タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「税金で買った本」原作:ずいの、漫画:系山冏/講談社-ひょんなことから図書館で働きだした石平くんと個性豊か司書さんたちを描いた図書館のお仕事マンガ

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自分で買った本を読むので手一杯なのと、基本的に所有欲が勝っているので図書館を利用する機会はあまりなくなっているのだが、それでもすでに絶版になっているような古い本を読みたいときや資料を探しているときは図書館にお世話になっている。

「税金で買った本」は、そんな図書館を舞台にしたお仕事マンガである。原作のずいのさんは図書館勤務の経験者でその経験をベースしたエピソードで本書は構成されている。

外見や態度は不真面目だが根は優しそうなヤンキーの石平くんは、貸出カードを作りに来た図書館で応対に出た司書の早瀬丸さんから10年前に貸し出したままになっている「わくわく☆しりたい どうぶつのなぞ」を弁償をしてほしいと言われる。「ふざけるな!」と声を荒げる石平くんの前に現れたのは超ムキムキマッチョな司書の白井さん。長年クレーマー利用者から「税金ドロボウ」と罵声を浴び続けてきた彼がもっとも嫌うのが、“税金で買った本”を紛失したり傷つけたりしたのに弁償を拒む人なのだ。

ということで、石平くんは紛失した「わくわく☆しりたい どうぶつのなぞ」を弁償することになる。図書館の決まりで現金での弁償はNG。同じ本を自分で購入して弁償するのだ。「二度と来ない」と吐き捨てるように立ち去った石平くんだったが、さて彼は本を買って弁償するのか?

本書のテーマは図書館の仕事だ。普段利用者として図書館に接している側からすると、カウンターで貸出/返却の対応をしてくれたり、調べ物の手伝いをしてくれたりするのが目に見える図書館のお仕事なのだが、その裏側では私たちが知らないことがいろいろとあるのだなと知ることができる。

利用者が借りたまま紛失してしまったり、修復できないほどに壊してしまった本は、利用者が同じ本を購入して弁償すること(現金での弁償は受け付けられない)。本が破損した場合の修理方法(良かれと思ってセロテープで貼り付けたりしていはいけない)。強烈なニオイのこびりついてしまった本への対応(数ページごとに新聞紙を挟んでニオイ取りするらしい。ただし限度はある。ときどきヤニ臭い本とかあったりするよね)。こんな感じで利用者として気になっていたことがテーマになっていたりする。図書館の蔵書は本書のタイトルの通り“税金で買った本”である。けっして自分の所有本ではない。だから、借りた本は丁寧に扱わなければならないし、傷つけたり無くしたりしたら弁償しなければならないこともある。

第4話では、図書館の学習スペースを使って自分のスマホやらタブレットやらを充電する迷惑な利用者の話が出てくる。彼は「税金払っているからその分の元を取りたい」と言うが、石平くんはそれが具体的に何円の特になっているのかと問う。そこから各機器の消費電力や電気料金の単価を計算して、いったいいくら得しているのかを算出してみるのだが、その推して知るべし。払っている税金に比べて全然元なんて取れていない。そもそも図書館で充電したくらいで元を取れるはずはないのだ。それよりも図書館が存在し、もう手に入らないような古い本が読めたり、レファレンスサービスを利用して知らないことを調べたりして知識を得ていくことが税金で図書館を運営することで私たち利用者が得られるメリットなのだ。

「税金で買った本」は、現在(2022年4月9日時点)で第2巻まで刊行されている。このレビューは第1巻と第2巻をまとめてのレビューになる、第2巻では図書館への寄贈本の話とか、イタズラ電話の話とか、読み聞かせの話とかがエピソードテーマになっている。石平くん、早瀬丸さん、白井さんの他にもなにやら個性的なキャラも登場してくるし、石平くんのちょっと複雑な人間関係とか図書館で働くことでの成長なんかも描かれていく。

図書館を題材にした小説やマンガは他にもあるから、本書も含めいろいろと楽しんでみるのもいいかもしれない。