1945年8月6日に広島に落とされた原子爆弾は、一瞬にして十数万人にも及ぶ犠牲者を出した。そして、3日後の8月9日には長崎に2発目の原子爆弾が投下された。
本書は、長崎医科大学(現在の長崎大学医学部)の助教授として勤務していた永井隆医学博士が書き記した長崎の原爆被害の記録である。原爆投下直前の8月9日の長崎医科大学の様子から始まる記録は、戦時下の混乱の中、いつもと変わらぬ1日を始めていた人々の生活が、原子爆弾の炸裂により一変する様を淡々した描写で記していく。
続きを読む外国の本っておもしろい! ~子どもの作文から生まれた翻訳書ガイドブック~
子どもの頃から本を読むのが好きでした。誕生日やクリスマスのプレゼントには本を買ってもらうような子どもでしたね。それがそのまま大人になっておじさんになっても続いているのですから、本を読む楽しさというのがどれほど普遍的なものなのか実感しています。
ただ、本を読むのは好きですが、どうにも苦手だったものがあります。夏休みの読書感想文です。今でこそこうして稚拙な文章を“レビュー”などと称して書き綴っては書評サイトやブログにアップして悦に入っていますが、子どもの頃は読書感想文を書くのが苦手で、毎年夏休みの終わり近くになってウンウンと唸りながら原稿用紙に向かっていたのを思い出します。
なぜ、読書感想文があんなに苦手だったのだろう。その答えが、本書「外国の本っておもしろい!」に掲載されている子どもたちの読書作文を読んでわかりました。
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エドワード・ケアリーという作家のすごさを知ったのは、「アイアマンガー3部作」の第1作「堆塵館」だった。
ゴミの山の中に建つ「堆塵館」とよばれる屋敷を舞台にした物語は、発想の奇抜さも、ストーリー展開の巧みさも、キャラクターの造形も、すべてが魅力的で、読んでいて時間を忘れさせてくれる作品だった。その終わり方も衝撃的で「堆塵館」を読んだすべての人が「ここで終わるのか!」と驚愕し、第2作となる「穢れの町」の刊行を待ち焦がれることになった。まさか「穢れの町」のラストで同じ驚愕を味わうことになるとは知る由もなく...
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物語の主人公はルーシーバートン。作家。これは、彼女が入院していたときの、5日間の話。彼女と彼女の母がはじめて心を通わせた5日間の物語。
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松浦理英子が描く愛の形は、いつもどこかいびつで不穏な空気をまとっているように思う。映画化もされた「ナチュラル・ウーマン」は、女性同士の恋愛を赤裸々に描いた小説だし、「犬身」は愛する人の『犬になりたい』と願った主人公が本当に犬になって愛する人に飼われる物語だった。また、「親指Pの修行時代」では、ある日突然足の親指がペニスになってしまった主人公の悲哀をユーモラスに描き出していた。
最新作「最愛の子ども」は、前作「奇貨」からおよそ4年ぶりに発表された作品である。舞台となるのは玉藻学園という私立の中高一貫校。男女共学の学校だが、男子クラスと女子クラスに分かれていて、その女子クラスの生徒たちが主役だ。
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人間とは悩む生き物だ。人間関係の悩み、仕事の悩み、恋愛の悩み、病気の悩み、お金の悩み。悩みの種は尽きることがない。
何かに悩んだ時、それを解決してくれる何かにすがりつきたくなる。俗世を離れた遠い場所へ旅したり、セラピストのもとへ通って精神の安定を求めたり、街の占い師の言葉に救いを求めたりする。そんな〈救済〉のひとつに、『本を読んで現実の世界を離れる』という行為もあるのではないか。
「文学効能事典」は、サブタイトルに『あなたの悩みに効く小説』とあるように、様々な人生の悩みを解決する手助けとなる小説を紹介するガイドブックだ。
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