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「放課後にシスター」中島さなえ/祥伝社-星海女学院の生徒たちに代々語り継がれる『シスター峰事件』とは?

 

 

中学生、高校生くらいの頃、学校に代々語り継がれてきた噂話があったという人は多いだろうか。夜中になると自殺した生徒の霊が出るといった怪談話もあれば、◯◯年の卒業生が在学中に先生と駆け落ちしたみたいな話もあるかもしれない。

「放課後にシスター」は、とあるミッション系の中高一貫女学校に代々受け継がれている『シスター峰』に関わる噂話の真相を探ろうとする物語だ。

星海女学院には30年以上にわたって語り継がれてきた噂話がある。それは、ひとりのシスターが突然に姿を消したという話だ。『シスター峰事件』と呼ばれる噂話は、代々で微妙に変化しながら受け継がれて、それぞれのストーリーができあがっている。真相ははっきりしていない。本書では、その噂話の真相を探ろうとする高校生たちが主人公となる。

『シスター峰事件』は、この学院に通う卒業生、在校生の間では知らぬもののない話だ。しかし、その真相は完全に藪の中であり、根も葉もない噂話としてそれぞれが好き勝手に話を作っているのが現状である。

かつて、この学院に在学していた『わたし』は、教師として再び学院に戻ることになる。そして、感謝祭前のあの日に先輩や後輩、友達と交わした『シスター峰の失踪事件にまつわる謎解き』のことを思い出す。好き勝手な噂話ばかりが飛び交うシスター峰の失踪だったが、わたしたちは次第にその真相に近づいていく。古い卒業アルバムで顔を黒く塗りつぶされていたシスター峰。なぜか歌われなくなったシスター峰の作った讃美歌。修道院の中で封印された部屋として存在していたシスター峰の居室とそこに残されていた謎のメモ。伊豆にある系列校の学院長がシスター峰の失踪について何かを知っているという話。そういった断片を少しずつ積み重ねて、わたしたちはシスター峰の事件の真相に行きあたる。

女子校というある種の閉鎖空間では様々な噂話が飛び交い、様々な解釈が飛び交う。そういう空気感が本書から感じられる。

シスター峰の存在そのものは、最後まで本書は明らかにしない。噂話から始まって、ある真相に行きつくまで、シスター峰の存在は誰かの口伝でのみ語られる対象でしかない。肝心の登場人物を実体として最後まで作中に登場させず、他の登場人物の証言でのみ浮き上がらせるという趣向の作品となっている。

シスター峰の存在は、物語のアクセントでしかなく、それほど重要なポジションではない。シスター峰を巡って繰り広げられる少女たちの言動や行動、それを後押しする好奇心、そして思春期特有の焦燥感が本書のポイントなのだと思う。

 

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