ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

A・ボグダーノフ、E・ゾズーリャ他/西周成編訳「ロシアSF短編集」(アルトアーツ)-1800年代から1900年前後のロシアSF短編を集めたアンソロジー。ディストピア物から宇宙物まで、意外に王道のSF作品なれど、ロシアらしさも感じられます。

ロシアSF短編集

ロシアSF短編集

  • 作者: アレクサンドル・ボグダーノフ,エフィム・ゾズーリャ,アレクサンドル・クプリーン,ウラジーミル・オドエフスキー,セルゲイ・ステーチキン,西 周成
  • 出版社/メーカー: 合同会社アルトアーツ
  • 発売日: 2016/11/09
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
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ロシアSF短編集

ロシアSF短編集

  • 作者: アレクサンドル・ボグダーノフ,エフィム・ゾズーリャ,ウラジーミル・オドエフスキー,アレクサンドル・クプリーン,セルゲイ・ステーチキン
  • 出版社/メーカー: アルトアーツ
  • 発売日: 2016/11/26
  • メディア: Kindle
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ロシアの小説というと、トルストイドストエフスキーのように重厚で長大な堅苦しいイメージがあって、それが苦手で読まず嫌いな人も多いと思う。だけど、ユーモラスな作品も多いし、読みやすい作品も多いから、実際に読んでみれば結構面白く読めたりする。ブルガーコフとか。

それでも、『SF作品』となるとあまりピンとこない。ロシアのSF作家といわれて名前があげられる作家も浮かばない。ちなみに、「ソラリス」で有名なSF作家スタニスワフ・レムは、ポーランドの作家であって、ロシア人SF作家ではない。

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温又柔「真ん中の子どもたち」(集英社)-自らの立ち位置(アイデンティティ)を見つめ直すための作品

温 又柔 集英社 2017-07-26
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by ヨメレバ

 

言葉をあまり意識して使ったことがない。私にとって言葉は当たり前のようにそこにあって、無意識に使うものであり意識的に使うものではないからだ。

温又柔「真ん中の子どもたち」には、3人の人物が登場する。主人公であり物語の語り部〈私〉である天原琴子。上海に短期語学留学した琴子と同室になった呉華玲。華玲と同じクラスで学ぶ龍舜哉。上海で中国語を学ぶ3人には、それぞれに台湾、中国の血が流れている。

琴子には、日本人の父と台湾人の母がある。
華玲には、台湾人の父と日本人の母がある。
舜哉の両親はふたりとも中国人だが帰化して日本国籍を有している。

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温又柔「台湾生まれ日本語育ち」(白水社)-家族への愛、台湾への愛、そして日本語への愛。この本には、温又柔さんのたくさんの愛がこめられている

台湾生まれ 日本語育ち

台湾生まれ 日本語育ち

 

 

温又柔さんが登壇する書店イベントに参加したことがあります。5月末に青山ブックセンター本店で開催された「たべるのがおそいvol.3刊行記念トークイベント」でした。

登壇者は温さんの他、作家・翻訳家で「たべおそ」の編集責任者である西崎憲さん、作家の星野智幸さんのお二人でした。

そのイベントで見た温又柔さんの姿は、私に“温又柔”という作家の存在を強く印象づけました。イベントから帰宅後の私はこんなツイートをしています。

 

よく話し、よく笑い、相手の話には「うんうん」と頷きながら聴き入る。本当に文学について話すことが好きな人、それが私から見た温又柔さんという作家の印象でした。

どうして温さんは、そんなに文学が好きなのだろう?
その答えが、本書「台湾生まれ日本語育ち」を読んでわかったような気がします。

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「草獅子vol.1~特集:終末、あるいは始まりとしてのカフカ」(双子のライオン堂)-〈双子のライオン堂〉は東京・赤坂にある本屋さん。その〈双子のライオン堂〉から発刊された文芸誌の創刊号です

