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ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

【書評】リービ英雄他「コレクション戦争と文学~崩~9・11変容する戦争」(集英社)-9.11テロ以後の変容した戦争を描くアンソロジー

シリーズ 戦後70年 書評

2001年9月11日、イスラム過激派の青年たちにハイジャックされた4機の航空機のうち3機がそれぞれ、ニューヨークのワールドトレードセンター北棟と南棟、ペンタゴンに激突した(1機は墜落)アメリカ同時多発テロ以降、戦争の形態は大きく様変わりした。

本書は、2010年に集英社から刊行された文学全集「戦争と文学」シリーズの第3回配本として上梓された。

 

本書には、9.11前後のテロとの戦争や各地で勃発した民族紛争を題材にした作品が収録されている。巻頭に収録されているリービ英雄「千々に砕けて」では、日本からアメリカへ向かう途中のカナダで同時多発テロの発生を知り、カナダ国内に足止めされることになった主人公を描いている。また、直接的にテロやイラク戦争を描いている作品以外にも、重松清「ナイフ」のように主旋律ではなく脇役的に扱われている場合もあって、戦争自体を直接的に扱うのではなく、間接的に、あるいはうっすらと影を感じる程度に登場させることで、逆にメインストーリーでの主人公たちの行動に影を落とすような効果を生み出しているケースもある。

9.11テロは、CNNなどの海外メディアによって配信された映像が世界中で人々に驚愕と恐怖を与えた。中でもワールドトレードセンタービルが崩壊していく映像は衝撃敵だった。その後、アメリカはテロとの戦いを宣言し、アフガニスタンに潜伏しているとみられるアル・カイダのリーダーであるオサマ・ビンラディンの行方を追うとともに、大量破壊兵器を保有しているとの未確認情報に基づいてイラク戦争を仕掛け、フセイン大統領を拘束し死刑にした。

9.11以降現在に至るも継続している対テロの戦いは、しかしながら我々日本人にとって(私にとって)、遠い存在でしかない。「戦争と文学」シリーズでは、他に「アジア太平洋戦争」、「ヒロシマナガサキ」を読んだのだが、その2冊に比べて、本書に描かれる戦いは、身に迫ってくる感覚がほとんどなかった。それはやはり、同時多発テロイラク戦争、アフガン戦争といった事柄が日本人である私にとっては遠い出来事であることに起因するのだと思う。

1991年の湾岸戦争以降、今日までに起きた様々な紛争、戦争はすべてテレビの中で起きた出来事という感覚がある。まるで、テレビゲームのように映し出される戦争の映像は、間違いなくリアルであるはずなのにリアリティには程遠い。それを日本人の平和ボケと一蹴してしまうことは簡単なのかもしれないが、どこか割り切れない思いを抱いた。