タカラ~ムの本棚

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「僕のワンダフル・ジャーニー」W・ブルース・キャメロン/青木多香子訳/新潮文庫-魂の目的を果たしたはずのトビーは、クラリティを愛し守るためにまた生まれ変わる。

 

 

僕は魂の目的を果たしたのだ。

前作「野良犬トビーの愛すべき転生」のラストで、トビーが何回も転生を繰り返して愛し続けた少年イーサンと、最後の犬バディとして永遠の別れを迎えたとき、彼はそう感じた。これで、自分の使命は終わったのだと思った。

W・ブルース・キャメロン/青木多香子訳「僕のワンダフル・ジャーニー」は、「野良犬トビーの愛すべき転生」の続編となる物語だ。イーサンがこの世を去り、老犬として余生を過ごすバディ。イーサンを愛するために生まれてきた彼にとって残りの人生はイーサンとの日々を思い出しながらゆっくりと過ごすだけだと思っていた。

イーサンと暮らした家で、ハンナと暮らすバディ。その家には、イーサンとハンナの子どもたち孫たちが集まってきた。そこには、まだ幼い女の子クラリティもいた。イーサンとハンナの孫娘だ。バディにとって彼女は小さな存在だった。やがて、バディは最後の時を迎える。犬がこの世でするはずのことはやり尽くしたと思っていた。ただ、小さなクラリティのことは少し気がかりだった。

もう転生することはないと思っていたのに、気づけばまた子犬として生まれ変わっていた。トビーは困惑する。イーサンを愛するために生まれ変わってきたはずで、そのイーサンはもういない。なら、どうして自分は転生したのだろう。

それは、クラリティのためだった。ある日、彼の前に彼女は現れる。ちょうどイーサンが車に乗り始めたのと同じくらいの年頃に成長したクラリティだった。彼はすぐにわかった。

今や私にははっきりとわかった。私の目的は想像していた通りだった。つまり、クラリティの世話を続けることだった。だから、私はまた子犬に戻ったのだ。まだやることがあったからだ。

こうして彼は、モリーとしてクラリティと暮らすことになった。

クラリティは孤独な少女だ。母親との折り合いも悪い。それでも、いやだからこそ、モリーはクラリティを愛し、彼女を守らなければならなかった。クラリティが悲しんでいるときはなぐさめ、怒っているときは安らぎをあたえる。

モリーがいなければ、クラリティはもっとダメな人間になってしまったかもしれない。彼女を救ったのは、モリーであり、彼が転生したマックスであり、トビーだった。彼がかつてイーサンを愛して見守り続けたように、クラリティを愛して見守り続けたことで、彼女はギリギリのところで踏みとどまり、彼女の人生を生きることができたのだ。

クラリティを見送り、トビーの役目は終わる。セラピードッグとして余生を送りながら、トビーはイーサンとの日々を、クラリティとの日々を思い出す。そして、彼も最後の時を迎える。前作から続いた長い物語をすべて読み終えたとき、心に浮かんだのは「ありがとう。おつかれさま」という言葉だった。

 

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野良犬トビーの愛すべき転生 (新潮文庫)

野良犬トビーの愛すべき転生 (新潮文庫)