タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「地球のことをおしえてあげる」ソフィー・ブラッコール/横山和江訳/すずき出版-いつの日か遠い宇宙から来るはずの誰かへ、地球のことを胸を張って紹介したい

 

 

1972年に打ち上げられた惑星探査機パイオニア10号には、人類からのメッセージを記した金属板がとりつけられていました。人間の男女の姿や地球のことを記したそのメッセージが、いつの日か命のある星に届き、そこに住む異星人によって解読され、彼らが地球を訪問する未来があるかもしれないという夢が託されています。

もし、遠い星から異星人が地球にやってきたら、私たちは我が星地球をどんな場所だと教えてあげればいいんでしょうか。大きな海があって、自然豊かな山があって、大きな街には最先端の高層ビルが立ち並び、人々は仲良く幸せに生活をしていますと胸を張って教えられるでしょうか。

そんなことを思ったのは、ソフィー・ブラッコール「地球のことをおしえてあげる」を読んだから。本書は ユニセフセーブ・ザ・チルドレンの活動で世界中をまわっている作者による地球を紹介する物語。表紙カバー折り返しにはこのように記されています。

ユニセフセーブ・ザ・チルドレンの活動で世界じゅうをまわり、何千もの子どもたちと出会ったなかで、作者のソフィー・ブラッコールは、わたしたちのふるさとである地球を紹介する物語を誕生させました。地球そのものを説明しつつ、同じ星に存在する仲間として、あらゆる生きものを大切にしようとよびかけています。

『同じ星に存在する仲間として、あらゆる生きものを大切にしよう』という言葉は、いまの新型コロナ感染症による世界的なパンデミックとそこから生まれる人々の分断やウクライナやその他の世界で起きている国家間や人種間の分断の状況を考えると、とっても重い言葉だと感じます。

宇宙からくる、だれかさんへ
地球がどんなところかしってる?
ぼくがきみに、おしえてあげる。

物語はそう始まります。地球が太陽の近くにあること。陸地と水があること。陸地のいろいろなところに人が住んでいること。いろいろな家族がいて、たくさんの人がいて、でもひとりひとり違っていること。子どもたちは学校で勉強をして、大人たちは世の中を動かすためにいろいろな仕事をしていること。広い海の中にもたくさんの生きものが住んでいて、陸地にもやはりたくさんの生きものが住んでいて、空を飛ぶ鳥もいること。私たちが住む地球に生きる人たちや生きものたちについて紹介していきます。

人にもいろいろあって、中には目が見えなかったり耳が聞こえなかったりする人もいる。そして、ときには互いにいがみ合うこともある。だけど、「それよりも、たがいにたすけあうほうが気持ちいいよね。」とぼくは宇宙からくる誰かさんに話します。

いまいちど最初の問いに戻ってみましょう。いまの私はこの本に書かれているみたいに胸を張って地球のことをおしえてあげられるだろうか、と。正直、あまり自信がない。自分は地球のことをあまりよくわかっていない気がするし、なにより目を背けたくなるような出来事が起こりすぎている。大きな海も大きな空も自然豊かな大地もどんどん失われている。そういう状況が胸を張って地球のことを紹介できなくさせているのかもしれない。そして、そういう状況を作ってしまったのは、間違いなく私たち人間なのです。

自分たちで壊しておいて、「私たちの星はいい星ですよ」なんて、なんだかとても恥ずかしいよね。だから、恥ずかしくないように直していかないといけない。地球にはいいところはたくさんあるけど、悪いところもたくさんある。その悪いところの多くは人間が作ったもので、作ったのなら元に戻すことや良いものに変えることもできるはず。いつか、どこからみても恥ずかしくなく、胸を張って紹介できる地球にしたい。そう思う。