タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「メアリ・ジキルと怪物淑女たちの欧州旅行Ⅰ ウィーン編」シオドラ・ゴス/原島文世訳/早川書房-ヴァン・ヘルシング教授により精神病院に監禁されたルシンダを救出するため〈アテナ・クラブ〉のメンバーはウィーンを目指す

 

 

メアリ・ジキル(父は「ジキルとハイド」のヘンリー・ジキル博士)、ダイアナ・ハイド(父は「ジキルとハイド」のエドワード・ハイド)、ベアトリーチェ・ラパチーニ(父は「ラパチーニの娘」のジャコモ・ラパチーニ)、キャサリン・モロー(父は「モロー博士の島」のモロー博士)、ジュスティーヌ・フランケンシュタイン(父は「フランケンシュタイン)のヴィクター・フランケンシュタイン)によって結成された〈アテナ・クラブ〉。本書は、〈アテナ・クラブ〉の冒険を描く「アテナ・クラブの驚くべき冒険」シリーズの第2弾「メアリ・ジキルと怪物淑女たちの欧州旅行」の前編となります。

前作「メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち」のラストで、かつてメアリの家庭教師をしていて、現在はウィーンに暮らすミナ・マリーからメアリ宛に届いた手紙。そこには、ルシンダ・ヴァン・ヘルシングからの救いを求める手紙が同封されていました。

ルシンダからの手紙を受け取った〈アテナ・クラブ〉のメンバーは、シャーロック・ホームズのサポートもあり、メアリとジュスティーヌがオリエント急行でウィーンを目指すことになります。ホームズは、かつて「ボヘミアの醜聞」事件で彼を唯一翻弄させたアイリーン・アドラー、現在はウィーンに暮らすアイリーン・ノートンにメアリたちのサポートも依頼してくれました。こうしてメアリたちは、ロンドンからヨーロッパへ冒険の舞台を移すことになります。

〈アテナ・クラブ〉に救いを求めるルシンダ・ヴァン・ヘルシングは、「ドラキュラ」で吸血鬼ドラキュラ伯爵と対決したエイブラハム・ヴァン・ヘルシング教授の娘。本書には、父のヴァン・ヘルシング教授も〈錬金術師協会〉内での“生物的変成特別変異”の実験を自由に行えるようにさせる野望を叶えるべく暗躍するマッド・サイエンティストとして登場します。ルシンダは、母とともに父の実験台にされ、ウィーンにある精神病院に隔離されているのです。

「メアリ・ジキルと怪物淑女たちの欧州旅行」の前編となる「ウィーン編」では、メアリたちがホームズが手配したオリエント急行でロンドンからウィーンに向かう道中と、ウィーンに到着し、アイリーンと彼女に仕える凄腕のメイドたちやジークムント・フロイト博士の協力を得て、ルシンダが監禁されているマリア=テレジア・クランケンハウスにダイアナを潜入させ、ルシンダを救出すべく立ち向かう姿が描かれます。

ダイアナの大胆な行動でルシンダを監禁場所から脱出させたメアリたちですが、謎の集団に襲撃されてしまいます。銃で撃たれても執拗に襲いかかってくる集団からどうにか逃れたメアリたちは、アイリーンの手配で〈錬金術師協会〉の会合が行われるブダペストに向けて旅立つことになります。

前作では、「ジキルとハイド」、「ラパチーニの娘」、「モロー博士の島」、「フランケンシュタイン」、「シャーロック・ホームズ」といった名作の登場人物が続々と出演してきましたが、第2弾となる本書では、「ドラキュラ」に登場するヴァン・ヘルシング教授やその娘のルシンダ、「シャーロック・ホームズ」シリーズに登場したアイリーン・アドラーが登場し、さらに精神分析医のジークムント・フロイト博士も登場するなど、豪華絢爛なメンバーの共演となっています。

ヴァン・ヘルシング教授が目論む野望とは何か。その野望を実現するために、彼は妻や娘にどのような人体実験を行っていたのか。メアリたちが監禁場所から救出したルシンダは、肉体的にも精神的にも衰弱し、意味不明なことを話すようになっています。これは、ヴァン・ヘルシング教授が行った実験の結果なのです。そして、そのすべての謎は後編の「ブダペスト編」で明らかとなるのです。

本書は、前作に引き続き作中人物のひとりであるキャサリン・モローが作家となって書いた作品という形になっています。前作同様、合間合間で〈アテナ・クラブ〉の他のメンバーたちからのツッコミや指摘が差し込まれ、さらにキャサリンがチョイチョイと前作の宣伝を入れてくるので、そこがちょうどいい感じのユーモラスさを醸し出してくれます。

ブダペストに向けてアイリーンのもとから出発したメアリ、ダイアナ、ジュスティーヌ、そしてルシンダ。彼女たちは無事にブダペストのミナ・マリーのもとに到着し、ヴァン・ヘルシング教授の野望を打ち破り、〈錬金術師協会〉の謎を解明することができるのでしょうか。続きは「メアリ・ジキルと怪物淑女たちの欧州旅行Ⅱ ブダペスト編」にて。早川書房の『新☆ハヤカワ・SF・シリーズ』から税込2,640円(電子版ならタイミングによりお得なキャンペーン価格もあります!)で購入できます! 前作「メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち」もぜひ!(と締めはキャサリンの宣伝告知風に)