ガタガタ書評ブログ

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鬼才を父に持つ才女-中島さなえ「いちにち8ミリの。」

鬼才中島らもが突然にこの世を去ったのは2004年7月だった。今年(2014年)は、彼の没後10年にあたる。
いちにち8ミリの。 双葉文庫

いちにち8ミリの。 双葉文庫

 
いちにち8ミリの。 (双葉文庫)

いちにち8ミリの。 (双葉文庫)

 

本書は、鬼才中島らもを父に持つ著者の初めての小説集である。

「ゴリづらの木」、「手裏剣ゴーランド」、「いちにち8ミリの」の3編が収録された短篇集であり、どれも一風変わった内容の作品だ。

「ゴリづらの木」は、庭に生えている大きな木(主人公はこれをゴリづらの木と呼んでいる)に潜む少年と主人公の女子中学生の奇妙な交流を描き、最後にホロリとさせられる佳作である。

「手裏剣ゴーランド」は、寂れた遊園地の園長である主人公と、彼の目の前にある日突然現れた忍者の末裔と名乗る怪しい中年男との、これまた奇妙な友情物語を描いている。

表題作にもなっている「いちにち8ミリの」は、好きな女性の姿をいつも眺めていたくて、1日にわずか8ミリづつ移動する石と、その石と話ができる女性のペットの猿を中心とする物語である。無生物である石が、女性を愛するという不思議。そして、自らの意志で、1日8ミリという遅々たる速度で日々移動をし続けるという不思議。そして、動く石により村おこしを図ろうとする人間たちの滑稽な振る舞いが混然と描かれる。

物語の根底に流れる不思議の魅力が、どことなく中島らもの世界と通じるように思う。
いや、同じ不思議でも、中島らもの描く不思議と中島さなえの描く不思議には大きな違いが存在している。
中島らもの不思議には、不条理な世界が存在した。それに対して中島さなえの不思議にはファンタジーの香りがする。
特異な才能を持った父親と比べられてしまうのは、著名人の娘として生まれた宿命であり、仕方のないことかもしれない。だが、本書以降の著者の活躍は、「中島らも」という大きな冠、重い足枷が取りはらわれていく過程をみていることを感じさせる。
私は、中島さなえという作家が、このまま彼女の世界観を確立し、作品を多く生み出していくことで、いつか大きく化けると考えている。ただ、2012年に発表された長編「放課後にシスター」以降、小説作品が出ていないのが気がかりだ(集英社のWeb文芸サイト「RENZABURO」で連載していた短編「ドライバー」も2012年6月の更新が最後になっている。連載終了なのか不明)。コラム連載など文芸活動は続けているのだが、私としては彼女の小説が読みたいと思うのである。
お変わり、もういっぱい!

お変わり、もういっぱい!

 
放課後にシスター

放課後にシスター

 
ルシッド・ドリーム

ルシッド・ドリーム