タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

ジーン・ウェインガーデン・文、ミカエル・S・ウィリアムソン・写真/山本やよい訳「OLD DOGS~愛しき老犬たちとの日々」(原書房)-出会いのあの日から、いつも、ずっと、君はそばにいて、変わらぬ優しい目で僕を見つめる

 

「OLD DOGS~愛しき老犬たちとの日々」は、そのタイトルにある通り老犬のみが紹介されている写真エッセイ集である。その冒頭には、こんな一文が掲載されている。

本書は老犬たちへの賛辞であり、
そのすばらしい徳を称えるものである。
登場する犬はすべて、写真を撮影した時点で、
少なくとも10歳を超えていた。
このなかで現在も生きているのはどの犬かとお尋ねなら、
われわれはこう答えよう。
みんな、ちゃんと生きている、と。
老犬よ、永遠なれ。

この本には、64匹の犬の写真と彼らのエピソードが紹介されている。そのすべてが、10歳以上のいわゆる〈老犬〉である。

序章「ハリーの思い出」に記されたハリーは、この本の著者ジーン・ウェインガーデンの飼い犬である。オスのリトリーバー犬で13歳まで生きた。

晩年のあるエピソードが微笑ましい。年をとって足もおぼつかなくなったハリーの散歩は、排泄という義務を果たすためだけのことになっていた。若い頃には興奮してはしゃぎまわっていたのに、今では周りの他の犬たちや行き交う人たちには関心を示さずトボトボと歩く。

そんなハリーだが、散歩の途中でハニーに会う時はシャキッとした。ハニーは、ハリーより年下のメスのピット・ブルだ。ハニーとハリーの様子についてはこう書かれている。

ところが、散歩の途中でハニーに会うと、ハリーはとたんにシャキッとする。ハニーはハリーより5歳若くて、はるかに元気だが、ハリーのことが好きで、一緒に歩くときは歩調をそろえてくれる。2匹で何ブロックか歩いていく。視線を前方に据え、おたがいに無関心な様子だが、一緒にいるだけで満足している。

 

年をとっても大好きな女の子の前では颯爽とした姿をみせようとするハリーとそんなハリーに合わせて歩くハニーの姿。なんと可愛らしいことか。

ハリーとハニーのエピソードのように老犬を飼っている方なら、きっと共感できるエピソードが他にもたくさん載っている。そこには、犬を飼うことの楽しみがすべて記されていると思う。

我が家にも1匹の老犬がいる。16歳になるメスのビーグルだ。本書のレビューの最後に、我が愛すべき老犬への手紙を記します。

 

気がつけばもう16年。今年の夏がくれば17歳になるんだね。そのことに驚いているよ。
てのひらに乗るくらい小さくて、コロコロと転がるように僕の後ろを追いかけていたのが、つい昨日のように思い出されます。
今は、顔もすっかり白っぽくなって、いつも気怠そうに眠っていることが多いけど、ベッドやソファにピョンと軽快に飛び乗るし、階段だって自分の足で上がれる。元気なおばあちゃんになったね。

きみと一緒に生まれた他の子犬たちは、もうみんな死んでしまったそうです。きみが一番の長生きなんだよ。そのことは自慢していいと思う。
16歳は人間の年齢でいうと80歳くらいになるんだって、じゃあ夏がきて17歳になったら? きっと90歳くらいになるんだろうね。

人間の世界では、100歳を過ぎてなお、元気に日々を過ごしているおじいさんやおばあさんが6万7千人もいるんだって。きみも人間の年齢で100歳以上、18歳、19歳、いやいや20歳まで生きてくれないかな。
きみが、これからも元気でいつまでも長生きしてくれることを、僕は心から願っています。

また明日も散歩に行こうね!