「あまちゃん」が一大ブームとなったのが2013年のことでした。放送終了から1年を過ぎても、まだそのブームの余韻は残っているように思われます。
さんてつ: 日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録 (バンチコミックス)
- 作者: 吉本浩二
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/03/09
- メディア: コミック
- 購入: 2人 クリック: 24回
- この商品を含むブログ (24件) を見る
ドラマの中で「北三陸鉄道」として登場する第三セクターは、実在する三陸鉄道がモデルです。三陸鉄道、略して“さんてつ”。本書は、そのさんてつが東日本大震災による地震と津波で壊滅的な被害を被りながらも、わずか数日で一部区間の運転を再開し、1か月間沿線住民をはじめとする乗客は運賃を無料化して対応したという事実に基づいて、さんてつの社長や運転士、その他社員たちの復旧に向けた奮闘ぶりを描いたドキュメントマンガです。
さんてつは、北リアス線と南リアス線に分かれ、南リアス線は津波で壊滅的被害を受けました。北リアス線も被害を受けましたが、一部区間は比較的被害が軽く(といっても程度はそれなりにひどかったようですが)、鉄道マンたちの懸命の作業で一部区間の運転が再開されました。その後も、さんてつは地元住民の足としての役割を果たすため、少しずつ復旧の範囲を広げていきます。
「あまちゃん」の中で、登場人物がトンネル内で地震に遭遇し、真っ暗なトンネルの中を懸命に避難する場面があります。ほぼ同じエピソードが、さんてつでも描かれています。長いトンネルのほぼ中央で地震に遭遇した列車は、そこで立ち往生してしまいます。運転士と2名の乗客は外の状況がまったくわからないままで、次々と起こる余震の揺れに怯えながら時を過ごします。幸いにして列車はディーゼル車でしたので、照明と暖房が動かせたため寒さなどはしのぐことができました。運転士は、片道約1キロの真っ暗なトンネル内を移動して外の様子を見に行きます。そして、地震の被害の大きさを目の当たりにするのです。それは、おそらく想像を絶する光景だったのでしょう。それでも、乗客を励ましつつ避難を開始し、ヒッチハイクにより乗客を市の施設へ送り、自分はさんてつの事務所に戻ってくるのです。
こうした様々なエピソードが、この本にはたくさん描かれています。あの日、被災地のローカル鉄道がどれだけの被害を受け、その後、鉄道マンたちがどうやって復興を成し遂げていったのかを読むことで、彼ら鉄道マンの使命感の強さが深く心に刺さる作品でした。