タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「完訳オズのふしぎな国」ライマン・フランク・ボーム/宮坂宏美訳/復刊ドットコム-ラストに待ち受ける驚愕の真相!エメラルド王国を追われたかかしの運命はいかに!(注:本書はファンタジーです)

 

 

アガサ・クリスティの『オリエント急行の殺人』と『アクロイド殺し』と『カーテン』を合わせたくらいの大大大どんでん返し」
「ミステリ通を自認するならこの作品を知らないのはモグリ」

『はじめての海外文学スペシャルイベント』で壇上に立った推薦者の越前敏弥さんがプレゼンするのを聞いて、本書を手にとった読者も多いはずだ。私もそのひとり。

ライマン・フランク・ボーム「完訳オズのふしぎな国」は、「オズの魔法使い」から始まるシリーズの第2作。「オズの魔法使い」に続編があったことに驚かれる人もあるだろう。第1作は世界的なベストセラーであり、舞台や映画にもなった。本は読んでいなくても映画を観たという人もいて、知名度は抜群。しかし、本書以降のシリーズ続刊(「オズの魔法使いシリーズ」は全14巻あるのだ!)については、読んだことがある人どころか存在を知っている人もほとんどいない。越前さん曰く「第1巻と第2巻の知名度に世界一ギャップのあるシリーズ」なのだ。

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「完訳オズのふしぎな国」は、前作「オズの魔法使い」から4年後の1904年に刊行された。著者のボームは、続編を執筆するつもりはなかったが、たくさんの子どもたちから「かかしとブリキのきこりのことをもっと書いてほしい」とお願いする手紙をもらったことで本書を書くことにしたという。

「オズのふしぎな国」の物語は、いじわるな魔女モンビと暮らす少年チップが〈命の粉〉という魔法の粉によって命を吹き込まれたカボチャのジャックと一緒にモンビから逃げ出すところから始まる。途中で〈ノコギリ馬〉に命を吹き込むと、チップとジャックとノコギリ馬はエメラルド王国を目指す。エメラルド王国は、いまやかかしが王さまとして治める国となっているのだ。

ここから物語は怒涛の展開となる。長く男に支配され続けていることに反対し、都を彩るたくさんの宝石を奪うことを目的とするジンジャー將軍率いる女性軍がエメラルド王国に攻め込み、かかしはチップとジャックとノコギリ馬を連れて逃亡する。逃げ込んだ先はかつての盟友ブリキのきこりが治めるウィンキー国。きこりはその国の皇帝になっているのだ。

奪われたエメラルド王国を取り戻すべく、かかしとブリキのきこりとチップとジャックとノコギリ馬は立ち上がる。途中で〈カクダイ・クルクルムシ・ハカセ〉が仲間に加わる。こうして、エメラルド王国の王位継承をめぐる争いが勃発するのである。

「オズのふしぎな国」における最大のミステリは、『エメラルド王国の正当な王位継承者は誰か?』という謎である。

エメラルド王国は、もともとパストリアという王が治めていた。それを魔法使いのオズが奪い、オズがいなくなった後にかかしが王となった。パストリアにはオズマ姫という娘がいたが、彼女は行方不明になっている。ジンジャー將軍からエメラルド王国を取り戻すための助けを求めていい魔女グリンダの国を訪れたかかしとその一行は、彼女からその話を聞くと、エメラルド王国の正当な後継者であるオズマ姫の行方を探る。すると、いじわるな魔女モンビの関わりが浮かび上がってくる。

物語後半は、まさにワクワクドキドキの展開だ。エメラルド王国に籠城するジンジャー將軍率いる女性軍とグリンダが率いる軍との攻防は一進一退。いい魔女グリンダといじわるな魔女モンビとの攻防も一進一退。読者は、物語の結末をハラハラしながら見守るだろう。そして、ラストに明かされる真相に衝撃を受けるだろう。

無事エメラルド王国の王位を継承したオズマ姫。皇帝としてウィンキー王国に戻ったブリキのきこりと財務大臣として彼とともに行動することになったかかし。すべては収まるべきところに収まり、幸せな結末を迎える。これぞおとぎ話の真骨頂といえる締めくくりではないか。

訳者あとがきによれば、第3巻「オズのオズマ姫」には、オズマ姫、ブリキのきこり、かかしの他、本書には登場しなかったドロシーや臆病なライオンが再登場するという。本書を読んでシリーズ全体の展開に興味をもった読者は、シリーズを続けて読みたくなるはず、とイベントで越前さんは断言していた。確かにそうだなと本書を読んで思った。一気に読むのは難しくても少しずつ読んでいこうかなと思っている。