草獅子 vol.1(2016)―文学のたのしみを身近に 特集:カフカ

草獅子 vol.1(2016)―文学のたのしみを身近に 特集:カフカ

 

 

東京メトロ赤坂駅から、道順を知っていれば歩いて数分のところに一軒のこじんまりとした本屋さんがあります。

店の名前は〈双子のライオン堂〉といいます。

liondo.jp

本の表紙を模したデザインの扉を開けて店内に入るというスタイルは、まさに「本の扉を開けて、本の世界へと足を踏み入れる」という本好きの心を惹きつけます。“本の世界”に入るときは土足厳禁!ということなのでしょうか。店内には靴を脱いで上がります。

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レーモン・ルーセル✕坂口恭平/國分俊宏訳「抄訳アフリカの印象」(伽鹿舎)-言葉遊びから生まれる創造力とドローイングというイマジネーション!本の世界に没入する贅沢を味わえる一冊

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本を読む贅沢とはなにか?

本を読むことは、私にとっては最高の贅沢だ。物語の世界に没頭し時間の経過を忘れる。ときに物語の世界で迷子になったとしても、自分なりの解釈でページという道なき道を進み、微かに感じられる著者の残した気配を道標として歩みを進める。すると突然目の前に見たことのない景色がパァッと広がる。その瞬間、今まで世界を覆っていた靄がスーッと消えていき、物語のすべてが姿をあらわす。その瞬間を味わうために、私は時間を忘れ、俗世のすべてを忘れる。

これ以上の贅沢があるだろうか?

レーモン・ルーセル「抄訳アフリカの印象」を読むことは、私にとって最高の贅沢だった。

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おざわゆき「あとかたの街(全5巻)」(講談社)-戦争末期、日本全土を火の海にした米軍の空襲で名古屋の街も灰燼と化した。これは、名古屋大空襲を生き抜いた著者の母の記録です。

あとかたの街 コミック 1-5巻セット (KCデラックス BE LOVE)

あとかたの街 コミック 1-5巻セット (KCデラックス BE LOVE)

 

 

太平洋戦争末期になると、日本本土への米軍による空襲が本格化する。当初、軍需工場を攻撃対象とした空襲は次第に拡大し、民間人に対しても無差別爆撃が繰り返されるようになる。

太平洋戦争時の本土空襲というと、昭和20年3月10日未明の東京大空襲が思い起こされるが、空襲攻撃を受けたのは東京だけではない。北海道から九州まで、ほぼ日本全土が攻撃対象であり、横浜、大阪、神戸といった都市も東京同様に攻撃を受けた。

おざわゆき「あとかたの街(全5巻)」は、名古屋大空襲を中心に、戦争末期から戦後にかけて生き抜いた著者の母の体験を描く。本書および「凍りの掌」により第44回日本漫画家協会賞を受賞している。

s-taka130922.hatenablog.com

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沼田真佑「影裏」(文藝春秋)-第157回芥川賞受賞作。心を許した友、愛した人の記憶。何も見えていなかったことを知ったあの日の出来事

影裏 (文春e-book)

影裏 (文春e-book)

 
影裏 第157回芥川賞受賞

影裏 第157回芥川賞受賞

 

 

第157回芥川賞を受賞した沼田真佑「影裏」は、東北・岩手を舞台に東日本大震災前後の喪失を描いている。

主人公の「わたし」は、性同一性障害の恋人がいた過去があり、親会社からの異動で岩手にある今の会社に来た。そこで、日浅という同僚と知り合い友人となる。その日浅が、突然会社を辞めていき、いつしかその関係も疎遠となった頃に〈あの日〉が訪れる。どうにか生活に落ち着きが戻ってきた連休明けに、「わたし」は職場の西山さんから「日浅が震災で亡くなったらしい」と告げられる。「わたし」は、日浅の生死を確かめるために彼の実家を訪れ、そこで「わたし」には見せることのなかった日浅のもうひとつの顔を知ることになる。

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