タカラ~ムの本棚

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「MM9」山本弘/東京創元社-怪獣災害大国・日本で災害対策の最前線で奔走する組織、それが気特対!

 

 

もし、地震や台風のように“怪獣”が自然災害として発生したら? そんな設定で描かれるのが「MM9」である。“MM”は“Monster Magnitude(モンスターマグニチュード)”の略で、怪獣災害の規模を示している。

日本は、世界でも有数の怪獣災害国だ。過去には、1923年に死者14万人に及ぶ大きな被害を出したMM8クラスの大怪獣災害も発生している。そんな怪獣災害大国の日本で対策にあたるのが、気象庁に設置されている特異生物対策部、略称“気特対”である。本書は、気特対の奮闘を連作短編形式で描く作品となっている。全5話構成。

第一話 緊急!怪獣警報発令
第二話 危険!少女逃亡中
第三話 脅威!飛行怪獣襲来
第四話 密着!気特対24時
第五話 出現!黙示録大怪獣

怪獣は、海から空から地下から現れる。気特対の任務は、怪獣出現を一刻も早く察知し、被害を最小限に抑えることだ。被害が広範囲に及ばないように自衛隊と連携して対応にあたる。

気特対は、久里浜祥一を最高責任者とし、宇宙物理学者の案野悠里、室町洋二郎をチーフとする機動班の面々(灰田涼、小出朝也、藤澤さくら)といったメンバーを中心に各種専門家やオペレータで構成される。非番であっても弩級の怪獣発生があれば緊急招集されることもある。彼らの任務は、出現が確認された怪獣のMMを特定し、予想される進路や被害の規模を予測して地域住民に対する警報を発することだ。さらに自衛隊と連携して怪獣を倒すことも仕事である。

第二話では、岐阜で巨大な少女の姿をした怪獣が出現する。気特対によって“ヒメ”と名付けられたこの怪獣が、第五話では日本の命運を握る存在としてクローズアップされる。“ヒメ”の存在は、本書に続くシリーズ第2弾「MM9-invation-」、第3弾となる「MM9-desutruction-」へと続いていく。

なぜ怪獣は私たちの認識する物理法則を無視して巨大化しているのかといった非科学的な部分についても、本書では私たちが存在している宇宙を『ビッグバン宇宙』とし、それに対して人間の物理法則が及ばない『神話宇宙』という怪獣たちの世界が存在するのだとしている。また、日本の神話や世界の神話にも絡めて、この怪獣が存在する世界や怪獣たちが次々と出現する世界の説明をつけている。こうした説明については、著者の持つ知識や巻末にも示される膨大な参考資料を踏まえて構築された世界観なのだろう。正直、この部分に着目してしまうと読んでいて難しく感じてしまうので、ほどほどに考えて読むのがオススメ。そういった小難しい部分を気にしなければ、本書は怪獣パニックSF小説として楽しめる。

人間の科学では解明しきれない怪獣という存在や気特対といった怪獣と対峙する組織の存在など、かつてウルトラマンなどの特撮ドラマを楽しんでいた世代には懐かしさも感じられるだろう。私は、「ウルトラQ」や「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」といった最初期のウルトラシリーズをリアルタイムで見ている世代ではないが、再放送やDVD、配信などでは接してきた。「MM9」は、ウルトラシリーズでいえば「ウルトラQ」が当てはまるかもしれない。

いろいろと小難しい理屈はこねられているが、“怪獣災害”という設定を作った時点で本書の面白さは決まったと思う。子どもの頃に怪獣特撮映画やドラマを毎週楽しみにしていた世代なら、きっと楽しめるのではないだろうか。