ガタガタ書評ブログ

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フランチェスカ・リア・ブロック/金原瑞人訳「“少女神”第9号」(筑摩書房)−なぜ今までこの作家の作品を読んでこなかったのか!と遅まきながらリア・ブロックの魅力にハマっている。

 

なぜ今までこの作家の作品を読んでこなかったのか!

10月のやまねこ翻訳クラブの創設20周年記念イベントで紹介されていたフランチェスカ・リア・ブロック。先日は〈本が好き!〉の「祝! #やまねこ20周年 記念読書会」に合わせて、「ひかりのあめ」(金原瑞人、田中亜希子(やまねこメンバー)共訳)を読み、リア・ブロックという作家の存在と作品の面白さを知ることができた訳だが、今回「“少女神”第9号」を読んで、さらにその思いを深くし、冒頭の叫びへと繋がるわけである。

s-taka130922.hatenablog.com

 

 

“少女神”第9号」は、表題作を含む9作品が収録された短編集である。すべての作品でティーンエイジャー(主に少女)が主人公となっていて、彼女たちが経験する様々な出来事が描かれている。

表題作「“少女神”第9号」は、ニック・エイガットというアーティストに魅せられ、『少女神』という同人誌を創刊したふたりの少女エミリーとアンナが主人公。『少女神』の第9号に掲載した創刊のいきさつを中心に、彼女たちがニックに夢中になっている様子を描き出す。

9作の中で一番印象深いのは「マンハッタンのドラゴン」のドラゴンだ。イジーとアナスターシャのふたりの母親とマンハッタンで暮らしているタック・バッドは、父親を探してひとり家を出る。手がかりは偶然にみつけた絵葉書。そこには、『1981年にサンフランシスコのピンク・ジンジャーブレッド・ホテルで妊娠』と記されていた。タックは、ひとり飛行機に乗って西海岸を目指す。そして、ひとつずつ父親の足跡を辿っていく。

その他、「トゥイーティースイートピー」、「ブルー」、「レイヴ」、「キャニオン」、「ピクシーとポニー」、「ウィニーとカビー」、「オルフェウス」と7つの短編が収録されている。

本書はヤングアダルト(YA)にジャンルされる小説だ。読者層は、まさに本書に登場する少女たちと同世代のティーンエイジャーである。収録された各短編に描かれているのは、ティーンの少女たちのキラキラした日常、なんかじゃない。LGBTの問題、家族の自殺と残された者たちの再生、ドラッグとセックスに溺れる少女たちの退廃、そうした穏やかではない日常がストレートに、それでいて優しい視点で描かれているのだ。そこには、ティーンエイジャーたちが直面していることを正しいみつめて描くことで、彼女たちに対する悪意や偏見から救いたいというリア・ブロックの意志のようなものも感じられる気がする。

YA小説は、これまであまり積極的には読んでこなかった。なんとなく自分の読書傾向とは合わないだろうと勝手に考えていた。だが、フランチェスカ・リア・ブロックの作品(本書と「ひかりのあめ」)を読んで、少し自分なりにYAへの認識が変わってきたように思う。他のYA作家の作品はわからないが、リア・ブロックの作品は、YAというジャンルの世界観を築いた上で、社会的な現実を取り入れた読み応えのある作品になっている。「“少女神”第9号」も、読み進めていく内にドンドンと引き込まれ、同時にいろいろなことを考えさせられた。

「ひかりのあめ」、「“少女神”第9号」とフランチェスカ・リア・ブロック作品を読み、すっかり魅了されたことで、私のYAに対する認識は変わった。そして、冒頭に記した「なぜ今までこの作家の作品を読んでこなかったのか!」という思いにかられたのである。

現在リア・ブロックの作品で書店で入手できそうな作品は本書のみとなっている。それも版元ではすでに品切れ状態らしいので、書店の店頭に並んでいるのが最後となる。なので、残念ながら他のリア・ブロック作品は図書館で借りるしか読むことができない。これだけの作品が入手できないのはもったいない。紙の本が難しいなら電子書籍でもいいので復刊してほしいと思う。

ところで、本書は本文ページが4色で構成された特長的なつくりになっている。ただ、色分けに意味はないようだ。というのも、例えば登場人物によってとか、会話と地の文でとか、そういう意図的な色分けになっているのでなく、単純にまとまったページ単位で色分けされているからだ。訳者あとがきにも解説にも色分けに関するコメントは特にない。気になったので図書館から理論社刊の単行本を借りて確認してみた。あたりまえだけど同じ色分けだった。原書でも色分けされているのだろうか。