タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「ロボット・イン・ザ・ホスピタル」デボラ・インストール/松原葉子訳/小学館-第1作は劇団四季が舞台化し日本で映画化もされたベストセラー。第5作となる本作でもチェンバース一家にはいろいろなことが起こります。

 

 

第1作「ロボット・イン・ザ・ガーデン」が劇団四季によってミュージカル化されたり、嵐の二宮和也さん主演で映画化(映画タイトルは「TANG タング」)もされるなどベストセラーとなっている超絶カワイイロボット“タング”とタングと暮らすチェンバース一家のドタバタを描くシリーズの最新第5作が出た。今回のタイトルは「ロボット・イン・ザ・ホスピタル」。病院を舞台にしたどんなドタバタが飛び出すのだろうか。

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パンデミックの影響によるさまざまな制約も解除されてきて、チェンバース一家には平穏な日常が流れていた。元気に小学校に通うタングも、ホームスクーリングで学ぶボニーも、ベンとエイミーにもいつもと変わらない日々があった。

ただ、平凡で平穏な日常の中にもなにかしらのトラブルはつきものだ。物語が始まって早々にベンは隣人のミスター・バークスの手伝いをしていてが膝を骨折し、1ヶ月の不自由な生活を送ることになる。その傷が癒えたかと思えば、タングの宿泊学習に付き添いで参加して今度は手に火傷を負ってしまうのだ。

ベンにとっては災難の連続だが、どちらの怪我も彼自身の不注意が原因なので、同情はするけども思わずハハッと苦笑いしてしまう。そして、チェンバース家には、ベンの怪我だけでなくいろいろとトラブルが起きる。期限ギリギリになって学校のイベントに着る衣装が必要だと言い出すタング(小学生くらいのお子さんをお持ちの家庭なら少なからず似たような経験をしているのでは?)や学校の宿題を「やりたくない」とゴネるタング(今頃我が子の夏休みの宿題の進み具合にヤキモキしている親御さんも多いだろう)に頭を抱えるベンとエイミー。ホームスクーリングをしているボニーも友だちのイアンとの関係になにかあったようなのだがなかなか心を開いてくれない。前作までのように突然ロボットが庭に出現したりするようなハプニングは起きないが、その分どの家庭でも起きているような、子どもを育てていると「そういうことあるよね~」と共感しまくりな出来事が次々と起きる。その点では、前作までと比べてよりチェンバース家を身近に感じられる作品になっているのではないだろうか。

タングやボニーの問題だけでなく、ベンの姉ブライオニーにもこれまでにない変化がある。もともと彼女自身が夫との関係や娘アナベルとボーイフレンドのフロリアン(彼は精巧に作られたアンドロイドだ)の関係、同性パートナーを持つ息子ジョージーのこと等等いろいろと頭の痛い問題を抱えながら、姉としてベンとその家族を叱咤し支える役割を担っていた。そのブライオニーが、本作では交通事故に遭い(事故に至る経緯にはボニーが参加したSTEMコンテストの発表会があり、そのことがボニーの心を傷つけてしまう)、それをきっかけに自分を見つめ直そうと足を踏み出すことになる。

そしてタングだ。学校の宿題を「やりたくない」と拒否するタングは、どうやら学校でも問題を起こしているらしい。ベンとエイミーは、小学校からの呼び出しを受け、校長のミセス・バーンズと担任のグレアム先生からある事実を伝えられる。それは、タングにとって名誉なことでもあり、しかしベンやエイミーにしてみれば不安もあることだった。

シリーズ作品を第5作まで読んできて思うのは、チェンバース家がけして特別な家族ではないということだ。そして、少し見方を変えることで、彼らが経験することは私たちにも当てはまるところがあるということだ。たとえばボニーのこと。学校生活に馴染めず自閉スペクトラム症であるボニーにベンもエイミーも当初は困惑していた。同じような子どもを持つ家族はこの世には数え切れないほどいるだろう。私には子どもがいないので想像でしか語ることができないから綺麗事になってしまうかもしれないが、ベンもエイミーも自閉スペクトラム症の娘との生活を通じて多くを学び経験していると思う。ときにはイライラして娘にあたってしまったり、言葉選びを間違えて娘を傷つけてしまうこともある。それでもふたりは娘を思い、彼女にとって一番と思える選択をする。まだまだ幼いボニーだが、今後このシリーズが書き続けられる中で成長し、なにかしらの変化があるかもしれない。それを見守ることも読者としては楽しみであり不安でもある。また、タングについても彼をロボットとして見れば特別な存在かもしれないが、ごく普通の人間の男の子と考えれば、その言動や成長は微笑ましくもあり腹立たしくもある。でも、子どもの成長を見守るというのは、その子どもの言動に一喜一憂することでもあり、着実に成長していく姿に安心するということでもあると思う。まさに読者はひとりの男の子の成長をベンやエイミーと一緒にハラハラドキドキワクワクしながら見守っているのだ。

この先タングもボニーもドンドンと成長して、やがて大人になっていくだろう。このシリーズがいつまで続くのかは作者以外に知るよしもないが、親戚の子ども成長を見守るおせっかいなオジサンのような気持ちで今後も新作をチェックしていきたいと思っている。おそらく1年後くらいに出るだろう第6作をワクワクした気分で待ちたいと思う。

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