タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「せんそうがやってきた日」ニコラ・デイビス作、レベッカ・コップ絵/長友恵子訳/すずき出版-ある日突然戦争はやってくる。そして、すべてを奪い去る。家族も居場所も。

 

 

家族が食卓を囲む平和な日常。いつまでも続くと思っていた平和な日々。だが、戦争はある日突然にやってくる。

「せんそうがやってきた日」は、家族4人が朝の食卓を囲む平和な場面から始まる。お父さんは弟に子守唄を歌い、お母さんは朝ごはんを作って私にキスをして学校へと送り出してくれる。ランチタイムのすぐあとに戦争がやってくるまでは、平和な時間があった。

いまも世界のどこかで戦争が起きている。そして、罪もない命が無差別に奪われ、何もかもが破壊されていく。生き延びた人たちは戦争から逃れ難民となる。祖国を離れ、他の国で暮らさなければならなくなる。だが、難民を温かく受け入れてくれる国ばかりではないし、優しい人ばかりではない。一時的な滞在は認めても定住することは認めない国もある。

作者のニコラ・デイビスはあとがきの中で、世界には2250万人の難民がいること、その半分以上が子どもであること、2016年の春にイギリス政府が3000人の孤児の難民の受け入れを拒否したことを書いている。また、座る椅子がないという理由で難民の女の子が学校への入学を拒否されたことも記している。本書は、そうした出来事をきっかけにして生まれた。

ランチタイムのすぐあとにやってきた戦争によって家族と祖国を奪われた少女は、難民となって逃げていく。少女にはもう居場所がない。学ぶための椅子すらない。だけど、そんな少女に優しく手を差し伸べてくれる人もいる。将来への希望を与えてくれる人がたくさんいる。戦争はすべてを奪うし、すべての人が優しいわけではないけれど、きっと誰かが少女を支えてくれる。だから、希望を失ってはいけないのだと語りかけてくる。いつの日か少女が新しい人生を歩み、祖国に戻って幸せをつかむ未来がくると信じたい。

本書の元となった詩と誰も座っていない椅子の絵がガーディアン紙のウェブサイトに掲載されると、その内容は多くの反響を呼び、ハッシュタグ「#3000chairs」をつけたツイートが数多く投稿されたという。今でもツイートされ続けている。

戦争反対を叫んでも簡単に戦争は止まらない。その叫びを、無意味な叫びだと言う人がいるかもしれない。だけど、無意味だからと諦めてしまってはいけないのだと言いたい。私たちは、世界中で起きている戦争に反対を叫び続け、平和であることの尊さを叫び続けていかないといけない。平和であることを長く続けることの難しさをあらためて考え、これからも平和を続けていけるように考えていかなければいけない。それが世界中に広がってほしい。

希望に満ちあふれた未来のために、子どもたちの将来のために、戦争を押し返していかなければならない。