タカラ~ムの本棚

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「謎の無線電信」森下雨村訳/ヒラヤマ探偵文庫-名探偵セクストン・ブレイクが受け取った謎の無線電信。窮地に陥っている仲間を救うべくブレイクが立ち上がる!

 

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イギリスでシャーロック・ホームズと肩を並べる人気を誇った名探偵セクストン・ブレイク。大正から昭和にかけて探偵小説誌や週刊誌などに訳出掲載されたセクストン・ブレイクの物語を発掘し現代に蘇らせるヒラヤマ探偵文庫の「セクストン・ブレイク・コレクション」第2弾は、「中学世界」という月刊誌に、1921年(大正10年)4月号から同年11月号まで森下雨村訳で全8回連載された「謎の無線電信」の単行本化である。

ある日、グリーンスター汽船会社のワイルドフライ号という商船のジョネスという乗組員がベーカァー街にあるセエクストン・ブレエク(訳者の森下雨村の訳出表記)の家を訪れる。彼は航海中に受信した不可解な無線電信をブレエクのところへ届けに来たのだ。

CQ CQ CQ Blake London
BM OC G2437 KO KO KO

ブレエクは、ジョネスの話を聞きながら、3ヶ月前のウエスト・エンド・ホテルで会ったジェムス・グラントのことを思い出していた。グラントは、英国外務省の秘密探偵であり、“花崗岩(グラニット)のグラント”の異名をもつ男だ。ホテルで話したとき、その別れ際に彼はブレエクに、「もし“KO”という通信が来たなら、それはぼくからだと思ってくれたまえ。そのときは、ぼくが絶体絶命の場合なのだ。ね、きみ“OK”の反対だから、覚えいいだろう」と話していたのだ。ブレエクは、助手のチンカァとともに、この謎の無線電信の暗号解読に取り組む。そして、英国博物館内の図書館にある本に、謎の答えがあるとにらむ。ブレエクとチンカァが図書館に行くと、目的の本は書棚になく、怪しい男が彼らを監視していた。チンカァが、怪しい人物を追跡する一方、ブレエクは彼らが求める本を抱えて死んでいる男を発見する。「カリビアン海調査報告書」というその本からは、地図のページが切り取られており、死んだ男のポケットからは電報の一片が発見された。

コンヤヴィクトリーブトウカイニアカバラヲツケテコイ--ジュリー

この電報をヒントに仮装舞踏会に潜入したブレエクに、ジュリーという女が接触してくる。彼女はブレエクをジャクエスという男と思い込み、地図を見せてほしいと要求する。そして、「パリで“豹”(レオパルド)を見かけた」と告げる。

謎の無線電信、破り取られた地図、男の死体、紅薔薇の舞踏会、“豹”(レオパルド)という謎の人物。ブレエクはこうした謎や手がかりから、グラントが1億5000ポンドをドイツへ運ぼうとしていたスピッツベルゲンという汽船がハイチ沖で難破し、1億5000ポンドの金貨が忽然と消えた事件を追って、カリビアン海で窮地に陥っていることを知る。グラントを救うため、ブレエクは船を手配し、助手のチンカァ、探偵犬ペドロを従えて一路カリビアン海を目指す。

なんとワクワクする物語か。名探偵セクストン・ブレイクの物語は、単なる謎解きにとどまらず、スリルとサスペンスそして冒険心にあふれている。面白い物語を読むのに理屈はいらない。ただただ、彼らの活躍をワクワクしながら読むだけでいい。時間を忘れて読書を楽しむ。久しぶりにそういう楽しみ方ができた。