タカラ~ムの本棚

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《アンチ》に徹することでミステリーに対する興味を喚起するのかと思って読んでみたが、どうやら本気で嫌いらしい-小谷野敦「このミステリーがひどい!」

ミステリー小説が好きな人がこの本を読んだら、怒りだしちゃうんじゃないだろうか。

そんな心配をしたくなるほど、徹底的にミステリー小説を酷評しまくっているのが、小谷野敦「このミステリーがひどい!」である。もうタイトルからしてケンカ売ってる感じだ。はたして、著者自身のネーミングなのか、編集のセンスなのか。

このミステリーがひどい!

このミステリーがひどい!

 

とにかく、徹頭徹尾ミステリー小説を酷評する。それは、最近の作家にとどまらない。ミステリー小説、探偵小説の始祖ともいえる、シャーロック・ホームズシリーズやアガサ・クリスティーの一連の著作についても、小谷野氏はバッサリと切って捨てる。

小谷野氏にしてみると、古今東西あらゆるミステリーがすべてダメという訳ではない。「読んでみたら意外と良かった」という作品もわずかながら存在しているし、筒井康隆ロートレック荘事件」なんかは、傑作であると評価している。

ただ、少しでも良い方で評価されている作品は本当にわずかで、ほとんどの作品はまったく評価されていない。何が面白いのか理解できないと、真剣に読むことすら忌避したりする。

本書を読み始める前は、逆説的にアンチの立場からミステリーを批評することで、ミステリーの魅力を引き出すような評論集なのだろうと考えていた。しかし、実際に読み進めていくと、小谷野氏が“マジ”にミステリー小説が嫌いなのだというのがわかってきた。

小谷野氏からすれば、「最初からそう言ってるぞ」となるのだろうが、こちらとしては、まさかそこまでストレートに嫌いを押し出してくるとは思っていなかったので、かえって新鮮な印象を受けた。

何事にも「好き」、「嫌い」というのはあるわけで、ミステリーが大好きという人もいれば、小谷野氏のように本当なら読みたくないくらいに嫌い、という人もいる。価値観の違いと言うと陳腐だけれど、まぁそういうことだ。

私個人は、ミステリー小説に特別の思い入れがあるわけでもなく、読んで面白ければ何でもありだと思っている。そういう意味でいえば、「気楽に愉しめれば、それでいいんじゃないの」というのが私のスタンスだ。

そうそう、最後に1つ注意を。本書をこれから読んでみようと思っている方がいたら、本書は古今東西の代表的なミステリーについて、惜しげもなくネタバレしまくっているから気をつけてほしい。読み始める前に、巻末の書名索引で未読のミステリー小説があったら気をつけましょう!

緋色の研究 光文社文庫

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四つの署名 光文社文庫

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