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中の人などいない@NHK広報のツイートはなぜユルい?

私がツイッターのアカウントを取得したのは2007年で、比較的早い時期だろうと思う。ただ、まだその頃はツイッターをやっている人が少なくて、一部の友人や例外的なユーザー以外にはフォローしたくなるようなアカウントもなく、その後はしばらくツイッターをしていなかった。

 

しかし、ここ数年ツイッターは急速に市民権を得た。芸能人や政治家などの著名人がツイッターアカウントを次々に取得して、彼らをフォローしたいという人が自らもアカウントを取得して、という具合にユーザー数も増加。数百万人、数千万人のツイッターユーザーが日々様々なツイートを投げるようになった、当然、企業もこの膨大なユーザー数を有するインフラを放置するはずもなく、続々と参入。企業公式アカウントも次々と出現するようになる。ただ、企業公式アカウントはその主目的が自社の宣伝や新製品の広告となっているため、きわめて事務的で面白味のないツイートしかしていなかった。

 

そんな企業公式アカウントも最近ではユルいツイートを投げるようになり、単なる宣伝ではないユーザー(顧客)との会話を楽しむアカウントが増えてきている。そのユルい公式アカウントの代表的存在が本書の著者でもあるNHK広報局の公式アカウントNHK_PR”だ。本書は、NHK_PRがお堅いイメージNHKの公式アカウントであるにも関わらず、どうしてこんなにユル~いツイートをするようになったのか。企業アカウントにも関わらずフォロワーとちょっとグダグダな会話をしたり、ときにbotと会話したり、はたまたフォロワーの苦情に真剣に対応し、でもそれがアニメの決まり台詞を冗談で発したもので、PRさんの天然ぶりが露呈したりという、その実態を中の人が率直に語ったものである。

 

そもそものきっかけは、ほんのお試しでのアカウント取得から。その後も個人の実験的な位置付けで非公式に存在していたNHK_PR。それが、公式アカウントとなったことで様々な事件というかエピソードが生まれる。「さかなクン」とツイートしたら「さんをつけろや!」とクレームが入り、それに対して半分冗談で「さかなクンさんにさんを付け忘れて申し訳ありません」とツイートを返す。そこから巻き起こる、「さかなクンにはさんを付けるべきか否か」の騒動。でも最後には「さんをつけろや!」のツイートがあるアニメに出てくるセリフだというオチがつく。またあるときは、とあるbot(本文中では明示していないが、明らかに松岡修三bot)と真剣に会話して、フォロワーから「PRさんがbotと会話してるwww」と評判に。

 

様々なエピソードを通して、NHK_PRがなぜこんなに評判を集めたかの秘密のようなものがわかる気がする。また、東日本大震災後にあえて批判を覚悟で震災前のユルいツイートを再開する決断。ただおちゃらけているだけではない、ツイッターの持つ影響力と自らの役割をキチンと認識した上での決断力にはおおいに拍手喝采を贈りたい。「NHKのアカウントなのにふざけてる!」という批判は今後も絶えることなく続くだろう。しかし、そのユルさを楽しみにし、救われたというフォロワーがいることも厳然たる事実なのだ。

 

中の人などいない@NHK広報のツイートはなぜユルい?

中の人などいない@NHK広報のツイートはなぜユルい?