世界とうまくやっていけない子供たちに
冒頭の著者のメッセージを引用させてもらいます。
「星空」は、台湾の絵本作家ジミー・リャオによるファンタジックでノスタルジックな世界を描く物語です。
主人公はひとりの少女。あまり夫婦仲のよくない両親と暮らす孤独な少女です。友だちもほとんどいなくて、学校ではいじめにもあっています。
ある雪の夜、少女は誰かが歌っている声を聞きます。部屋の窓からのぞくと、降りしきる雪のなか屋根の上で少年の姿がありました。
少年は、転校生として少女のクラスにやってきます。スケッチブックを大事そうに抱えて、おとなしくて、誰とも話そうとしない少年。
少女と少年は、ある出来事をきっかけに友だちになります。ふたりは、他の同級生たちのように楽しくおしゃべりしたりふざけあったりするわけではありません。でも、ふたりでいることが少女と少年の心を少しずつ変えていきます。
わたしたちはいつも、目的もなく歩き回った。だれかがいっしょにいるって、いいね。
いろいろなことが起きます。いろいろなことを経験します。そして、ふたりはいっしょにこの街をでようと考えます。
少女は小さいころ、遠くの山でおじいちゃんとおばあちゃんと暮らしていました。そこでは星空がとても大きく見えました。
少女と少年は、遠くの山のあの家を目指します。遠い遠いあの場所まで、たくさんたくさん歩いていきます。ふたりの目の前に広がる星空は、少女がまだ小さかったあのときのように、大きく大きく見えたでしょうか。
ふたりが見た星空。少年が少女に見せてくれた魔法。孤独なふたりが出会ったことで生まれた奇跡。
本書の表紙を開き、ページをめくった最初に著者はこう記しています。
顔をあげて、星空を見上げれば、
世界はもっと大きく、大きくなる……
孤独だった少女は、自分と同じように孤独だった少年と出会ったことで顔をあげることができたのだと思うのです。少年も少女と出会ったことで顔をあげることができたのだと思うのです。ふたりの世界はきっと大きく大きくなったのだと思うのです。