ガタガタ書評ブログ

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家族の食卓というものは、その家庭の真の姿を映しているのだなと認識させられる-岩村暢子「家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇」

子供に正しい食の知識を教えようという「食育」の重要性が云われるようになって随分と経ったように思います。季節ごとの食材について知り、旬の時季に美味しく調理した料理を正しくいただく。和食が世界無形文化遺産に登録され、日本の食文化が世界に広くアピールされる時代に、「食育」の重要性はますます高くなっています。

家族の勝手でしょ!―写真274枚で見る食卓の喜劇 (新潮文庫)

家族の勝手でしょ!―写真274枚で見る食卓の喜劇 (新潮文庫)

 

岩村暢子「家族の勝手でしょ!」は、著者が所属する団体が実施している「食DRIVE」と呼ばれる家庭の食卓に関する調査の結果をまとめたものです。その調査結果から、現代の家庭における食の実態が明らかになっていきます。

調査は、被験家庭における1週間の朝食、昼食、夕食の記録を取るというものです。調査は、まず家庭での食に関するアンケートを行い、次に実際の食事の写真とその内容に対するコメントを記録してもらいます。写真は、撮影者が加工できないように、使い捨てカメラを渡して撮影してもらうとのこと。そして、最後に、最初のアンケートと実際の食事の写真とを比較して矛盾する点を細かくヒアリングして行くのです。

本書によれば、被験者は、最初に記入するアンケートには、自分が家族の食事に気を使っていて、バランスの取れた食事を手作りして食卓に並べていることをアピールしますが、実際に撮影された食事の内容は、そのアンケートとは似ても似つかない現実を露呈してしまうことが多いとのこと。まさに、家庭における「食育」の理想と現実が赤裸々にされてしまっているのです。

本書に掲載されている274枚の食卓は、極端な事例なのだろうでしょうか。著者は、自分たちの調査方法(1週間の調査期間を設ける。最終日が休日にかからないようにするなど)は、真実をあぶりだしている、といいます。どんな家庭でも、がんばれるのは最初の3日間程度なので、1週間の調査期間を設定すると必ず後半は手を抜きたくなりますし、最終日が平日になっていると、安易に外食などに逃避できなくなるので、何らかの形で家庭で食事を準備しなければならなくなるのです。

とにかく、驚きの連続です。野菜が少ない、出来合いのお惣菜や冷凍食品が多い、家族それぞれが好きなものしか食卓に並ばない。そういう状況は、ある意味納得できたりもします。しかし、子供にご飯を食べさせない親がいるというのは驚きでした。「食べさせない」というのは、虐待という意味ではありません。生活リズムが不規則とか、子供が嫌がる(食べてくれない)という理由で、普通の食事(ご飯、汁物、おかず)ではなく、スナック菓子やカップめんなどを中途半端な時間に食べさせ、結果として食事の時間になっても、子供がお腹いっぱいでご飯を食べられない。だから、まともな食事をわざわざ準備しない、というスパイラルになっているのです。

このような食卓の風景は、調査をはじめた1990年代後半から見られるそうです。そして、毎年確実に増加しているのだそうです。確かに親からしたら、嫌がる子供に無理やり嫌いな野菜やおかずを食べさせる努力をしてストレスをためるよりは、喜んで食べてくれるものを与えて平和に食事をしてくれるほうが助かるのかもしれません。しかし、そういう食習慣を続けて、将来困るのはその子供たちなのです。

最近の親は、子供に我慢をさせるとか、マナーや礼儀を躾けるということを面倒に思っているのでしょうか。そう言われてみれば、レストランや電車、バスなどの公共の場所で傍若無人に振舞う子供とそれを放置して叱ることをしない親を頻繁に見かけることが多くなったような気もします。

農林水産省やら文部科学省やらのお偉いさんたちが、「食育食育」と口角泡を飛ばして訴え、学校給食などでバランスの取れた食事を子供たちに提供するようにするのは、正しい取り組みだと思います。でも、本当に大切なのは家庭での食育なのだということを、この本を読んで再認識させられました。今、小さい子供を育てているお父さんやお母さんにも読んで欲しい1冊です。