子のようでもあったのだと、島田さんの話を聞きながら思った。

作家の庄野潤三さんのご家族との交流の話も素敵だ。学生時代から好きだった作家の短篇集「親子の時間 庄野潤三小説撰集」出版のため千壽子夫人に手紙を出したことでつながった庄野さんのご家族との交流は、編集者と作家家族という仕事上の関係の垣根を越えて、親戚付き合いや友人同士のような関係になっていく。まだ小さい島田さんの息子さんを自分の孫のようにかわいがる千壽子さんたちの様子が微笑ましい。

和田誠さんとの交流。庄野潤三さんのご家族との交流。夏葉社の10年は、島田さんがたくさんの人々と出会い、仕事だけでなく人間としてたくさんの経験を築いてきた10年なのだと、本書を読んで思う。その経験は、夏葉社から刊行された本にギュッとつまっている。私たち読者は、島田さんが多くの人と出会った得た感動を本を通じておすそ分けしてもらっているのかもしれない。

この本を読んで、夏葉社という出版社に興味を持ったら、ぜひ夏葉社から刊行されている本も読んでみてほしい。

 

 

 

 

 

「完訳オズのふしぎな国」ライマン・フランク・ボーム/宮坂宏美訳/復刊ドットコム-ラストに待ち受ける驚愕の真相!エメラルド王国を追われたかかしの運命はいかに!(注:本書はファンタジーです)

 

 

アガサ・クリスティの『オリエント急行の殺人』と『アクロイド殺し』と『カーテン』を合わせたくらいの大大大どんでん返し」
「ミステリ通を自認するならこの作品を知らないのはモグリ」

『はじめての海外文学スペシャルイベント』で壇上に立った推薦者の越前敏弥さんがプレゼンするのを聞いて、本書を手にとった読者も多いはずだ。私もそのひとり。

ライマン・フランク・ボーム「完訳オズのふしぎな国」は、「オズの魔法使い」から始まるシリーズの第2作。「オズの魔法使い」に続編があったことに驚かれる人もあるだろう。第1作は世界的なベストセラーであり、舞台や映画にもなった。本は読んでいなくても映画を観たという人もいて、知名度は抜群。しかし、本書以降のシリーズ続刊(「オズの魔法使いシリーズ」は全14巻あるのだ!)については、読んだことがある人どころか存在を知っている人もほとんどいない。越前さん曰く「第1巻と第2巻の知名度に世界一ギャップのあるシリーズ」なのだ。

s-taka130922.hatenablog.com

「完訳オズのふしぎな国」は、前作「オズの魔法使い」から4年後の1904年に刊行された。著者のボームは、続編を執筆するつもりはなかったが、たくさんの子どもたちから「かかしとブリキのきこりのことをもっと書いてほしい」とお願いする手紙をもらったことで本書を書くことにしたという。

「オズのふしぎな国」の物語は、いじわるな魔女モンビと暮らす少年チップが〈命の粉〉という魔法の粉によって命を吹き込まれたカボチャのジャックと一緒にモンビから逃げ出すところから始まる。途中で〈ノコギリ馬〉に命を吹き込むと、チップとジャックとノコギリ馬はエメラルド王国を目指す。エメラルド王国は、いまやかかしが王さまとして治める国となっているのだ。

ここから物語は怒涛の展開となる。長く男に支配され続けていることに反対し、都を彩るたくさんの宝石を奪うことを目的とするジンジャー將軍率いる女性軍がエメラルド王国に攻め込み、かかしはチップとジャックとノコギリ馬を連れて逃亡する。逃げ込んだ先はかつての盟友ブリキのきこりが治めるウィンキー国。きこりはその国の皇帝になっているのだ。

奪われたエメラルド王国を取り戻すべく、かかしとブリキのきこりとチップとジャックとノコギリ馬は立ち上がる。途中で〈カクダイ・クルクルムシ・ハカセ〉が仲間に加わる。こうして、エメラルド王国の王位継承をめぐる争いが勃発するのである。

