タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

ジェローム・K・ジェローム/小山太一訳「ボートの三人男もちろん犬も」(光文社古典新訳文庫)-三人の独身男たちが繰り広げるおかしなおかしなボートの旅。横にはもちろん犬もいるよ!

毎日忙しい。朝から晩まで一生懸命がんばって、ランチも慌ただしく食べて、午後もひたすら仕事仕事、終電ギリギリに駆け込んで家に帰ると倒れるようにベッドで眠る。気づけばもう朝だ。今日もまた長くて忙しい一日がはじまる。

働き方改革という言葉が独り歩きしている今、現実はともかく表向きはこんな激務に苛まれている人はだいぶ少なくなっているだろう。それでも、毎日残業、休日出勤、それでも安い給料で頑張っている人はまだいる。

そんなワーカホリックな方には、ジェローム・K・ジェロームの「ボートの三人男もちろん犬も」をオススメしたい。

舞台は19世紀末のイギリス。およそ世界中に存在するありとあらゆる病気を抱えていると自称するJ、ジェームズ、ハリスの3人は、病を癒すためにはしっかりとした休養を取らねばならぬと、テムズ河でのボート旅を思い立つ。しかし、旅は準備段階からドタバタ騒ぎ。荷造りにとりかかればトラブル。アレがない、コレがないと大騒ぎ。やっと荷物を詰め終わっても歯ブラシが見当たらなくてやり直し。ようやく旅に出ても、やっぱりドタバタを繰り返す。全然理想の旅じゃない。

3人の旅はとにかく珍道中だ。ボートの旅ばかりじゃない。合間にはさみこまれる数々のエピソードは、どれも呆れるほどのおバカエピソードのオンパレード。読んでいるあいだは、ずっとニヤニヤゲラゲラしてしまって、なんかもう嫌なこととか忘れられるし、悩んでいることがバカバカしくなってくる。

本書は、英国ユーモア小説の代表的な作品。現代日本の感性で読むと面白さが伝わらないところもあるかもしれないが、それはほんのちょっとだけ。大部分はトリオのコントを見ているような感じで面白い。個人的には、チャップリンキートンマルクス兄弟の喜劇映画をみたときのような面白さを感じた。

「働きすぎの僕らには“休養”が必要だ!」と文庫帯に書いてあるように、今働きすぎでお疲れ気味の人は、この小説を読んでリフレッシュしていただきたい。私も、少し休みをとろうと思います。