外国の本っておもしろい! ~子どもの作文から生まれた翻訳書ガイドブック~
- 作者: 読書探偵作文コンクール事務局,越前敏弥宮坂宏美ないとうふみこ竹富博子田中亜希子
- 出版社/メーカー: サウザンブックス社
- 発売日: 2017/08/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
子どもの頃から本を読むのが好きでした。誕生日やクリスマスのプレゼントには本を買ってもらうような子どもでしたね。それがそのまま大人になっておじさんになっても続いているのですから、本を読む楽しさというのがどれほど普遍的なものなのか実感しています。
ただ、本を読むのは好きですが、どうにも苦手だったものがあります。夏休みの読書感想文です。今でこそこうして稚拙な文章を“レビュー”などと称して書き綴っては書評サイトやブログにアップして悦に入っていますが、子どもの頃は読書感想文を書くのが苦手で、毎年夏休みの終わり近くになってウンウンと唸りながら原稿用紙に向かっていたのを思い出します。
なぜ、読書感想文があんなに苦手だったのだろう。その答えが、本書「外国の本っておもしろい!」に掲載されている子どもたちの読書作文を読んでわかりました。
「外国の本っておもしろい!」は、2010年から毎年行われている『読書探偵作文コンクール』で最優秀賞や優秀賞に選ばれた子どもたちの読書感想文を集めた本です。クラウドファンディングで出版のための資金を調達し、サウザンブックスから刊行されました。私も出資させていただき、こうして出版された本を手にしています。
『読書探偵作文コンクール』は、翻訳ミステリーに関する様々な話題を提供する「翻訳ミステリー大賞シンジケート」のサイト内企画として始まりました。
現在は、読書探偵作文コンクール事務局がコンクールを運営していて公式サイトも立ち上がっています。
学校の読書感想文と違って、コンクールに寄せられる子どもたちの作文は、実にバラエティ豊かです。本書には、過去7回分のコンクール受賞作品の中から選りすぐりの作文が掲載されているのですが、その内容には本当に驚かされます。表現力が豊かで、文章が生き生きとしている。作文全体の構成が見事で、まるでプロの書評家のようにまとまった評論として成立している。そんな作文が次々と登場するのです。
子どもらしい文章で綴られた作文もあります。そこには、面白い本を読んだ嬉しさが溢れているように感じられます。
作文だけでは満足できなかったのでしょうか。自分なりに作品の要点を整理した小冊子を作ってみたり、壁新聞を作った子もいます。
中には、作品に触発されて自分で物語を作ってしまった子もいるのです。しかも、その物語が、これまた驚くほど面白い。この子はもしかしたら何年後かに作家として世に現れてくるのではないかと期待が膨らみます。
私は、『読書感想文が苦手だった答えが、この本を読んでわかった』と書きました。その答えとは、《本を楽しむ》ということ、そして《楽しさを伝える》ということの面白さや嬉しさがわかっていなかったから、ということです。
本書に掲載されている子どもたちの作文には、《本を読む楽しさ》と《その楽しさを誰かに伝えたいという気持ち》が溢れていると思います。本を読むこと、その本の世界に没頭することを自分が誰よりも楽しんだからこそ、その面白さをみんなに教えてあげたいと思う。その気持ちが、大切なんだなと改めて考えました。
子どもたちの素直さに教えられた1冊でした。
【追記】
クラウドファンディングで本書の出版プロジェクトを支援した方々には、越前敏弥先生が新訳したエドガー・アラン・ポー「盗まれた手紙」が特別付録としてプレゼントされました。実はポー初読みでしたが(「モルグ街の殺人」も読んでません(笑))、この作品も大変面白かったです。