「オズのふしぎな国」における最大のミステリは、『エメラルド王国の正当な王位継承者は誰か?』という謎である。

エメラルド王国は、もともとパストリアという王が治めていた。それを魔法使いのオズが奪い、オズがいなくなった後にかかしが王となった。パストリアにはオズマ姫という娘がいたが、彼女は行方不明になっている。ジンジャー將軍からエメラルド王国を取り戻すための助けを求めていい魔女グリンダの国を訪れたかかしとその一行は、彼女からその話を聞くと、エメラルド王国の正当な後継者であるオズマ姫の行方を探る。すると、いじわるな魔女モンビの関わりが浮かび上がってくる。

物語後半は、まさにワクワクドキドキの展開だ。エメラルド王国に籠城するジンジャー將軍率いる女性軍とグリンダが率いる軍との攻防は一進一退。いい魔女グリンダといじわるな魔女モンビとの攻防も一進一退。読者は、物語の結末をハラハラしながら見守るだろう。そして、ラストに明かされる真相に衝撃を受けるだろう。

無事エメラルド王国の王位を継承したオズマ姫。皇帝としてウィンキー王国に戻ったブリキのきこりと財務大臣として彼とともに行動することになったかかし。すべては収まるべきところに収まり、幸せな結末を迎える。これぞおとぎ話の真骨頂といえる締めくくりではないか。

訳者あとがきによれば、第3巻「オズのオズマ姫」には、オズマ姫、ブリキのきこり、かかしの他、本書には登場しなかったドロシーや臆病なライオンが再登場するという。本書を読んでシリーズ全体の展開に興味をもった読者は、シリーズを続けて読みたくなるはず、とイベントで越前さんは断言していた。確かにそうだなと本書を読んで思った。一気に読むのは難しくても少しずつ読んでいこうかなと思っている。

 

 

 

「赤い衝動」サンドラ・ブラウン/林啓恵訳/集英社-25年前の爆破事件で英雄となった少佐はなぜ銃撃されたのか? 過去と現在をつなぐ真実とは?

 

 

はじめて読むジャンルの作品。著者サンドラ・ブラウンは『ロマンス小説』の第一人者で、60作以上の作品を発表していて大半がベストセラーになっている。

本書「赤い衝動」もロマンス小説だが、ミステリ小説としての要素が高く、非常に読み応えがあった。個人的には、エロティックな描写はなしでサスペンス要素の強いミステリ小説とした方がいいんじゃないかと思うのだが、濃厚なセックスシーンもまた人気なのかもしれない。

メインとなる登場人物はふたり。テレビのレポーターとして活躍するケーラ・ベイリーと元ATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)捜査官の私立探偵ジョン・トラッパーである。物語はまず、ケーラが『少佐』と呼ぶ人物へのインタビュー取材を終えた場面から始まる。『少佐』とは、フランクリン・トラッパー少佐であり、25年前に起きたペガサスホテル爆破事件で英雄となった人物だ。

インタビューを終えたケーラと少佐は、突然襲撃される。少佐は胸を撃たれ、ケーラは逃げる途中で負傷する。ここまでが序章だ。

ここで話は襲撃事件の少し前に時間を戻す。読者はそこで、ケーラと少佐の関係、ジョンと少佐の関係を知ることになる。そして、少佐が英雄となった25年前のホテル爆破事件に隠された真相と今回の襲撃事件とのつながりを求めて、ジョンとケーラの捜査を追いかけることになる。

登場人物たちは曲者ぞろいだ。ジョンが開く探偵事務所の下のフロアで弁護士事務所を開いているカーソン・ライム。少佐の古くからの友人である保安官のグレン・アディソン。グレンの息子であるハンク・アディソン。ペガサスホテルの跡地を買収した不動産王の大富豪トマス・ウィルコックス。どの人物もどこか一筋縄ではいかないバックグラウンドを持っている。

