幸せというものは
ちょうど雨上がりの空に
立ちのぼる虹のふもとの
たよりなさによく似ているわ
これは、1977年7月に発表されたさだまさしのセカンドソロアルバム「風見鶏」に収録されている「思い出はゆりかご」という曲の一節である。
フランソワ・ルロールの「幸福はどこにある」を読んでいて、ふと「思い出はゆりかご」の歌詞を思い出した。
精神科医のヘクトールは、日々患者と向き合う中で「幸せとはなにか?」を考えるようになる。そして、その答えを探すための旅に出る。
続きを読むハラルト・ギルバースのデビュー作「ゲルマニア」を読んだのは1年少し前、2015年8月のことだ。ナチス政権下のドイツでユダヤ人の元刑事オッペンハイマーが、ナチス将校フォーグラー大尉の命令で残忍な連続猟奇殺人事件の捜査に挑むという作品で、ユダヤ人とナチス将校のコンビという組み合わせの奇抜さと作品としての面白さが相まった良作だった。
本書「オーディンの末裔」は、「ゲルマニア」の続編にあたる。舞台は前作同様ナチス政権下のドイツ。時代は前作からおよそ半年ほど進んで1945年初頭。戦争は、ソビエトの参戦もあってドイツの敗色が濃厚となっている。
続きを読む今年(2016年)、安倍首相がキューバを訪問したときに、90歳になるフィデル・カストロと面会したというニュースがあった。フィデルの健康状態は、はっきりとは伝えられていないようだが、外国の要人を迎えられる程度には元気なのだろう。
フィデル・カストロは、1959年にキューバ革命を主導した若者のひとりだ。そのフィデルとともに革命の中心にいたのが、チェ・ゲバラである。フィデルが、キューバ革命以降、社会主義国家としてのキューバの国家運営に専念してきたのに対して、ゲバラは革命家としてコンゴやボリビアでの革命に身を投じ、最後はボリビアで捉えられれて処刑され、その生涯を閉じた。享年は39歳である。
その革命家チェ・ゲバラの生涯を、「チーム・バチスタの栄光」などの医療ミステリー作家海堂尊が全4部にわたる長編として描くという。その第1弾が、本書「ポーラースター ゲバラ覚醒」である。
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中学生から高校生くらいの頃、まぁ今からザッと30年以上も前のことだが、我が家ではよく“出前”を頼んでいた。だいたい月に1~2回くらいか多くて3回くらいのときもあったかもしれない。父親の給料日直後なら奮発してお寿司。それ以外は、中華が定番だった、というか中華しか選択肢がなかった。十代中盤くらいの年代は、とにかく無尽蔵に飯が食える年代でもある。いったいその量がどの胃袋に収まったんだっていうくらい、食っても食ってもまだ食えた。そんな食欲のかたまりだった私が決まって注文したのが、チャーシューメンにカツ丼という組み合わせ。今から考えると想像しただけで胸焼けするが、あの頃はそれくらいは平気だったのだ。
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