タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

【書評】フランソワ・ルロール「幸福はどこにある」(伽鹿舎)−あなたは幸せですか?あなたの幸せはなんですか?

幸せというものは
ちょうど雨上がりの空に
立ちのぼる虹のふもとの
たよりなさによく似ているわ

これは、1977年7月に発表されたさだまさしのセカンドソロアルバム「風見鶏」に収録されている「思い出はゆりかご」という曲の一節である。

フランソワ・ルロールの「幸福はどこにある」を読んでいて、ふと「思い出はゆりかご」の歌詞を思い出した。

www.honzuki.jp

精神科医ヘクトールは、日々患者と向き合う中で「幸せとはなにか?」を考えるようになる。そして、その答えを探すための旅に出る。

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【書評】ハラルト・ギルバース「オーディンの末裔」(集英社)-「ゲルマニア」の続編。ドイツの敗色濃厚な中、夫殺しの嫌疑を駆けられた友人を救うためにオッペンハイマーは奔走する

ハラルト・ギルバースのデビュー作「ゲルマニア」を読んだのは1年少し前、2015年8月のことだ。ナチス政権下のドイツでユダヤ人の元刑事オッペンハイマーが、ナチス将校フォーグラー大尉の命令で残忍な連続猟奇殺人事件の捜査に挑むという作品で、ユダヤ人とナチス将校のコンビという組み合わせの奇抜さと作品としての面白さが相まった良作だった。

オーディンの末裔 (集英社文庫)

オーディンの末裔 (集英社文庫)

 

本書「オーディンの末裔」は、「ゲルマニア」の続編にあたる。舞台は前作同様ナチス政権下のドイツ。時代は前作からおよそ半年ほど進んで1945年初頭。戦争は、ソビエトの参戦もあってドイツの敗色が濃厚となっている。

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【書評】tupera tupera「パンダ銭湯」(絵本館)-あの愛くるしいパンダたちにこんな秘密があったなんて、そりゃもう徹子さんも驚くわよ!

 

パンダ銭湯

パンダ銭湯

 

パンダといえば黒柳徹子さんですよね!

黒柳徹子 - Wikipedia

Wikipediaにある黒柳徹子さんに関する説明によれば、徹子さんのパンダ研究は彼女が子どもの頃からで、70年以上にもなるそうです。日本パンダ保護協会の名誉会長でもいらっしゃる。あ、ちなみに今使っているGoogle日本語入力で「にほんぱ」まで打ち込んだら変換候補に「日本パンダ保護協会」が出てきましたよ。さすが徹子さん(たぶん違う)。

日本パンダ保護協会

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【書評】阿部公彦/阿部賢一/楯岡求美/平山令二「世界の文豪の家」(エクスナレッジ)-あの名作はこの家で生まれた。環境が作品のベースとなり、傑作を生み出すのだと感じさせてくれる写真集

世界の文豪の家

世界の文豪の家

 

紹介されている様々な文豪の家を見ていると、その作家が暮らした環境が作品にも反映されるのだなと感じる。

「世界の文豪の家」は、そのタイトルの通り、世界文学の中で文豪と称される作家たちの暮らした家を紹介する写真集である。紹介されているのは、北米(9人)、イギリス(15人)、フランス(5人)、ドイツ(3人)、ロシア(5人)、北欧とイタリア(4人)の計41人の文豪たち。

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【書評】ドナ・タート「ゴールドフィンチ(1)」(河出書房新社)-爆弾テロで母親を失った少年は、1枚の絵とともに波乱万丈の運命を生きる。大長編小説の幕開けとなる1冊

ゴールドフィンチ1

ゴールドフィンチ1

 
ゴールドフィンチ 1

ゴールドフィンチ 1

 

表紙を開くと1枚の絵が眼に飛び込んでくる。カレル・ファブリティウス『ごしきひわ』(The Goldfinch,1654)と記されている。この物語の鍵となる重要な絵だ。

ドナ・タート「ゴールドフィンチ」は、2014年度ピュリッツァー賞を受賞した大長編小説である。35カ国で翻訳出版され、世界中で300万部を超えるベストセラーとなっているとのこと。日本語版は全4巻で、本書はその第1巻にあたる。

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【書評】海堂尊「ポーラースター ゲバラ覚醒」(文藝春秋)-全4部作になるという海堂尊版チェ・ゲバラ伝。第1弾は若かりしゲバラの南米縦断旅行記=モーターサイクル・ダイアリーズ

ポーラースター ゲバラ覚醒

ポーラースター ゲバラ覚醒

 

今年(2016年)、安倍首相がキューバを訪問したときに、90歳になるフィデル・カストロと面会したというニュースがあった。フィデルの健康状態は、はっきりとは伝えられていないようだが、外国の要人を迎えられる程度には元気なのだろう。

フィデル・カストロは、1959年にキューバ革命を主導した若者のひとりだ。そのフィデルとともに革命の中心にいたのが、チェ・ゲバラである。フィデルが、キューバ革命以降、社会主義国家としてのキューバの国家運営に専念してきたのに対して、ゲバラは革命家としてコンゴやボリビアでの革命に身を投じ、最後はボリビアで捉えられれて処刑され、その生涯を閉じた。享年は39歳である。

その革命家チェ・ゲバラの生涯を、「チーム・バチスタの栄光」などの医療ミステリー作家海堂尊が全4部にわたる長編として描くという。その第1弾が、本書「ポーラースター ゲバラ覚醒」である。

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【書評】北尾トロ、下関マグロ、竜超「町中華とはなんだ〜昭和の味を食べに行こう」(立東舎)-ラーメン、餃子、炒飯、カツ丼、オムライスにナポリタンも!?これぞ町の中華屋さん!

町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう (立東舎)

町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう (立東舎)

 
町中華とはなんだ (立東舎)

町中華とはなんだ (立東舎)

 

 

中学生から高校生くらいの頃、まぁ今からザッと30年以上も前のことだが、我が家ではよく“出前”を頼んでいた。だいたい月に1~2回くらいか多くて3回くらいのときもあったかもしれない。父親の給料日直後なら奮発してお寿司。それ以外は、中華が定番だった、というか中華しか選択肢がなかった。十代中盤くらいの年代は、とにかく無尽蔵に飯が食える年代でもある。いったいその量がどの胃袋に収まったんだっていうくらい、食っても食ってもまだ食えた。そんな食欲のかたまりだった私が決まって注文したのが、チャーシューメンにカツ丼という組み合わせ。今から考えると想像しただけで胸焼けするが、あの頃はそれくらいは平気だったのだ。

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