少佐に近づくためにジョンに接近したケーラだが、襲撃事件に巻き込まれ、さらに過去の爆破事件の真相と襲撃事件の犯人捜しを強引に追求するジョンと行動をともにするうちに、ジョンの男性としての魅力に惹かれていく。はじめは一線を引いていたはずのふたりの関係は、互いに相手の身体を求め合う関係へと変わっていく。

ロマンス小説は、アメリカでは人気のジャンルらしい。恋愛要素のある小説がロマンス小説ということになるようで、純粋に恋愛を描くロマンス小説もあれば、本書のように恋愛要素を含むミステリやファンタジー、SFなどもある。

先日(2020年1月26日)、大阪の梅田蔦屋書店で開催された「はじめての海外文学スペシャルin大阪」で、翻訳家の夏目大先生がご自身の推薦書「分別と多感」を紹介するときに、ジェイン・オースティンの著作(「高慢と偏見」「分別と多感」など)が現在のロマンス小説の基盤となったと話していた。小説や映画の世界では、恋愛要素は王道のシチュエーションだ。

ロマンス小説としての側面だけでなく、ミステリとしても本書は読み応えがある。25年前に起きた爆破事件の真相が暴かれる中で驚くような事実が浮かび上がっていく。意外な人物が事件の鍵を握り、さらに意外な人物がジョンとケーラを窮地におちいらせたり、救ったりする。冒頭にも書いたが、セックスシーンなしでも十分に面白いミステリだと思う。

 

「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ 願いをかなえる呪文」クリス・コルファー/田内志文訳/平凡社-双子の兄弟アレックスとコナーが、12歳の誕生日におばあちゃんからもらったのは『ランド・オブ・ストーリーズ』という不思議な本でした

 

 

「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ 願いをかなえる呪文」は、白雪姫やシンデレラ、赤ずきんラプンツェル、眠りの森の美女といったおとぎ話のその後の世界に迷い込んでしまった双子の兄妹が、元の世界に戻るための『願いをかなえる呪文』を手に入れるために大冒険を繰り広げるファンタジーです。

アレックスとコナーは、双子の兄妹だけど性格は正反対。アレックスは本が大好きで勉強もできる優等生、コナーは授業中に居眠りばかりの問題児です。

ふたりは、通りをわたった小さな家にお母さんと暮らしています。お父さんは、ふたりが11歳の誕生日をむかえる少し前に交通事故で死んでしまったからです。お父さんは、いつもふたりにたくさんのお話を聞かせてくれました。ふたりは、そんなお父さんが大好きでした。

ふたりが12歳の誕生日を迎えた日のことです。その日は、いつも世界中を飛び回っているおばあちゃんがふたりの家をサプライズで訪ねてきてくれて、ふたりにたくさんのプレゼントをくれました。その中にあったのが『ランド・オブ・ストーリーズ』という本だったのです。

『ランド・オブ・ストーリーズ』は、とても不思議な本でした。なぜなら、ときどき音をたてたり、光を放ったりするのです。そしてなにより、開いた本のページに投げ入れた物を全部飲み込んでしまうのです。

アレックスは、本の不思議を知ってからずっと考えていました。この本の中に入ったらどうなるんだろうと。そして、彼女はついに本の中に足を踏み入れます。妹の身を案じたコナーも一緒に本の中に入り込んでしまいました。そこから、兄妹の大冒険が始まるのです。

子どもの頃に読んだたくさんのおとぎ話、「白雪姫」「シンデレラ」「塔の上のラプンツェル」「眠りの森の美女」「人魚姫」などなど、どれもたくさんの子どもたちの愛され、記憶に刻まれている物語だと思います。ディズニー映画にもなっていますから、物語を知らない人はいないのではないでしょうか。

『ランド・オブ・ストーリーズ』の世界に入り込んでしまったアレックスとコナー。ふたりが落っこちたのは『ドワーフの森』と呼ばれる場所でした。ふたりはそこで、フロッギーというカエル男と出会い、『願いをかなえる呪文』のことを知ります。フロッギーが渡してくれた日記には、呪文を手に入れるために必要な8つのアイテムが記されていました。

