幸せというものは
ちょうど雨上がりの空に
立ちのぼる虹のふもとの
たよりなさによく似ているわ
これは、1977年7月に発表されたさだまさしのセカンドソロアルバム「風見鶏」に収録されている「思い出はゆりかご」という曲の一節である。
フランソワ・ルロールの「幸福はどこにある」を読んでいて、ふと「思い出はゆりかご」の歌詞を思い出した。
精神科医のヘクトールは、日々患者と向き合う中で「幸せとはなにか?」を考えるようになる。そして、その答えを探すための旅に出る。
ヘクトールは、世界各地を巡り、さまざまな出会いや経験を積み重ねる中で、「“幸せ” ってこういうことなんだ」という彼なりの想いを『レッスン』として手帳に書き記していく。ヘクトールが『レッスン1』として記したのはこんな内容だ。
レッスン1 幸福をだいなしにするよい方法は、比較することである。
ヘクトールは、結果として23の幸福のレッスンを記すことになる。そのすべてをここで紹介できないので、ぜひ本書を読んで欲しい。ひとつひとつのレッスンは、どれも深く首肯し胸に刺さる。
冒頭に紹介した「思い出はゆりかご」の歌詞はこう続く。
ゆらりゆらり揺れて
夢の果てに出会う
追えば必ず遠ざかり
すぐに消えてしまう
“幸せ”というのは、人それぞれの価値観の中で、その人が感じるものであり、万人に共通の定義があるわけではないし、はっきりとした形があるわけでもない。
虹のふもとのように、はっきりと見えない幸せというものを、ヘクトールは探してみようと思った。遠い異国の地をめぐり、たくさんの人に出会い、別れた。答えを探そうとしても、それは彼の手をスルリとすり抜けて遠くに消えてしまう。だからこそ、人は意識/無意識の中で、自らの幸福を探し続けていく。
人生というのは、それぞれの“幸せ”を見つけるための長い旅ということなのだと思う。
ひとつだけ、ヘクトールが23番目のレッスンとして記したことを書いておきたい。
レッスン23 幸福とは、他人の幸福を願うことである。
あなたの“幸福”とはなんですか? あなたは今“幸福”ですか?
■御礼
本書は、書評サイト「本が好き!」経由で知り合った読友さんにいただきました。この本が私の手元に届いたのは、ちょっとした偶然ですが、それも私にとっては“幸せ”ということかもしれません。交換会用にこの本を選んだ読友さんに感謝です。
■おことわり
本書は、熊本県にある小さな出版社「伽鹿舎(かじかしゃ)」から刊行された作品で、基本的に九州の書店でしか取り扱いがありません。Amazonでの取り扱いもありません。東京では、注文取り寄せで、蔵前にある「H.A.Bookstore」と赤坂にある「双子のライオン堂」で購入できます。または、伽鹿舎のホームページからオンライン通販でも入手可能です。
Amazonでも取り扱いがありませんので、書影については、この本を手にするきっかけとなった書評サイト「本が好き!」に登録していただいたページのリンクになっています。なお、NHK出版から刊行されていた旧版の「幸福はどこにある」はAmazonで検索可能ですが、こちらは現在絶版状態です。
また、本書は「しあわせはどこにある」のタイトルで映画化されています。すでにビデオ化されていて、レンタルも可能なようなので、興味があればご鑑賞ください。
- アーティスト: さだまさし,渡辺俊幸,Jimmy Haskell
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2005/02/23
- メディア: CD
- 購入: 2人 クリック: 11回
- この商品を含むブログ (19件) を見る