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ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

脚本執筆に行き詰まった作家は、誰かの話を聞くことでひとつの映画を完成させた-ミランダ・ジュライ「あなたを選んでくれるもの」

映画 書評 海外文学

ミランダ・ジュライは、映画監督であり、脚本家であり、女優であり、アーティストであり、作家である。最近では、スマホアプリを手掛けていて、「somebody」というちょっと風変わりなコミュニケーションアプリを手がけている。

wired.jp


SOMEBODY - MIU MIU - WOMEN'S TALES #8 ...

日本でも、短編集「いちばんここに似合う人」が話題となり、Twitterユーザーの投票ツイートによって決定される第1回Twitter文学賞で、第1位を獲得した。

映画監督・脚本家としては、長編監督作品「君とボクの虹色の世界」で、カンヌ国際映画祭のカメラ・ドールを受賞した。

あなたを選んでくれるもの (新潮クレスト・ブックス)

あなたを選んでくれるもの (新潮クレスト・ブックス)

 

本書「あなたを選んでくれるもの」は、ミランダの第2作目の著作となるのだが、その内容は小説ではなくノンフィクションである。

君とボクの虹色の世界」に続く映画の脚本執筆に行き詰まっていたミランダは、ネットの世界に現実逃避するなどしていた。そんな中、彼女は自宅に届けられる「ペニーセイバー」という冊子に目をつける。それは、個人が自分の所有する品物の販売広告を掲載する粗雑なフリーペーパーだ。ミランダは、「ペニーセイバー」に広告を出している人の話を聞こうと考える。

わたしはこの革ジャケットの人の考えていることをもっと知りたいと思った。この人がどんなふうに日々を過ごしているのか、何を夢見、何を恐れているのか、知りたいと思った。

そして、ミランダは「ペニーセイバー」に広告をのせている人たちに電話をかけ、会ってくれる人のところを訪れて話を聞くようになる。

インタビューを続けていくほどに、ミランダは次作「The Future」の脚本を少しずつ形あるものにしていく。ミランダは、他人と関わることで、相手の世界観から何かを拾い出し、それを自らの糧とし、脚本のアイディアを得ようと模索する。だけど、そのアイディアはなかなか安定しない。「ペニーセイバー」の人々を映画に出演させてはどうかと考えても、結局そのアイディアは実現にはつながらない。

ミランダに大きな影響を与えたのは、最後に出会ったジョーという老人だった。81歳になる彼との会話を通じて、ミランダは彼の強烈な存在感に触れる。彼との会話から《死》を感じる。彼女はすぐにジョーに連絡をとり、今度はビデオカメラを回す。ミランダは、彼を自分の映画に出演させることを決める。

様々な紆余曲折の末に、「The Future」の脚本は完成する。映画の撮影に入ると、ジョーの出演シーンが彼の自宅で撮影される。彼は、ガンと診断され余命2週間を宣告されていた。映画が完成したとき、ジョーはもうこの世にはいなかった。

こうして生まれた映画「The Future」は、2011年にアメリカで公開され、日本でも2013年に公開された。現在は、DVD/Blu-rayなどで見ることができる。本書でミランダの足跡をたどり、それを踏まえて映画を見ると、「The Future」という作品がよく深く見られるのではないかと思う。

いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)

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ザ・フューチャー [DVD]

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映画『the Future ザ・フューチャー』予告編 - YouTube