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「Mリーグほぼ毎日4コマ①」藤島じゅん/竹書房-Mリーグにハマった著者がその魅力をたっぷりと伝えてくれる4コママンガの第1巻

 

 

問題。Jリーグはサッカー、Vリーグはバレーボール、Bリーグはバスケットボール、ではMリーグは?

答えは“麻雀”である。麻雀のプロリーグがMリーグだ。

本書はMリーグの魅力にすっかりハマってしまった著者が、週刊マンガ「近代麻雀」のWebサイト「キンマWeb」に連載する4コマ漫画をまとめたものである。

まず最初にMリーグについて説明しておきたい。2018年に発足したMリーグは、先述のとおり麻雀のプロリーグであり、2021-22シーズン時点では8チームで構成されている。(並びは2021-22シーズンの順位。カッコ内はチームオーナー企業名)

KADOKAWAサクラナイツ(KADOKAWA
セガサミーフェニックス(セガサミー
渋谷ABEMAS(サイバーエージェント
KONAMI麻雀格闘倶楽部KONAMI) ※格闘倶楽部=ファイトクラブ
U-NEXTパイレーツ(U-NEXT)
EX風林火山テレビ朝日
赤坂ドリブンズ(博報堂
TEAM雷電電通

各チームには4人の選手(規定により1名以上の女性選手が所属していなければいけない)で構成されていて、試合の着順と点数で決まるポイントの合計により順位を争う。10月からレギュラーシーズンが始まり各チーム90試合(麻雀用語でいうと90半荘)を戦って順位を決める。上位6チームがセミファイナルシリーズに進み各チーム16試合を行う。そこでポイントの上位4チームがファイナルシリーズ進出となり、12試合を戦って優勝チームを決定する。優勝チームには5000万円、2位には2000万円、3位には1000万円の賞金がでる。ちなみに2021-22シーズンの優勝は『KADOKAWAサクラナイツ』だった。

細かいルールを説明してもあまり意味がないので興味のある方はMリーグ公式ページでルールを確認してほしい。このレビューでは、私もハマっているMリーグの魅力と本書の面白さを語っていきたい。

まずMリーグの魅力について。一番の魅力は、麻雀というゲームの面白さとチーム戦の面白さを融合させたところだと思う。基本、麻雀は個人戦で争うゲームだ。4人のプレイヤーが卓を囲み、相手の捨て牌からどのような手牌で役を作っているのかを推理し、自分の手牌を大きく育てて高い役を狙う。1回のゲームだけで考えれば、とにかく点数の高い役をたくさんあがって、他の3人よりも多くの点数を稼げば勝ちだ。Mリーグでは、これまで個人戦の要素が強かった麻雀にチーム戦の要素を加えた。ひとつひとつの対戦は個人戦だが、その対戦で得たポイントはチームのポイントとしても加算される。1ゲーム内の着順によってはポイントがマイナスになることもあり、1着と4着では100ポイント以上の点差がつく場合もあって、ゲームごとにチームの順位が上下することもある。レギュラーシーズン終盤のセミファイナル進出ボーダーラインを巡る争いやファイナル進出時の争いなど、ここぞというときにはただ勝つだけではなくポイント差も加味した打ち回しが必要になったりするなど、実に知的なゲームメイキングが必要なのだ。

各チームに所属する選手たちも魅力である。現在8チームに4人ずつの選手が所属しているが、麻雀界最高峰のMリーグチームに所属しているだけあって、その実力は折り紙付き。それだけでなく、ビジュアル面も個性的で美男美女が揃っている。俳優としても活躍している萩原聖人やモデルとしても活躍している岡田紗佳、声優でもある伊達朱里紗といった別の顔でも大活躍している選手もいる。そういったプロの雀士たちが真剣に麻雀に向かう姿はとても美しい。

こうした魅力をさらに掻き立てるのが実況と解説。まるでプロレス実況のような、視聴者をときにあおり、緊張感を増大させるような迫力と、選手の思考や打ち方について巧みに説明してくれる解説は、麻雀を知らない視聴者にも面白さを伝える役割を果たしている。

このようなMリーグの魅力、選手の魅力、実況や解説の魅力にハマったひとりが著者であり、その面白さをもっとたくさんの人に見てほしいという気持ちから生まれたのが本書のもととなったWeb連載なのである。もともとは著者が自身のTwitterに流していたものを、竹書房のWebサイト「キンマWeb」が目をつけてサイトでの連載となった。

本書は、Web連載されたなかの2018年シーズンと2019年シーズンを描いたマンガが掲載されている。Mリーグの試合は、月曜、火曜、木曜、金曜に1日2試合ずつ行われるが、マンガは試合を受けて翌日のお昼くらいにWebサイトにアップされる。その日のゲームで印象的な場面とか目立っていた選手などを題材にして、実質半日ほどで4コママンガを仕上げるのはかなり大変だろう。実際にゲームを見た上で4コマを読むと、「なるほどこの場面をネタにしたか」と納得したり、「ここに目をつけたのか」と驚いたりで実に楽しい。4コママンガを読むと、選手ひとりひとりの個性も伝わってくるので、より選手を身近に感じられるのもよい。Web連載されている4コマや本書からMリーグに興味を持ち、さらに麻雀というゲームの面白さにも気づいてくれる読者が増えるのではないだろうか。

麻雀というとどうしてもギャンブルのイメージが強くて、怖い世界のゲームのように思っている人も多いだろう。実際、芸能人が賭け麻雀で捕まったりしたこともあるし、中には身近な人がギャンブルで身を持ち崩した経験を持っている人もいるだろう。小説やマンガ、映画やドラマの世界でも麻雀は裏社会を描く小道具のように扱われているイメージがある。街の雀荘に入ったら強面のイカサマ師に身ぐるみ剥がされて半殺しにされるイメージすらある(それはおおげさ)。

だが、実際には麻雀というゲームは健全な娯楽であり、コミュニケーションの形成に役立ったり、脳を活発に利用することから健康麻雀として老化防止効果も認められている。そうした健全なイメージを、MリーグやMリーグを題材とした本書がさらに助長してくれるのではないかと思う。麻雀に興味がない人こそ、まずは本書をマンガとして面白く読んで、それで少しでも興味が出てきたらMリーグをみてみるといい。きっと最後は麻雀の魅力にハマるに違いない。