ガタガタ書評ブログ

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ホームズの仲間たちを探偵役に据えたスピンオフ的パスティーシュ-北原尚彦「ホームズ連盟の事件簿」

シャーロック・ホームズシリーズは、主役のホームズだけではなく、脇役たちにも人気者が多く、彼らもまた魅力的なキャラクターである。

ホームズ連盟の事件簿

ホームズ連盟の事件簿

 

本書は、有数のシャーロキアンである著者によるシャーロック・ホームズシリーズの脇役たちを主役に据えたパスティーシュ短篇集である。各短編の語り部となるのは、ワトソン博士、ハドソン夫人、スコットランド・ヤードのレストレード警部、バスカヴィル家の当主であるサー・ヘンリー・バスカヴィル、ベーカー街イレギュラーズのリーダー格であるウィギンズ少年、そして唯一ホームズが敗北を喫したアイリーン・アドラー嬢。いずれも、ホームズシリーズの読者にはお馴染みの脇役たちではないだろうか。

各短編には、当然ながらホームズは登場しない。各語り部の思い出の中に顔を出すことはあるが、あくまでも主役は彼ら自身だ。

ケンジントン診療所の怪」、「読書好きな泥棒」は、それぞれワトソン博士、ハドソン夫人が語り部となる物語。各事件は、ホームズがスイス・ライヘンバッハの滝で宿敵モリアーティ教授と対決し、命を落としたとされてから(「最後の事件」)、「空き家の冒険」で復活するまでの間に起きた出来事となっている。

レストレード警部は、オリジナルシリーズではホームズにバカにされるスコットランド・ヤードの警官のひとりとして、いわば引き立て役にような存在になっているが、本書では家庭人としての側面にも光が当てられている。

その他のキャラクターたちも、オリジナルで描かれている人物造形を活かして、いかにもなイメージの短編が出来上がっている。特に、アイリーン・アドラーの男前な感じは、オリジナルの中でホームズが唯一敗北を喫し、かつ唯一思いを寄せたとされるアイリーン・アドラーという女性のキャラをうまく引き出した作品となっていて、このままアイリーンをシリーズキャラに設定したオリジナルの作品が書かれてもよいのではないかと思ったほどだ。

著者は、本書を含め、ホームズパスティーシュを3冊発表した。それぞれが、ホームズシリーズをベースとしながらも、三者三様の世界観を作り上げていて、幅広い読者に受け入れられやすい。

オリジナルのシャーロック・ホームズはよく知らないけれど、ベネディクト・カンバーバッチ演じる「SHERLOCK」にはハマったという人なら「ジョン、全裸同盟に行く」がオススメだ。

s-taka130922.hatenablog.com

ホームズはもちろん好きだけど、むしろ作品に登場する脇役に魅力を感じるという人なら本書「ホームズ連盟の事件簿」がオススメ。

オリジナルの世界観を大切にし、今は叶わないのだけれど、できればホームズシリーズの新作を読んでみたいという人なら「シャーロック・ホームズの蒐集」をオススメする。

s-taka130922.hatenablog.com

ホームズ物のパスティーシュ、パロディ小説は、過去にも数えきれないくらい世に出てきた。でも、ひとりの作家によって、これだけ多様な観点から、同じタイミングでホームズ・パスティーシュ作品が書かれ、発表されたのは初めてなのではないだろうか。

多作乱作になることで、作品の質の低下が懸念されることもあるだろう。事実、読んでいても、作品によっては「イマイチ」と感じるものもある。それでも、これだけの多様なシチュエーションの作品をうまく頭を切り替えながら書いたということは、純粋にスゴイなぁ~と思うのである。