こうしてふたりは、元の世界に戻るための『願いをかなえる呪文』を手に入れるためのアイテムを探すため、『ランド・オブ・ザ・ストーリーズ』の世界を旅することになったのです。

ラプンツェルの塔』がそびえる『すみっこ王国』
シンデレラ王妃が暮らす『チャーミング王国』
赤ずきん女王が治める『赤ずきん王国』
白雪姫王妃が暮らす『ノーザン王国』
眠れる美女が治める『眠れる王国』

他にも、妖精たちが暮らす『妖精の王国』や人魚たちが暮らす『人魚の入り江』もあります。悪いトロルやゴブリンに捕まりそうになったり、お菓子の家の魔女に食べられそうになったり、ふたりの旅はけっして順風ではありません。

さらに、『ランド・オブ・ザ・ストーリーズ』の世界では大変なことが起こります。ノーザン王国の地下牢から、白雪姫の継母である悪の女王が脱走したのです。悪の女王も、彼女のある目的をかなえるために『願いをかなえる呪文』を必要としていました。悪の女王は、赤ずきんの命を狙うおおかみたちと取引して、双子の行方を追いかけます。

私たちが子どもの頃に読んだおとぎ話は、最後に主人公が幸せを掴み、悪者は懲らしめられて「めでたしめでたし」で終わっていました。でも、子どもながらに「この先、このお話はどうなっていくんだろう?」と考えたことがあります。素敵な王子さまと結ばれた白雪姫やシンデレラは、その後どんな王妃さまになったのだろう。「3びきのくま」でくまの家を荒らしてしまった女の子(ゴルディロックス)は、どんな女性に成長したのだろう。

この本には、おとぎ話の登場人物たちのその後の姿が描かれています。幸せな暮らしを続けているものもいれば、なぜかおたずね者になっているものもいます。ひとりひとりが、それぞれのその後を生きているのです。

アレックスとコナーは、さまざまな苦難を、多くの人たちの助けを借りながら乗り越えていきます。果たしてふたりは、『願いをかなえる呪文』を手に入れて元の世界に戻ることができるでしょうか。なぜふたりは、不思議な本『ランド・オブ・ザ・ストーリーズ』の世界に入ってしまったのでしょうか。そのすべてが明らかになったときには、きっと大きな驚きがあると思います。

著者のクリス・コルファーは、テレビドラマ「glee」に出演していた俳優なのだそうです。本書は映画化が決定していて、著者自身が脚本と監督をするのだとか。また、「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」は本書を第1巻として、全6巻のシリーズになっています。第2巻以降もアレックスとコナーの双子兄妹が活躍するシリーズになっているみたいです。おとぎ話が好きな人、ファンタジーが好きな人にオススメします!

 

 

 

 

 

 

 

「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ 願いをかなえる呪文」クリス・コルファー/田内志文訳/平凡社-双子の兄弟アレックスとコナーが、12歳の誕生日におばあちゃんからもらったのは『ランド・オブ・ストーリーズ』という不思議な本でした

 

 

「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ 願いをかなえる呪文」は、白雪姫やシンデレラ、赤ずきんラプンツェル、眠りの森の美女といったおとぎ話のその後の世界に迷い込んでしまった双子の兄妹が、元の世界に戻るための『願いをかなえる呪文』を手に入れるために大冒険を繰り広げるファンタジーです。

アレックスとコナーは、双子の兄妹だけど性格は正反対。アレックスは本が大好きで勉強もできる優等生、コナーは授業中に居眠りばかりの問題児です。

ふたりは、通りをわたった小さな家にお母さんと暮らしています。お父さんは、ふたりが11歳の誕生日をむかえる少し前に交通事故で死んでしまったからです。お父さんは、いつもふたりにたくさんのお話を聞かせてくれました。ふたりは、そんなお父さんが大好きでした。

ふたりが12歳の誕生日を迎えた日のことです。その日は、いつも世界中を飛び回っているおばあちゃんがふたりの家をサプライズで訪ねてきてくれて、ふたりにたくさんのプレゼントをくれました。その中にあったのが『ランド・オブ・ストーリーズ』という本だったのです。

