タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

バナ・アベド/金井真弓訳「バナの戦争~ツイートで世界を変えた7歳少女の物語」(飛鳥新社)-いつだって戦争の一番の犠牲者は子どもたち。でも、今なら子どもの声が世界を動かせる。バナがそれを証明した。

 

バナ・アベドは、2009年にシリアのアレッポに生まれた。弁護士の父と教師の母、大好きなおじいちゃんやおばあちゃん、おじさんやおばさんに囲まれて育った少女は、とても幸せに暮らしていた。シリアに内戦が勃発するまでは。

2010年にチュニジアから始まった〈アラブの春〉と呼ばれる民主化運動は、アラブ諸国に広く拡大した。それは、バナが暮らすシリアにも波及し、2011年3月にシリア政府軍と反政府軍との内戦がはじまる。戦いは一気に拡大し、政府軍は反政府軍が拠点としているアレッポを無差別に空爆する。さらに、ISISが参入してきたことで混乱を極めていく。

バナは、激化していく戦いの中で、常に死の恐怖にさらされながら暮らすことになる。まだ幼い少女が、明日死んでいるかもしれない、という不安を常に抱えながら毎日を過ごす。その理不尽さをどう表現したらよいのだろう。

度重なる空爆は、街を破壊し、人びとの命を奪う。バナも、家族と暮らす家を破壊され、仲の良かった友だちを失う。絶望の中で、彼女はiPadを手に入れる。そして、Twitterを通じて自分が置かれている状況、自分の気持ち、アレッポの現実、平和を願う強い思いを全世界に発信し始める。

バナのツイートは、世界を動かす。彼女が発信するシリアの現状、『#standwithallepo』(がんばろうアレッポハッシュタグをつけたツイートが世界中に拡散する。7歳の少女の小さな声が世界を動かすのである。

本書は、トルコに脱出したバナが記したシリアの記録である。バナの言葉と母の手記によって構成されている。

バナの最初のツイートは、2016年9月24日に発信された。

 

それは、彼女の、いやシリア内戦で明日をも知れぬ恐怖の中にいるすべてのシリア国民の叫びだ。

はじめてのツイートについて、本書でバナはこう書いている。

ママに聞いてみたの。シリアやアレッポの外にいる人たちは、わたしたちに起こっていることを知っているのかなって。どうして人を殺すのをやめなさいって、誰も政府に言わないの?(「ツイッターで平和を叫んだ」p.159)

だから、バナはTwitterで世界中に発信することにした。「私やシリアの人たちは平和を望んでいるのよ」と。

彼女のこの問いかけにキチンと答えられる大人はどのくらいいるのだろうか。私は、彼女のこの言葉に打ちのめされた。私たちは、なぜ戦争をするのか。どんな理屈を並べてみても、戦争が人を殺すための手段であることはごまかしようがないのだ。結局、どんな理由であっても、最後は人を殺すために戦争が行われているのだ。

トルコに避難し、空爆の恐怖に怯えることのない生活を取り戻したバナは、8歳の誕生日を迎える。彼女は、誕生日にひとつ願い事をすることにした。学校に行きたい、妹が欲しい、アレッポに帰りたい。いろいろと考えた末に、バナは一番の願い事を決めた。

シリアや、戦争が起こっている国がすべて平和になりますように。

彼女の願いが叶えるために、私たち大人が出来ることを少しずつやっていかなければならない。

バナ・アベドTwitterアカウント(2018/1/11時点でのフォロワー数:356,750)

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