タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

レーモン・ルーセル✕坂口恭平/國分俊宏訳「抄訳アフリカの印象」(伽鹿舎)-言葉遊びから生まれる創造力とドローイングというイマジネーション!本の世界に没入する贅沢を味わえる一冊

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本を読む贅沢とはなにか?

本を読むことは、私にとっては最高の贅沢だ。物語の世界に没頭し時間の経過を忘れる。ときに物語の世界で迷子になったとしても、自分なりの解釈でページという道なき道を進み、微かに感じられる著者の残した気配を道標として歩みを進める。すると突然目の前に見たことのない景色がパァッと広がる。その瞬間、今まで世界を覆っていた靄がスーッと消えていき、物語のすべてが姿をあらわす。その瞬間を味わうために、私は時間を忘れ、俗世のすべてを忘れる。

これ以上の贅沢があるだろうか?

レーモン・ルーセル「抄訳アフリカの印象」を読むことは、私にとって最高の贅沢だった。

 

もともと「欲しいな」と思っていた本だった。ただ、関東に住む私が伽鹿舎の本を入手するにはそれなりのハードルがある。というのも、伽鹿舎の本は九州限定販売。一部取り寄せで扱ってくれる書店(双子のライオン堂、H.A.Bookstore、Tsugubooks)もあるが、街の書店で気軽に買える訳ではない。

その欲しかった「抄訳アフリカの印象」が、本が好き!の献本にあがっている! 速攻で申込したのは言うまでもない。

そして抽選日。おぉ、当選している! そして数日後、無事私の手元には、伽鹿舎の特長的なカバーのかかった本書が届いたのである。

ここまででも私にとっては至福なのだが、読み始めるとその幸福感はどんどんと膨らんでいった。

簡単に「抄訳アフリカの印象」について説明しておきたい。著者のレーモン・ルーセルは、1800年代後半から1900年代前半にかけて生きたフランスの作家で、「アフリカの印象」は1910年の作品である。アフリカの地で行われる様々な摩訶不思議な行事や儀式が次々と描かれる散文形式の物語だ。岡谷公二訳として平凡社ライブラリー版も刊行されていて、そちらは完訳版である。

「アフリカの印象」は、フランス語の言葉遊びを極めた実験的な作品である。このことは、いとうせいこう氏による解説にも書かれている。ちょうどその部分を引用して本書の魅力を伝えている伽鹿舎のブログ記事があるので紹介したい。

m.kaji-ka.jp

たった一文字が異なるだけで意味がガラッと変わってしまう。そんな『言葉遊び』の面白さを追求した作品が「アフリカの印象」ということになる。となれば、原文であるフランス語がわからないとこの作品が理解できないのではないか。そんな懸念も湧いてくる。しかし、國分氏の訳文と坂口氏のドローイングがその不安を払拭してくれる。堅苦しくない平易な訳文は読みやすく、そこにドローイングが加わることで、読者は場面のイメージを頭に思い描きながら読むことができる。両者の相乗効果か、ときに登場人物の声まで聴こえてくるような感覚があった。また、ページ下にはフランス語の原文が記されていて、ルーセルがその場面をどういう文章で書いているかを確認することもできる。私は、フランス語はまったく読めないが、なんとなく言葉遊びの雰囲気を知ることができたような気分になれた。

「抄訳アフリカの印象」は、これほどに深く楽しむことができる作品だった。読んでいるときは時間を忘れられたし、摩訶不思議な物語の世界に幻惑され完全に迷子になった。だが、それは冒頭にも書いたように、本を読むことで得られる最高の贅沢なのだ。

そんな贅沢を与えてくれた本書は、無事重版出来となり、九州限定から全国区へと飛躍することになったそうだ。9月からは、全国の書店から注文して取り寄せることができる。この機会に、ぜひ日本中で「抄訳アフリカの印象」が読まれることを願っている。

【追記】密林でも取扱いされるようになってる。でも、伽鹿舎の本はできれば街の本屋さんで買ってほしいと思っています。

【補足】Twitterで伽鹿舎さんからコメントいただきました!私のブログ記事中では「重版出来で全国展開」と書きましたが、正確には「初版相当分部数完売による全国解禁」とのことです!

 

抄訳 アフリカの印象 (伽鹿舎QUINOAZ)

抄訳 アフリカの印象 (伽鹿舎QUINOAZ)

 

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幸福はどこにある──Le Voyage d' Hector (伽鹿舎QUINOAZ)

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