『ランド・オブ・ストーリーズ』は、とても不思議な本でした。なぜなら、ときどき音をたてたり、光を放ったりするのです。そしてなにより、開いた本のページに投げ入れた物を全部飲み込んでしまうのです。

アレックスは、本の不思議を知ってからずっと考えていました。この本の中に入ったらどうなるんだろうと。そして、彼女はついに本の中に足を踏み入れます。妹の身を案じたコナーも一緒に本の中に入り込んでしまいました。そこから、兄妹の大冒険が始まるのです。

子どもの頃に読んだたくさんのおとぎ話、「白雪姫」「シンデレラ」「塔の上のラプンツェル」「眠りの森の美女」「人魚姫」などなど、どれもたくさんの子どもたちの愛され、記憶に刻まれている物語だと思います。ディズニー映画にもなっていますから、物語を知らない人はいないのではないでしょうか。

『ランド・オブ・ストーリーズ』の世界に入り込んでしまったアレックスとコナー。ふたりが落っこちたのは『ドワーフの森』と呼ばれる場所でした。ふたりはそこで、フロッギーというカエル男と出会い、『願いをかなえる呪文』のことを知ります。フロッギーが渡してくれた日記には、呪文を手に入れるために必要な8つのアイテムが記されていました。

こうしてふたりは、元の世界に戻るための『願いをかなえる呪文』を手に入れるためのアイテムを探すため、『ランド・オブ・ザ・ストーリーズ』の世界を旅することになったのです。

ラプンツェルの塔』がそびえる『すみっこ王国』
シンデレラ王妃が暮らす『チャーミング王国』
赤ずきん女王が治める『赤ずきん王国』
白雪姫王妃が暮らす『ノーザン王国』
眠れる美女が治める『眠れる王国』

他にも、妖精たちが暮らす『妖精の王国』や人魚たちが暮らす『人魚の入り江』もあります。悪いトロルやゴブリンに捕まりそうになったり、お菓子の家の魔女に食べられそうになったり、ふたりの旅はけっして順風ではありません。

さらに、『ランド・オブ・ザ・ストーリーズ』の世界では大変なことが起こります。ノーザン王国の地下牢から、白雪姫の継母である悪の女王が脱走したのです。悪の女王も、彼女のある目的をかなえるために『願いをかなえる呪文』を必要としていました。悪の女王は、赤ずきんの命を狙うおおかみたちと取引して、双子の行方を追いかけます。

私たちが子どもの頃に読んだおとぎ話は、最後に主人公が幸せを掴み、悪者は懲らしめられて「めでたしめでたし」で終わっていました。でも、子どもながらに「この先、このお話はどうなっていくんだろう?」と考えたことがあります。素敵な王子さまと結ばれた白雪姫やシンデレラは、その後どんな王妃さまになったのだろう。「3びきのくま」でくまの家を荒らしてしまった女の子(ゴルディロックス)は、どんな女性に成長したのだろう。

この本には、おとぎ話の登場人物たちのその後の姿が描かれています。幸せな暮らしを続けているものもいれば、なぜかおたずね者になっているものもいます。ひとりひとりが、それぞれのその後を生きているのです。

アレックスとコナーは、さまざまな苦難を、多くの人たちの助けを借りながら乗り越えていきます。果たしてふたりは、『願いをかなえる呪文』を手に入れて元の世界に戻ることができるでしょうか。なぜふたりは、不思議な本『ランド・オブ・ザ・ストーリーズ』の世界に入ってしまったのでしょうか。そのすべてが明らかになったときには、きっと大きな驚きがあると思います。

著者のクリス・コルファーは、テレビドラマ「glee」に出演していた俳優なのだそうです。本書は映画化が決定していて、著者自身が脚本と監督をするのだとか。また、「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」は本書を第1巻として、全6巻のシリーズになっています。第2巻以降もアレックスとコナーの双子兄妹が活躍するシリーズになっているみたいです。おとぎ話が好きな人、ファンタジーが好きな人にオススメします!