タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

本を読む楽しさをもう一度考えてみたくなる-玉川重機「草子ブックガイド(1)」

長いこと読書を習慣にしてくると、いつの間にか機械的に本を読んで、数をこなしていくことに重きを置くような読み方をするようになってしまった感じがしてくる。いつの間にか、読書を楽しむということを忘れてしまったのではないか。

草子ブックガイド(1) (モーニング KC)

草子ブックガイド(1) (モーニング KC)

 
草子ブックガイド(1)

草子ブックガイド(1)

 

玉川重機「草子ブックガイド」は、そんなことに気づかされる1冊である。

中学生の草子は友達もなく無口でおとなしい少女。唯一の楽しみは読書で、時間を忘れて没頭し、物語の世界に入っていける。

両親が離婚し、売れない画家の父と暮らす草子にはお金がないので、街にある古本屋「青永遠屋」の棚からそっと読みたい本を抜き取り、読み終わると元に戻すことを繰り返していた。青永遠屋の老主人はそんな草子の行為を知っていたが、彼女が本を返すときに本の間にひっそりと挟むあるものを楽しみにその行為を黙認していた。老主人が楽しみにしているものは草子が記したその本の感想。つまり草子のブックガイドである。

草子のブックガイドには、草子がその本を読んで感じた様々な思いが丁寧に綴られている。そこには、読書を心の底から楽しみ、本の世界にダイブし身をゆだねる楽しみが溢れている。草子は、青永遠屋の老主人から店を手伝い、好きな本を読んでいい代わりにブックガイドを必ず書くことを約束する。

本好きの少女草子を中心に、本の世界に魅了され、その魅力をどうにか周囲に伝えたい、あるいはその本の良さをわかってもらいたいと考える人々が集う物語。学校の図書館で生徒たちに読書の素晴らしさを教え、学校教育にもっと図書館を活用してほしいと考えている若き司書教師がいれば、西行に魅了され、その生きざまに憧れ、その著作を読み関連書を読むうちにいつしか本の魅力につかれて青永遠屋で働くようになった若者がいる。気持ちの幅は様々であっても、本が好きという基本は彼らに共通だ。

本を読む楽しさ。それを今一度思い起こしながら次の1冊を読んでみたいと思った。